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地図を持てよ、町へ出よう!超満員の中、地図好きの大集会が遂に開催!『大山顕・石川初・渡邉英徳 マッピングナイト』ライブレポート(10.8/15開催)

2010年08月31日

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本日の隠れた主役、Google Earth。

「マッピング」とはいったいなんでしょうか? 端的に言えば、個々の観察や調査結果、感覚的な要素を一定の量をあつめて、地図上に展開してみること。表やグラフというようなあらわし方ではわからなかった傾向が見えてきたり、これまでは思いもしない表現となることもしばしば。

その面白さ、新鮮さをたっぷり語りつつも、いや、そもそも地図ってなんだっけ? ケータイやカーナビでお馴染のGPSってどういう使い方ができるのだっけ? たくさんの事例の紹介と、会場みんなで「マッピング」を体験してみました。普段なにげなく暮らしていく街が、少しだけアップデートされるような一夜となりました。

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この日のために製作された「地図T」着用の出演陣。

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先陣を切るのは「GPS地上絵師」こと、石川初さん。そもそも地図ってなんだっけ?というお話。「地図とは社会制度をグラフィック化したものである」と。実際の世界には、行政界を区切る点線も、黄色や青に塗りわけられた土地も、まあるいみどりの山手線♪ も存在しない。地図は一定の文脈で読まれることを意図して作られ、わたしたちはその中で生きている。

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出典:Yahoo!地図

「マッピング」があらわにしてしまうものの実例として、特定の語がどのエリアから検索されているかを地図で塗りわけたものが紹介されました。「カッターシャツvsワイシャツ」が東西で綺麗に分かれたり、「サビオvsバンドエイドvs絆創膏vsカットバンvsリバテープvsキズバン」の熾烈な争いぶりに会場大爆笑。北海道からは「ゴキブリ退治」が検索されてない、とか。マッピングすることによって、物事には新しい次元が加わるとのこと。

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フォッサマグナとホテル単価の関連性(温泉が出るところは単価が高い!)や、「○○丘」「○○台」という地名の分布(表参道ヒルズは丘じゃなくて谷だ!)、上水と下水の配管の違い(上水は加圧出来るのでシステマチックに、下水は地形に左右される)などなど興味ぶかいお話が続きます。

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手洗い場は「ダムの末端」と「地形の入口」の接続点である、と。目からウロコ。

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故に、トイレ=上水と下水のショートカットデバイスであると!(会場爆笑)

後半はGPSと石川氏の関わりについてのお話(または私は如何にして心配するのを止めてGPSを愛するようになったか)。紹介された以下のサイトをご参考にどうぞ。
GPS Drawing
 氏がGPSで絵を描こうと思ったきっかけとなったサイト。
degree confluence
「緯度と経度が交差する」ポイントにGPSを持参し、ぴったりの写真を撮影するプロジェクト。「単なるグリッドで切ってみると世界はほとんどが自然で、都市部なんてほんの少しだということに気づかされる」とは氏の弁。石川氏がポストしたポイントはこちら
bs@gps
 地図の中から絵を見つけだし、GPS衛星に見守られながらそのルートを正確に辿ることによって描かれる、地上絵師としての活動は「東京ナス化計画」としてまとめられています。ナスカ…。

GPSで移動のログを取るようになってから「移動」の概念が変わったとのこと。日常的なふるまいを記録するところから始まり、そのうち「面白いログを取るために」移動するようになる、と。ログを記録しながらのスキーは「斜面を滑降で塗りつぶす」遊びになるなんて、ちょっと斬新過ぎる視点です。

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休憩時間の物販。地図T大人気でした。

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数々のマッピングサービスをリリースしている渡邉英徳さんからは、実際のサービスを見ながらその製作意図をうかがいました。デモで見るGoogle Earthの操作があまりにもすべらかで、会場からは感嘆の声が。

そもそも渡邊氏がマッピングサービスを始めたきっかけは、ニフティ(!)のリズムフォレストというオンラインゲーム。ゲーム内で植えた木が、モンゴルやマレーシアの植林プロジェクトの一部となって実際に植えられるという仕組みになっていて、それを地図上に表すためのシステムを作ったのがきっかけだとか。

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TUVALU VISUALIZATION PROJECT」は、海面上昇で沈みつつある国、ツバルの現状をさまざまな方法で記録し、Google Earth上に展開するこころみ。住民の姿を一枚一枚写真に収めてマッピングしたり、Google Earthにある空からの画像に、実際に現地で撮った地表からの写真をマッピングしてみたり(Google Earth上ではすでに水没したことになってる島さえも!)。どんな文献よりも饒舌にツバルの姿が見えてくるような気になりました。

