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メディア殺到!書籍の未来は編集者も出版社もいらない!? 過激な質問が飛び交いカオスな現場と化した『この編集者がスゴい!~iPad上陸!電子書籍元年!“その先”を解き明かす!』ライブレポート(10.6/15開催)

2010年06月30日

出版社なんて必要ない? ぶっちゃけいらないと思う編集者って?
 過激な質問ばかりを、ディスカヴァー・トゥエンティワン取締役社長をはじめ、豪華ゲスト陣にぶつけまくった白熱のイベント「この編集者がスゴい! ~iPad上陸!電子書籍元年!“その先”を解き明かす!~」。「紙の媒体」の黒子的存在である編集者に焦点を当てるという、世にも珍しいイベントです。

 ゲストにはライターの永江朗さん、ディスカヴァー・トゥエンティワン取締役社長・干場弓子さん、なんとダイヤモンド社の今泉憲志さんと土江英明さんも登場。その他にも、ちゃぶ台で会議を行う出版社・ミシマ社の代表取締役である三島邦弘さんや、漫画家の久世番子さんといった個性的な面々も参加して下さいました。

 そして総合司会は、アナウンサーの古瀬絵理さん。古瀬さん繋がりで、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 」の著者・山田真哉さんもちょっとだけ参加して下さいました。見ているこっちがハラハラするような質問ばかりが並んだイベントの模様をお届けします。


■イベントは大盛況!

 「編集者」「電子書籍」といったキーワードもさることながら、超豪華ゲストがそろうとあって、会場は立ち見が出るほどの超満員。新聞社やテレビ局をはじめ大多数の取材が入るなど、注目度の高いイベントとなりました。

001                 会場は超満員!

 まず登場したのは、イベントを企画した小学館の編集者・水野隆さんと、幻冬舎の編集者・袴田レイチェルさん、東京カルチャーカルチャーのプロデューサーを務めるテリー植田さん。なぜこのイベントを企画したのかという説明のラストには、「まだ出版業界には可能性が充ち満ちている。」と力強い文字が映し出されました。

 次に、総合司会を務めるアナウンサーの古瀬絵理さんが登場。華やかな雰囲気と、胸元がおおきく開いた衣装に、会場の雰囲気が一変。美しさって、それだけで才能です。古瀬さんといえば、執筆を担当した絵本「おかっぱちゃんとひみつのともだち」が先日発売されたばかり。担当編集者さんも登壇し、出版までの裏話を語ってくれました。

Dsc_5008                        古瀬絵理さん。この後、過激な質問と白熱の議論をテンポ良く捌いてくれます。

 続いてライターの永江朗さん登場。雑誌「週刊朝日」のコーナーで、ディスカヴァー・トゥエンティワンやダイヤモンド社の書籍を批判(?)したことがあり実は会いにくい、と暴露。そんな永江さんには、こんな質問が投げかけられました。

Q:今まで通用したけど、これからは通用しなくなる編集者を教えて下さい。
「出版社の看板で仕事をしてる編集者。フリーランスの私から見ると、『ぬるい仕事してるなお前ら』って。どこの誰とは言えないけど。」

Q:編集者は「黒子」に徹するべき?
「正直俺より目立つなとは思うけど(笑)。完全な黒子ではいけないと思いますよ。全ての編集者はフリーランスになるべきだと思っているんです。その人に作家が集まってきて、読者も集まって来るような。このジャンルならこの人に頼みたいとか。そう思ってもらえるような編集者じゃないと、今後生き残るのは難しいと思いますね。」

003                  古瀬さんと永江さん。永江さんからは、なぜかSM雑誌の話題が2度も出てきました。


■あのロゴは2000万円!? ディスカヴァー社・干場社長が登場

 そしてついにディスカヴァー・トゥエンティワン取締役社 長・干場弓子さん登場。干場さんは、あの勝間和代さんを発掘したことでも知られています。ディスカヴァー社は出版社と書店を仲介する「出版取次」を通さない手法で書籍を販売する、出版業界の異端児的存在。最近では「超訳 ニーチェの言葉」の売れ行きがすさまじく、「出版取次」を通さなくてもベストセラーが作れてしまということを、世に知らしめました。「戦後50年間続いてきたシステムを、干場さんが変えようとしている(永江さん)」。喜ぶ人もいれば、脅威に感じる人もいることでしょう。

004                 常に笑顔、しかし言葉には重みのある干場社長。

 そんな干場さんには、こんな質問が飛び出しました。

Q:ぶっちゃけ「この出版社は10年後ないな」と思う著名出版社はどこですか?
「あんまり他社に詳しくないんですよ。『10年後勝ててるな』と思うところですか? 勝ててるなとは思わないけど、ダイヤモンド社に勝ててるといいなと思います(笑)。」

Q:こういう編集者はうちの会社にいらない」3つの条件を教えて下さい。
「まず名刺で仕事をする人。そして、仕事を右から左にただ流すような仕事の仕方をする人。それから、自分で新規の著者を発掘しようとしない人。あ、もう一つ。著者とは向き合うけど、読者と向き合わない人。うちにはいませんけど(笑)。」

