ネットとリアルをつなぐソーシャル飲食店

目指せカルカル発メジャー行き!プロ志望ミュージシャン大集合!「デモ評議委員会」ライブレポート(2009.5.23開催)

2009年06月21日

時代はいつだって音楽を求めている。

011

「CDが売れない。ダウンロード販売も伸び悩んでいる。」

音楽業界の話となると、
そんな話が決まり文句のように飛び出してきます。

データによれば、1998年をピークに音楽ソフト販売の売上規模は
確かに下がっています。ミリオンヒットと呼ばれる、国民の誰もが
聞いたことのあるような曲も、減ってきました。

音楽市場は大不況に陥っている、という見方もあります。

けど、ちょっと立ち止まって、身の回りを眺めて考えてみましょう。

たとえば、iPodは売れ続けているし、
CDレンタルを中心とした会社は急成長を遂げています。

東京カルチャーカルチャーの下のZeppTokyoでは、
日々満員のライブが行われ、建物全体をロックンロールで
(あるいは低音の効いたグルーヴで)揺らし続けています。

野外フェスは、都市型・郊外型問わず、
年々動員を増やし続けています。

そう。シンプルな事実として、相変わらず世の中は、
音楽を求め続けているのです。しかも、より強く。

しかし、聴き手のライフスタイルも趣味も多様化してきました。
大量のCDを生産し、「はいどうぞ!」と流通ルートに流すだけでは
確かに苦しくなっているのです。

音楽業界の人たち、特にレコード産業に関わる人たちが
「今は大変な時代だ」と言うのは、過去とったモデル
(大量生産・大量投資し、ミリオンヒットで投資を回収するモデル)が、
まったく通じなくなっているためではないでしょうか?

リスナーの心に引っかかる音を世の中から見つけ出し、
ピックアップし、時に洗練させ、CDにしたり、デジタルデータに
したりして、どんな人々にその音楽が「ひっかかる」かを
考えながら、音楽を世に送り出さないとならない。

今は、そんな時代のような気がしています。個人的には。

そういうわけで、音楽業界の中でも、
CDがミリオンヒットをたくさん飛ばしていた時期と変わらず、
いや、それ以上の真剣度で、新しい時代に相応しい音楽を
探し続ける人がいるのです。

「GREAT HUNTING」は、「真剣に次の時代の音楽を探す」人たちが
つくるプロジェクトの1つといえるかもしれません。

012

GREAT HUNTING~デモ評議委員会ってなんだろう?

持ち込まれたデモテープ……もとい「デモ音源」を聞き、
その場で講評するという、音楽業界に風穴を開けるかもしれない試みが、
ZeppTOKYOの2階、東京カルチャーカルチャーで開催されました。

その名も「GREAT HUNTING~デモ評議委員会」。
なんだか物々しい名称ですが、イベントの中身は至ってシンプルです。

001
デモ音源を持ち込む、ミュージシャンの卵たち

簡単に、イベントの趣旨を説明しましょう。

・ミュージシャンが、聴いてもらいたい音源を持ってきて、提出します。
・抽選で引き上げられた音源を、その場で流します。
・流れた音楽は、ステージ上の評議委員たちの耳に届きます。
・その場で、評議委員たちから音源への感想や、アドバイスが
 ミュージシャンに届けられます。

