ネットとリアルをつなぐソーシャル飲食店

『水族館プロデューサー・中村元 presents 中村元の超水族館ナイト2017春 〜日本の世界観を誇れ!〜(vol.26)』 ライブレポート(17.02/05開催)/ カルカルで「ビハインド・ザ・コーヴ」上映会決定!

2017年03月14日

1-2.なぜ 『3匹の子ブタ』 に違和感の正体

『3匹の子ブタ』 はイギリスの昔話ですが、オオカミ悪者として登場します。ヨーロッパの童話などでは、オオカミキツネネガティブな役回りのキャラクターとして登場することが非常に多いそうです。それはなぜなのか?

中村さん
「みなさん、メソポタミア文明って知ってますか?チグリス・ユーフラテス川や ! 」

おおっ、今度は世界史の話に…!?

今から5000年前に栄えたメソポタミア文明では、神殿の建設や船の建造、青銅器の精練などに燃料として大量の木材が消費され、日常生活においても陶器の焼いたり、パンを焼いたり等、やはり多くの木材が必要とされていました。しかし、古代メソポタミアでは木材は稀少な資源。メソポタミアのウルクの王であるギルガメシュは木材資源を求め、地中海沿岸のレバノン杉の巨木の森へと向かいます。そして、その森の番人(守り神)であるフンババを倒し、森林を根こそぎ伐採していきます。(人類最初の森林破壊とも言われている)

中村さん
「古代メソポタミアから見た場合、ギルガメッシュは英雄で、フンババは悪の象徴だったんです。森の先住民たちは、オオカミやキツネを狩ってその毛皮を身にまとっていました。特に族長はオオカミの毛皮がその象徴だったんです。だからヨーロッパではオオカミは悪を象徴する動物で、キツネもズル賢くて悪い奴という扱いなんです。」

でも、日本では事情が全く異なります。

奈良県桜井市には神様の中の大神様として尊ばれている日本最古の神社・大神(おおみわ)神社がありますが、「大神」の文字から分かるように日本でオオカミは神様の遣いとされています。また、キツネもお稲荷様(稲荷神)と呼ばれ、ごく身近に親しまれている神様です。

中村さん
「それと、その森の者たちはしばしば家畜のブタを盗りに来ました。だから守るためにレンガの家が必要だったんです。それが3匹の子ブタの大元の話です。でも、日本ではそんなことは起こりえないのに、なぜワラや木で家を作ったら怠け者になるんですかということや! 」

 

3匹の子ブタは日本にそぐわない
3匹の子ブタの違和感の正体とは?

 

中村さんが調べたところ 『3匹の子ブタ』 の物語が日本に入ってきたのは明治時代だそうで、その頃の日本はまさに 「富国強兵、欧米列強に追いつけ追い越せ」 の真っ只中。欧米の文化が全てにおいて正しいと日本人は思い込まされていました。「今までの日本はダメだったから全て捨てて、欧米を見習わなくちゃいけない」 と、本当は大事にしなければならない日本古来の素晴らしい文化までもが否定されていた時代です。

中村さん
「当時の日本の家屋は99.9%は木とかやぶき屋根の家でした。それを欧米のようなレンガ造りの家に変えていなかければいけないという風潮を高めるために 『3匹の子ブタ』 を利用した奴が政府の中におったワケよ。」

『3匹の子ブタ』の話は文明開化で始まった欧米至上主義の流れを汲んで広められたようです。

 

1-3.日本と西洋の神話に見る世界観の違い

開演前に飲んだというユンケルの効果なのか、怒涛の勢いで今度は 「アダムとイヴ」 の話を始める中村さん(笑)。「アダムとイヴ」 を知らない人のためにストーリーを大雑把に書き出すと…、

神が作った最初の人間とされるアダムとイブは、仕事もしなくてもいい、食べ物も沢山あるという、いわゆる楽園に住んでいました。そこには食べてはいけないと神が決めた実がありました。しかし、蛇に唆され、二人はその実を食べてしまいます。禁断の実を食べてしまった二人は、神の怒りを買い、楽園を追放されてしまいます。そして、として働かなければ食べ物を得ることができない ”労働” が与えられました。

中村さん
「これに対して日本にも神話があります。古事記に高天原(神様たちが住むとされる天上界のこと)では、神様は皆、働いていたと書いてあるんです! 男の神様たちは田植えをして田圃を耕し、女の神様たちは機織りをしていました。あの天照大御神ですら機織りしていたとあります。 どう思います?  」

中村さん
「神様が働いているぐらいだから我々も人間も働きましょうねというのが、昔からずっと日本人の根底にある考え方になっているワケです。一方、アダムとイヴは罰として働くことになったんです。」

そうそう、アダムとイヴに禁断の実を食べるようにけしかけた蛇(その当時の蛇には手足があった)ですが、こちらも神様の怒りに触れ、手足をもがれてしまいました。

中村さん
「西洋では蛇が地を這っているのも罰なんです。でも日本では蛇が御神体となっている神社もあるよね? 」

 

中村さんの深いトークに聞き入る
中村さんの超水族館トークに聞き入る

 

西洋で悪者とされたオオカミやキツネ、(罰を受けた姿とされる)蛇が、では神様として祀られているのはなぜか?

中村さん
日本には神様も人も動物もみんな一緒という考えが昔からあるんです。だから生き物の神様もいるし、物の怪もいる。さらには川の神様がいたり、滝の神様がいたり、山の神様もいたりします。だから日本人は古代メソポタミアの人達のように森を根こそぎ切り倒してしまうようなことはしませんでした。なぜならそこには神様がいるからです。八百万の神々だけでなく、物の怪もいる。そこに手を出したらアカンという畏れの念が日本人にはあったんです。」

中村さんは2014年秋の19回目の超水族館ナイトで、 「生物に下等も上等もあらへんよ。」 というテーマトークをしてくれましたが、それがまさに日本人の感覚。一方、西洋の文化(一神教)では、神様が一番上で、神様に一番近いのが人間。その他の生き物は人間から離れるほど下等であると考えられています。この世界観の違いが非常に大きなもの。今回のテーマトークの鍵になっています。