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時代を越えて愛されるカメラ“ポラロイドカメラ”の魅力を徹底分析!『ポラロイドマニアックス』ライブレポート(10.7/11開催)

2010年07月20日

カメラのなか 三秒間だけ僕らは 突然恋をした!

「ポラロイド」という名前に聞き覚えがない方なんていらっしゃるでしょうか?すでにインスタントカメラの代名詞にもなっている名ブランドですが、実はすでに解散した会社であり、この名を背負ったカメラもフィルムもすでに生産されていないのです。それでも、まだまだこのカメラを愛する人はたくさんいるわけで。カルカル初のポラロイドカメラ・ファンミーティング「ポラロイドマニアックス」の模様をお届けします。

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まず、かんたんにポラロイドカメラのおかれている現状をおさらい。カメラの命ともいえるフィルムの生産が中止されたのが2008年。フィルムには消費期限が設定されているので、最後に出荷されたものもすでに(定められた)期限は切れています。もちろん使えば無くなっていくものなので、ポラロイド写真に触れる機会は年々少なくなっています。現在、Impossible社が代替となるフィルムを開発中。今回のイベントは、このPXフィルムの開発にかかわるお話もたくさん伺える、たいへん貴重な時間でした。

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まずお話をはじめたのは「ドクター・アンド」こと、A-Powerの安藤さん。実は、元・中の人。1987年から17年間にわたり日本ポラロイド社に勤務した中での苦労話や、苦労話や、苦労話…。大ヒットとなった小型のインスタントカメラ「Xiao」のために建設された工場が、ラインの稼働をまたずに日本でのブームが去り結局はひとつも製造しないままラインがなくなったとか。クリーンルーム内で使用されるフィルムが砂塵舞い散る工場で生産されていたとか。こんな話を聞いてしまっていいんだろうか!? と不安になるほどの内情をうかがってしまいました。だ、だいじょうぶなのかしら…。

現在販売されている唯一のポラロイド用フィルム、Impossible社のPXフィルムについてのお話も。オランダにある閉鎖されたポラロイドの工場を買い取り、かつてのポラロイド社・アグファ社の技術者を集めて開発されたフィルム。現在はまだ"Killer Crystal"と呼ばれる薬剤の過剰反応現象を抑えきれず、なかなか手軽に保存をすることが難しいよう。しかしながら、プロジェクトの今後には大きな期待をしたいところです。

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▲キラー・クリスタルが出てしまったPXフィルム。表面きらきらしてる。

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続いてはスイートロードの土肥さん。ニューヨークで開催された、PXフィルムのプレスイベントに参加したドタバタの顛末をうかがいました。その場で発表されることを知ったのも前々日に見たFaceBookのポストだったとか!もらったプレスキットに入っていたPXフィルム、試しに撮ってみたらまったく写らなくて驚いたそう。外光や気温の影響で、現状はかなり撮影条件がシビアなようです。キラークリスタルを防ぐための保存方法もいろいろと研究なさっていて(撮影後すぐに冷蔵庫へ、なんてなかなか素人には無理!)そういった技術と知識を伝えるワークショップも開催してゆきたい、とのこと。

土肥さんのお話のなかでとても印象的だったのは、「お客さんはカメラが欲しいのではなくて、そのカメラで撮ることが出来る写真が欲しいのだ」ということば。かつて東急ハンズの企画で、たくさんのポラロイドカメラをオブジェのような扱いで展示販売した時はほとんど売れなかったのだそう。けして手軽でも便利でもないポラロイドカメラのファンがたくさんいるのは、こういう理由なのだな、と感じました。

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▲休憩時間には「ドクター・アンドのポラロイドお悩み相談室」も開催。

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▲お客さま、その手にしているのはSX-70ではありませんか!

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後半は、フォトグラファーの藤田一咲さんを中心に、実際にポラロイドカメラで撮影された写真を紹介しながら、その描写の素敵さ・かわいらしさが語られました。独特のふんわりしたトーンに、なんだかつい微笑みがこぼれてしまう作品ばかり。

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藤田さんの写真はフィルムの質感に大きく左右されたものになって、同じような被写体でもフィルムを切り替えることで、写真の仕上がりがまったく異なるそう。例えばポラロイドフィルムには、「どこか懐かしい」記憶の中にある風景にリンクするような特性があったのではないか、と。そういう思いが強いので、残念ながらまだPXフィルムを積極的に使っていこうとは思えないとのこと。今後開発されていくフィルムにも、これまでのポラロイドフィルムが持っていたような特性が引き継がれてゆけば、というお話でした。

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善福克枝さんからは、コミュニケーションツールとしてのポラロイドの魅力をたっぷりとうかがいました。SX-70はそのコードネームを「アラジン」というのですが、このカメラは本当に魔法のような魅力を持ったカメラだ、と。

例えば、一眼レフカメラを持って街を撮り歩いていると、カメラ好きなおじさんに「なにで撮ってるの?」って聞かれる。「なにで」というのは例えばレンズだったりカメラの設定だったり。正直うっとおしい。それが、ポラロイドカメラを持っているとそんな面倒なことを訊かれることはほとんどなく、すてきなお兄さんに声をかけられるんだとか!すてき!

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ポラロイドは一眼レフと撮るものがまったく違ってきて、写真を撮るための心構えや視線の持ち方もかわるそう。「ちゃんと撮らなくてもいい」という気楽さと、撮った写真をその場でやりとりできるコミュニケーションの容易さを強く感じていて、そのうち「人生のシャッターチャンス」のようなものに出会えるかもしれない、と。ほんとうにポラロイドカメラが大好き!という気持ち溢れるすてきなお話でした。だって、カメラへの思いを訊かれて「最終的には"分身"かなあ」とまで笑顔でおっしゃる!

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「撮ってすぐ見られる」という本来の役割は、デジタルカメラの隆盛ですっかり影をひそめ、フィルムの生産さえすでに2年以上前に終了してしまった存在なのに、どうしてこんなに人の心を掴んで離さないのだろう? 今回登壇された方々と、ご来場のお客さまの顔を見ていたら、少しだけその理由がわかったような気がしました。ただ便利なだけのカメラじゃ、あんな素敵な顔にさせることなんかできやしない。今後のPXフィルムの行く先も含め、ポラロイドカメラがとてもキュートなものに感じられたイベントでした。

(ライブレポート・アオキエリ / EXHIVISION