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いくつものサービスが紹介されましたが、そのなかで最新のプロジェクトが「Nagasaki Archive」。被爆直後の写真や被爆体験談を、Google Earth上の長崎にマッピングしたもの。爆心地の風景、そのなかで体験談を語るひとびとの言葉の重さ…。写真とテキストだけでは伝わりきれない生々しさを目の当たりにして、会場じゅうが息を飲むのがわかりました。

「マッピングが功を奏するには、膨大な量のフィールドワークが必要だ」という話。個人による執拗な集積だけでなく(大山氏との「団地マッピング」)、たくさんの人が一枚だけ写真を撮って送るのでも(さくらマッピング)、なにか描き出されるものがあるとのこと。そう考えると、ネットとマッピングってすごく相性のよいものかもしれません。

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さて、大トリは「キング・オブ・街ネタ」こと大山顕さん。ここまでの話題があまりにも盛り上がってしまったので、自己紹介は光の速さで終了。「柏は千葉の渋谷である」という謎の言説に疑問を突きつけるところからスタート。「東の渋谷とか調子のるな」と。

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そんなことを思いながら地図をにらんでいると、地形的に三つの川の位置関係が重なるのではないかと気づく大山氏。

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大陸移動説ばりにぐるっと回してみると、市川=平和島、西船橋=新橋、津田沼=上野。おお、なんか納得できる。じゃあくだんの柏はどうかというと、なんと三鷹に対応。会場は爆笑とうなずきに溢れました。三鷹ねえ…。なんだか納得してしまうのはなぜだろう。

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さて、大山&石川両氏は、今回のイベントにあわせてまた新しい地上絵を計画。Twitter上で参加者を募り、3チームに分かれて馬を描きました。どこかに行くためではなく「衛星にひきずられて移動する」感覚の不思議さを感じたり、地形が変化する(たとえば坂のはじめとか)に人はふと立ち止まる、とのこと。くわしい事の顛末は、大山さんのデイリーポータル記事『体長2.5kmの馬の絵を描く』をごらんください。

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そしてでき上がったのがこの駿馬。視線の先には…。

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鹿島田…。じゃあ、どこに向かって駆けていくかというと…。

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なんと鹿島。どっちに言っても鹿がいると。合わせて読めと…(みなまで言わすな)「おかげさまで非常にいいログでしたね」とは石川さんの弁。いいえ、どういたしまして!

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どこまで東京?」は、「イメージの中の東京」を明らかにしてみようというプロジェクト。実際の都境界線とは関係なく、都心から各方面に延びる路線の駅名を選択してめいめいの思う「東京」の姿を描いてみようというもの。もちろん正解があるわけではないけれど、なんらかの傾向が見えてきたら面白そうである、と。しかし西武池袋線が「池袋」止まりなのはちょっとかわいそう過ぎる…。

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この「イメージ」が形成されるにあたっては、自分が生まれ育った地域の影響が非常に大きく。出身地ごとに集計データを分類してみると、これまた面白い傾向がみられました。「神奈川県民はなんだかおおらか(ゆるい)」と。前段は食い入るようにステージを見るお客さんが多かったのに、がぜん騒がしくなる客席。お酒のオーダーもひっきりなしでキッチンはてんてこまいでした。

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そして本日いちばんの衝撃は「どこ東?」の最多回答数のポイントを線で繋いだものと、ハンバーグチェーン「びっくりドンキー」の店舗がぴたりと一致したこと!非常に感覚的な事柄の集積と、なんらかの意図を持って出来ているものが一致する驚きたるや(なんとなく郊外にあるイメージだけど池袋にあったよな…と思ったけど、そう、さっきの西武池袋線!)。びっくりドンキーの店舗一覧をどれだけ熱心に眺めても、こんな事実に気づくことはないでしょう。まさにマッピングの妙。

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最後は、マッピングの面白さを実際に体験してみましょうのコーナー。渡邊氏製作のシステムを使って、会場&Ust視聴者の最寄り駅や出身地などをマッピングしてみました。この場にいる人の顔写真が地図上に展開するのはなんだか新鮮。

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驚いたのは、客席にフランス出身の方がいらしたこと。この宮殿、どこ!

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「地図」や「GPS」は、私たちにとってごく身近な存在ではありますが、だからこそ改めて「ちょっと違う」見方を知ることで魅力的な存在になるのだと思います。一見関連の無いような情報を地図にちりばめてみることでわかることがあったり、GPSで遊ぶためには結局自分が汗水たらして動くことが大前提であったり。これが決して風変わりな趣味ではないことは、超満員の会場+その数倍のUst試聴数が物語っているのではないでしょうか。次回のイベントではいったい何が見えてくるのでしょうか? 開催を心待ちにしたいと思います。

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おまけ:本日のオリジナルメニュー。「地〜図」ってさあ…(脱力)。

(ライブレポート・アオキエリ / EXHIVISION