 余談ですが、ディスカヴァー社のあのロゴには、なんと2000万円もの費用がかかっているそうです。

009                 漫画家の久世番子さんからの質問。久世さんは、イラストでの出演でした。


■ヒット企画連発! 電子書籍の先端をひた走るダイヤモンド社

 次に登場したのは、ダイヤモンド社の書籍編集局長第一編集部・局長を務める今泉憲志さんと、書籍編集局第3編集部の編集長を務める土江英明さん。電子書籍の先端を走る同社の、電子書籍についての考え方や、「紙媒体」との違い、最新の動向などを、事例と共に明かしてくれました。イベントの前日には、同社オリジナルの電子書籍ビューワー「DReader」に関する発表を行っていた同社には、こんな質問が投げかけられました。

Q:「ダイヤモンド社が『DReader』によってプラットフォーマーを目指しているという解釈は正しいですか?」
「別に大それたことを考えているわけではなくて。読者が読みやすいものを作りたいなっていうだけなんです。特にプラットフォーマーを超目指しているような、そんな野望で動いているわけではないですよ。」

Q:出版社31社で立ち上げた「日本電子書籍出版社協会」うまく行くと思いますか?
「うまく行くかどうかはわからないんですが、結構大変そうですね。と言っても、最近参加したばかりなのでよくわからないんですよ。前史が長い団体なので。」

 ちなみに、高田純次さんのヒット作「適当日記」を電子書籍版として売り出したところ、「App Store」にしては高めの700円という設定にも関わらず、相当売れたのだそうです。紙媒体としての動きは止まっていた同書が、電子書籍では「驚くほど」動いたとか。

006                  左が今泉憲志さん、右が土江英明さん。

■ちゃぶ台で会議。ハイテクとは対極(?)にあるミシマ社

 第二部最初のゲストは、自由が丘にある築50年の一軒家を社屋とし、ちゃぶ台をかこんで毎日会議を行っているというアットホームな出版社・ミシマ社の代表取締役・三島邦弘さん。会社が一軒家&ちゃぶ台になったのは、「ビルの中で 生きていけなかったのが最大の理由なんですよ。閉じ込められているような感じがして。」とのこと。漫画家の久世番子さんが「ゆるキャラ」と称したとおり、穏やかな雰囲気で、よれよれのTシャツと屈託のない笑顔が印象的な方でした。

005                     久世番子さんの「ミシマ社」のイメージ。ご本人も納得されていました。


■編集者って誰でもなれるの? 来場者からの過激質問ずらり

 最後は出演者全員に、来場者からの質問に答えて頂きました。イベント開始前から「本音を聞き出すような質問を下さい!」「むちゃな質問ほど採用されます!」と、出演者が苦笑いをうかべるような告知をしていたためか、直接的な質問が勢ぞろい。

Q:ディスカヴァー・トゥエンティワンで生涯働くんですか?
干場さん「もちろんずっとやって行きたいとは思いますけれど、それが後に続く若い人たちに良いことだとは思いませんので……。気持ちはずっといたいですけど、そういうことです。」

Q:プラットフォーマーにならずに資金が回収できるの?
ダイヤモンド社・今泉さん「『もしドラ※』が結構売れたので、回収できますよ(笑)。」
※大ヒット中の作品「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の略称

Q:電子書籍の波が押し寄せる中、書店に求められるものは何でしょうか。
ダイヤモンド社・今泉さん「電子書籍のマーケットというのは、リアルな書店さんとは明らかに違うんですよ。みなさん食い合う食い合うと言って……、その辺を結構あおっていらっしゃるかもしれないんですけど、明らかに違うマーケットだというのが僕らの実感です。」

Q:編集者は、誰にでもなれるものなのでしょうか。
干場さん「適正はあるかと思います。現実的には、出版社に受からないとダメですよね。ただ、たまたま出版社に受かって、たまたま編集者になった。そんな人が、そのまま編集者を続けているということには問題があると、私は思っています。」

008

                 「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の著者・山田真哉さんに来場者が質問。丁寧に答えて下さいました。

Q:ご自身が考える「スゴ編集者」を教えて下さい。
永江さん「紙か電子かということを関係なく、人に何か伝えることに熱中できる人だと思います。」

三島さん「一枚の鏡となって、書き手も気付いていないことを照らし出して、その人の面白い部分を引き出し形に出来る人。自分もそうなりたいと思っています。」

干場さん「違った視点を持っている人。今あるものの中から新しいものを生み出して、人々の間に感動をおこしていける人。」

ダイヤモンド社・今泉さん
「面白がれるやつ。面白がってやれば著者も巻き込めますし。面白がれるというのは、すごい才能だと思ってます。」

ダイヤモンド社・土屋さん「面白い著者に会ったとき、その『素材』に対して妄想して。その妄想の振れ幅がでかい人。予想の付かないような形を作る人。」

 議論が白熱し、イベントは少し押して閉幕のとなりました。主催者の水野さんはイベント終了後、「優秀な編集者がいっぱいいるのに、電子書籍の出現を恐れてしまっている。出版業界が動いている今だからこそ、やれることも多いと思うので、このイベントを企画したんです」と力説。編集者ももっと個性を全面に打ち出し、独立して行くべき時代がやってきているのかも知れませんね。電子書籍を恐れるな! 優秀な編集者よ、もっと羽ばたけ!

(ライター・鶴ひより)