……という、まったくもってシンプルなイベントです。

しかし、壇上に上る面子は超・本気な面々です。
彼らの耳に留まれば、デビューへの道の第一歩を、
その音源の作者は踏み出すことになります。

実際、過去のデモ評議委員会から「太郎」というユニットが
デビューしています。他にも、デビュー間近の予備軍が多数。

デモ音源を「評議」するのは、こちらの面々です。

002
GREAT3メンバー、GO!GO!7188、フジファブリックなどの
プロデュースでも知られる、片寄明人さん

003
ポストロックシーンを背負って立つ名レーベル「残響レコード」の代表、
自身もte’のギタリストとして活動する河野章宏さん

004
CS音楽チャンネル「スペースシャワーTV」で数々の番組を手がけた
名物プロデューサー、高根順次さん

005
EMI MUSIC JAPANで新人発掘セクション「GREAT HUNTING」プロジェクトを
取り仕切り、ウルフルズ、ナンバーガール、フジファブリック、
BaseBallBearなどを育て上げたプロデューサー、加茂啓太郎さん

006
司会は、ロック芸人こと「ダイノジ」のお2人

錚々たる面々です。流石に、観客席はいつものイベント以上の
緊張感に包まれました。

「パセリが足りない。」
敷居は下がり、クオリティは上がり、そしてプロへの壁は高くなった。

いよいよ、評議スタート。デモ音源がカルカル自慢の爆音で流れます。
20本以上のデモ音源が、続々紹介されていきました。

015
音源のひとつひとつに、丁寧に、そして真剣に感想を述べていく評議委員一同。

当然、そのコメントを受けるミュージシャンの顔も真剣そのもの。
中にはコメントがもらえた嬉しさに感きわまり、泣き出してしまう方も。

013
真剣さゆえの涙

チケットを買えば誰でも参加できる敷居の低さ。
しかしまるで戦場のようなシビアさが会場を包んでいました。

008
会場の視線は、真剣そのもの。レンズを通しても確かに漂う緊張感。

全体を通して一貫していたのは、
デモ音源のクオリティが総じて高いという点。

EMIの加茂啓太郎さんも、特に録音クオリティの向上について、
度々口にしていました。

確かに、ここ数年で、機材の値段は下がり、質はあがっています。
パソコンのソフトウェアでも、プロの使う録音スタジオ並みの
環境を作れてしまう時代。

あるミュージシャンに聞くところによれば、
昔は何百万円とかけないと作れなかったスタジオ環境が、
数十万円で作れるといいます。

しかし、誰でも質の高いものができる環境が整ってきたということは、
逆にミュージシャンにとってシビアになってきたともいえます。
機材などを「使いこなす」力が必要になってくるからです。

更に、録音がクリアになると、逆に「アラ」が目だってしまうことにも
つながりかねません。

010
耳を集中させる現場の一線で戦う男たち。ステージ上の緊張感も半端ない

特に加茂さんが指摘していたのは、
「ミキシング(いくつかの音を混ぜること)時の音のバランス」
そして「楽器のチューニングやピッチ(音程)」が正しいかどうか、でした。

例えば、歌はとてもうまく、楽器もうまいのに、録音のときの
音量設定のせいでヴォーカルが聴こえないような曲には、
「もったいないですね」というコメントを出していました。

しかし、機材の使い方が完璧ならプロとしてやっていけるかというと
そういうわけでもありません。評議員の方全員が、
「お金を払ってもらう壁」についても数々指摘していました。

お金を払ってもらうということは、それだけリスナーが
その音楽を強く求める必要があります。

それだけのオリジナリティが、また、キャラクターがたっているか、
評議員の皆さんは繰り返し、その点について指摘していました。

「この音楽、嫌いじゃないけど、雰囲気で流れちゃうんだよね。
 ひっかかりが足りないというか。」
「前奏が長いかな。リスナーはそこで飽きちゃう。」
「サビにパンチがほしいなあ。Aメロはいいのに。もったいない。」

印象に残った言葉は、加茂さんのこんな一言です。

「洋食を食べてて、(添え物の)パセリがないとするでしょ。
 そうするとなんか、不味くはないけど、物足りないんです。
 この曲を例えるとそんな感じですね……。」

009
プロの壁=“パセリの有無”

パセリの有無。些細な違いだけど、そこで生まれる、
プロとアマチュアの、決定的な「オリジナリティ=独創性」の差異。

テクノロジーが進化した分だけ、オリジナリティの差は特に
生まれづらくなってきているとも言われています。

プロと同じ機材を使った曲は、プロの真似になりやすい。
その人以上のものは、そう簡単には作れないのです。

音楽の世界が成熟したおかげで多くの人がより音楽を楽しむことが
できるようになりました。その一方で、プロの壁を越えるのは、
非常に難しくなっているのかもしれない。

そんな、現在の音楽シーンが抱える「シビアさ」を
肌で感じる、評議委員たちのコメントの数々でした。

「ライブを聞いてみたい」の一言で始まる、プロへの道。

厳しいコメントの数々。
それでも中には、評議委員をうならせるものがありました。

「ライブを是非聞いてみたいと思いました。」

評議委員は、こんな言葉を何組かのミュージシャンに送っていました。
このイベントにおいては、最大の賛辞と言っていいでしょう。

そのライブがきっかけで、新しいミュージシャンがまた1人、
世の中に大々的に出て行くかもしれません。

東京カルチャーカルチャーが、その第1歩になればいい。

「カルカル発、Zepp行き」「カルカル発、東京ドーム行き」
「カルカル発、日本武道館行き」……なんてスローガンだって、
生まれるかもしれません。

014

あるいは数年先、彼らの奏でる音楽が、
カルカルを爆音で揺らす日が、ひょっとしたら来たりして。

もちろん、この日選ばれなかったミュージシャンの中から、
大きなライブハウスを、いや、世界中を揺らす才能が
出てくることだって在り得るんです。

CDがなかなか売れなかろうが、配信が伸び悩もうが、
それを超える何かがここから生まれ、日本中に、世界中に
響き渡るかもしれない。そういう日がくればいい。

音楽好きでこういう世界に飛び込んだ身として、
そんな風に祈らずにはいられない、そんなイベントでした。

次の「デモ評議委員会」も、きっとあります。
次の時代を震わせる音楽を、世に送り出していくために。

(河原あず/東京カルチャーカルチャー)