黒沢健一ライブレポート&インタビュー(Vol.4)~祝!08/12/27カルカルライブ盛会+7年振りのアルバム「Focus」リリース!!
2009年03月03日
2008年年末、12月27日に
東京カルチャーカルチャーでライブをした黒沢健一さんが、
たっぷりとお話を聞かせてくれました。
百戦錬磨のシンガーが語る、
40歳・黒沢健一の今と未来ついて、
そしてあふれんばかりの音楽への愛について……
どうぞ最後まで、お楽しみ下さい。
インタビュー(3) 40歳・黒沢健一~音楽という「夢」の話。
納得いかないこともやっちゃったけど、
40歳までこうやって生きてこられただけで嬉しいなあって。
―― 時代といえば、
カルカルのライブでのMCで「40歳になった」と
おっしゃってましたね。
40ってきいて改めてきいてびっくりしたんですけど、
40歳になって変わったところは自分の中でありますか?
黒沢:……前に、40歳になったら楽になるよと人に言われてて。
僕、30代の頃って不安で、いろんなことがしたくて。
20代に比べて30って大人だって思ってて、
できもしないのにしっかりしなきゃって思ってて。
なんでしょう、男の人ってあるじゃないですか。
手に職ついて、それに技術もちゃんと身につけてとかね。
―― サラリーマンしててもあります。とっても、あります。
黒沢:ヴォーカリスト1本っていうのじゃなくて、
詩も書きたい、曲も書きたい、
他の人のプロデュースもしてみたい、
他のバンドでやってみたい……
そういう経験を自分の自信にしていく……
自分の栄養にしていく……みたいな。
そういう年齢だと思うんです。30代って。
それはとても、楽しみながらできたけど、
40になったら、そういうこともやりつつ
生きてこれたなと思った途端、安心したんです。
めちゃくちゃで、納得いかないこと、
ちょっとみっともないこともたくさんやっちゃったけど、
でも40歳までこうやって生きてこられたなあっていうのを感じて。
―― なるほど。
黒沢:この感覚ってすごい不思議なんですけど。
例えば自分と同じ年くらいまで、
残念ながら音楽がやれなかったりとか、
下手したらね……あの……やな話ですけど、
僕の好きなアーティスト……ジョン・レノンなんかはね……
僕と同い年で亡くなってしまった。
きっともっとやりたいことあったのかなって……。
―― はい。
黒沢:すごくそういうのを、リアルに感じてくると、
極端な話、「生きてるのってすごく嬉しい」みたいな。
30代の頃はばたばたしてて、そう思う余裕がなかったんでしょうね。
40になったら出てきたんです、ちょっと変な話なんだけど。
……それがリアルに感じられるようになった分、
なんか、いろんなことに感謝ができるのかなと思うんです。
うん。
音楽好きのこの“血”だけは昔から変わんないんだろうしなあって
―― なるほど。
あの、そうなると今後の、40代の健一さんの活動って、
ますますシンプルになってくんですかね?
黒沢:今は「わからない!」ってはっきりいえますね。
だから、30代のうちってそういう質問されると
ドキドキしちゃってね。
どうなるんだろう、どう答えるんだろうって……。
だけど、日々の中でつむいできたことが、
今日、ここに僕がいることにつながっているのであって。
―― 先のことは分からない、と。
黒沢:計算してここにこれてたんだったら、
自信をもって、俺はこうやってきた、
だからこうなっていくって言えるんだろうけど、
俺の場合はただ音楽がずーっと好きで、
それに向かっていったらここにきちゃってる感じだから。
やりたい音楽があって、
なんかやりたいなーってずっとそれをみてたりとかすると、
どこかにたどりつけるんじゃないかなって
気はしてますけどね。
―― 色々あったけど、
40にもなって、結果的に落ち着くことに
落ち着いたってことでしょうか?
黒沢:(笑)だから、落ち着いてないんですって!
