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水族館プロデューサー・中村元 presents 『中村元の超水族館ナイト2017秋 〜科学離れと水族館の理科教育〜(vol.28)』 ライブレポート(17.10/15開催)

2018年02月13日

3.そもそも学問とは?

 

中村さん
「科学系博物館と呼ばれる施設は水族館に限らず、どこも皆、学問を端っこから行き過ぎやと思うのよね。数学・化学・物理・地理・歴史 …等々、学問には色々あるけれど、それらがなぜ出来たのかと言えば、哲学の探究のためです! 哲学って英語で何て言うか知ってるか? そう、フィソロフィーってヤツや!(ドヤ顔)」

テリーP
「なんですか、そのドヤ顔は(笑)」

客席(笑)

 

「フィロソフィーや!」 with ドヤ顔
ドヤ顔を決める中村さん

 

”哲学” と聞くと非常に難しいもののように聞こえてしまうかもしれませんが、その本質はいったってシンプル。「我々はなぜここに存在しているのか?」「なぜこの世界があるのだろう?」といった根本原理を追及するのが哲学です。

中村さん
「だから全然難しい話じゃないんです。星が動いているのを見て、あの星には意味があるはずだと占星学が始まり、天文学が生まれた。天文学を究める上で計算が必要になり数学が発展した。或いは人生を考える時に先人達の生き方や考え方を調べたりしてね。次第にそれぞれの領域に専門家が現れて、その積み重ねが ”学問” なんです。」

中村さん
「結局、水族館は生物学を教える場所ではなくて、海や山に行くのと同じように、自然そっくりの水塊の中で、自分なりの発見をして、そこに好奇心を抱いて 「なんでやろ?」 と考える場所です。それこそが ”学び” だと思うのよね。水族館に来てくれた人が  『うわっ!変な生き物がおる!なんでこんなに色々な種類の生き物がおるんやろ!? へぇ~!!』 と思ってくれること、それが凄く大事なことなんです! 」

「なぜ?」 「どうして?」 は 人間の知的好奇心 、言わば  ”科学する心”

水族館が掲げる理科教育の多くは、この 科学する心を刺激し、それを育てていく過程を飛ばして、いきなり学術的な知識をいきなり押し付けている傾向が強く、

中村さん
「そんなどうでもいいような細かい知識を 『これを知ってもらわなければ困る!』 みたいな顔で教えようとするから余計に科学離れしてしまうんや! そんなことされたら水族館に行きたくなくなるよね。」

考えてみれば、さかなクンもキッカケなしにいきなり魚の図鑑を開いたワケではなく、 「魚って不思議!」 「魚って面白い!」  という好奇心を持つキッカケがあったからこそ図鑑に手を伸ばし 「あれも知りたい」 「コレも知りたい」 と魚のことを学んでいったはず。そう考えると 「カワウソってどうしてこんなに可愛いのだろう」 「どうしたらカワウソをもっと可愛く写真に撮れるだろうか」 といった興味・好奇心に始まるアプローチは批判されるものどころか、とても健全で正しいものだと言えそうです。

 


4.見てもらってこその展示

 

中村さんの深い話に耳を傾ける
中村さんのトークに聞き入る

 

中村さんによると水族館の飼育係や学芸員に 「展示とは何か?」 と聞くと 『展示とは情報である』 と答える人が多いのだとか。ある種の水族館業界の定説みたいなものだそうで、水槽で魚を見せるだけではなく、魚の種類やその生息環境、さらには展示に込められたストーリーなど、それらの情報をきちんと提供しているのが良い展示なのだと彼らは答えるのだそうです。

中村さん
「それはそれは結構なのだけれど、でも、その飼育員や学芸員さんたちは実際にどうしているのかというと、文字でその ”情報” とやらを書きまくるんです。水槽の傍らにある解説板に全部書いてある。だから完璧な良い展示だと言うのね。でもさぁ、そんなの誰も読んでくれへんよ…!?」

中村さんは水族館においてストーキング調査というのを実施しているそうです。これは入口から出口までお客さんの後ろをついていって、どの水槽を何秒見たかというのを調査していくもの。その過程で分かったことは、

  • お客さんの満足度の低い水族館は半分以上の水槽が見られていないこと
  • 水族館の解説板は全く読まれていないこと

だそうです。

中村さん
「俺、思うんやけど、水族館や動物園で生き物を飼うって ”酷い話” やなって思っとるのね。生き物の気持ちになってみいや? 大自然の中で自由に生きていたのを捕まえられて閉じ込められるワケです。すごく迷惑な話やん? でも、それは、その生き物を展示することによって人に見てもらい、そして、知ってもらうためなんです。だから申し訳ないけれど代表選手になってくださいね…ということなんや。」

テリーP
「なるほど。理由があるワケなんですね。」

中村さん
「そう、理由があるんです。だから展示をちゃんと見てもらえていない水族館はダメな水族館なんです! そんな水族館は今すぐ廃業してください! なぜなら生き物たちがかわいそうだから! 」

この日、大いに盛り上がった 「カワウソゥ選挙」 ですが、アンチ中村元な人たちだけでなく、なんと水族館の館長や動物園の園長クラスの ”お偉いさん” 達の中にも、渋い顔をしていた人が多かったのだとか。

テリーP
「例によって 『生き物の可愛さの競う人気投票はやってはダメだ』 と?」

中村さん
「はい。でもこのカワウソゥ選挙のおかげで、この何ヶ月間かは『どの子に投票しようかな?』と一生懸命にカワウソを見てくれたり、『あの子を応援しなくちゃ!』 と何度も水族館に足を運んでくれたりしました。カワウソを見て、知ってくれたお客さんが確実に増えたんです!」

中村さん
「朝日新聞の地方版に地元の動物園や水族館のカワウソたちがカワウソゥ選挙で苦戦しているとの記事がカラーでデカデカと載ったんです。そして今日のカワウソゥ選挙の結果発表にもテレビカメラが10台ぐらいズラリと並んいたのね。」

テリーP
「ええっ、今、本当の総選挙の最中なのに!?」

 

新聞が地元のカワウソの選挙戦を伝えた
メディアでも特集記事が掲載された

 

中村さん
「これはもう社会現象や! これらの報道によって今までカワウソに無関心だった人や、カワウソという動物の存在すら分かっていなかった人にまで(水族館に行かなくとも)カワウソという動物を知ってもらえたんです!」

そのうちの何パーセントかの人は、カワウソゥ選挙のニュースをキッカケで水族館に足を運んでくれたもしれないし、水族館に来てカワウソ以外の展示も見てくれたかもしれない。そして、もし何らかの発見や好奇心を抱いて帰ってくれたとしたら、水族館の存在意義が大いにあったということになります。

中村さん
「そう考えると 『カワウソゥ選挙』 は批判されるどころか、水族館の展示としてメチャクチャ正しいことなんです! 」

水族館とはどのような場所か? 中村さんは 「水中の非日常の中で、地球や生命への知的好奇心を育み、地球で生きる喜びを再認識し、心身をリクリエイトする場である」と語っています。リクリエーションをレジャー(遊び)と混同して捉えてしまう人がいますが、言葉の通り ”re” creation 、つまり 「再び創造する」 という意。水族館は人生を創る気づきを与えてくれる場所でなければなりません。