―― あ、そうか。そうですね(笑)。
黒沢:なんかね、音楽って餌があると、
「わーっ」ていっちゃうんです。
「上を向いて歩こう」をフィル・スペクターアレンジでやるとか。
好きなミュージシャンとセッション出来るチャンスがあるとか。
それで、足跡がついちゃうんですよね。
俺、音楽的に、やりたいな、楽しいなって思うことがあると、
おさえられないんでしょうね、きっとね。
もう、あきらめざるをえないというか……
音楽好きのこの“血”というかね(笑)。
まあ、この性格だけは昔から変わんないんだろうしなあって
思いますね。
―― “業(ごう)”みたいなものでしょうか。
黒沢:うん。音楽を聴くのも好きだし、
やっぱりその現場で何かモノが意外な方向で
できあがってるのを観てるのとか、たまんないですね。
もう、にっこにこしちゃって。
だけどこだわるところはこだわっちゃって。
きっと、僕に似てる人もきっといるんだろうと思うんですよ。
自分も、そういうアーティストが好きだし、そういう人が
好きな人もいるだろう。それを信じよう!みたいな(笑)。
―― 5年ぶりのソロライブに、たくさんお客さんも集まってくれましたし。
黒沢:そうですね…それはでかかったですよね。
ありがたかったです。聴いていただけるということが。
自分も音楽の楽しさや、夢をずっと持ち続けたいんです。
―― あの、ちょっと話がずれるかもしれないんですが、
健一さんに関して、個人的に好きなエピソードがあるんです。
黒沢:はい。
―― 昔、MOTORWORKSで一緒だった石田ショーキチさんが、
とある国民的バラエティ番組にゲスト出演したとき、
「音楽がなくても生きていける」って言ったことがあって。
黒沢:あははは。はい。ありましたね。
―― それで、健一さんが石田さんに会ったときに、
「名言であった」って返したという話を、
雑誌で見かけたんです。そのやりとりが好きで。
「その心は?」とずっとお伺いしたくてですね。
黒沢:あははは(笑)。
やー、だって「音楽なんてなくても生きていける」って
言うのは、それだけ自分が音楽ファンだって
言ってるようなもんですよ!
音楽のこと気にしてなければ、そんな発言は出てこないし、
……なんでしょうね。そういうことって、
なんとなく感覚で分かりますよね。
―― なくても生きていけるのに、どうしてこんなに好きなんだろう?
っていうことなんですよね。
黒沢:そうそうそう! そこにたどり着いちゃう。
だけど、その気持ちがまた音楽を好きに
させたりするわけじゃないですか。
絶対これがないとみたいなことになっちゃうと、
音楽がいびつに聞こえちゃうし。
僕は逆に、仕事として、好きな音楽を聴いちゃうのが嫌なんですよ。
「このイントロいいなあ、使えるなあ」とか、
「このコード進行はかっこいいなあ」とか。
―― なるほど。
黒沢:そうやって、職業としてメロディを追ってくと、もう……
子供の頃なんか何もかにもわからなくてその中に浸れてたのに、
理屈的なところでもう聴いてる自分が嫌で嫌でしようがなくって。
そういうものを一切抜いた上でもう1回音楽に向き合って
感動できなくなっちゃうんじゃないかって「怖さ」があるんです。
―― 好きなことを仕事をしていると、
そういう気持ちは分かる気はします。
黒沢:「上手だね」とか思いながら聴くようになっちゃったら、
僕はもう、だめなんだろうな。
冷静にその人を分析してしまって、
後から思うようになっちゃったら、
それは夢がなくなってしまって、
自分の作る曲もつまらなくなっちゃうんじゃないかなって思う。
「なんだかわかんないけどかっこいい!」とか、
「どうしてこんなことができるんだろう!?天才!」って
素直に思いたい。
自分もそういう人になりたいって思える楽しさや、
夢をずっと持ち続けたいんです。
―― なるほど、音楽は「夢」なんですね。
黒沢:はい。だからこれからも、
そうやって素直に、いい気にならずに、
お客さんを信じていい曲を届けられたら
いいなあと思いますね。うん。
—
長きにわたった黒沢健一ロングインタビュー、以上でお終いです。
1回読んでいただいただけでも嬉しいですが、
アルバムを聴く前に1回、
アルバムを聴きながら1回、
アルバムを聴いたあとにまた1回と読めば、
ますます音楽が楽しく響いてくる気がします。
新譜「Focus」を、お楽しみに。それでは!
「お客さんを信じていい曲を届けられたらいいなあと
思いますね。うん。」(黒沢健一)
黒沢健一「Focus」2009/3/4 リリース!
1. Grow
2. Feel it
3. Love Hurts
4. Scene39
5. Maybe
6. Silencio
7. POP SONG (al ver.)
8. Mute
9. Do we do
10. Somewhere I can go
11. September Rain
KZCD-1012 \3,150 (tax in)
(ライブ写真・文・構成 河原あず/東京カルチャーカルチャー)