ネットとリアルをつなぐソーシャル飲食店

ARは妄想で発展してきた!? カリスマARエンジニアと最新AR技術者が大集合した超満員イベント『AR 妄想×リアリティ』ライブレポート(10.8/29開催)

2010年09月13日

8月も末だというのに、気温はゆうに30度を超える29日。カルカルの下にあるZepp Tokyoでは、入場待ちの水着ギャル&ボーイズが大量占拠。きらめく肌を惜しみなく披露しながら入場待ちという奇っ怪な風景に、ついに熱中症で頭をやられたかと思ったものです。かたや妄想、かたや水着ギャル&ボーイズのGACKTライブ(※ドレスコードが水着というライブイベントだったそうです)。1階と2階の間には、一体何があるのでしょうか。

Dsc_8495_2▲ボーイズしか撮れていなかったマイカメラには、
呪いでもかかっているのでしょうか。

 さて今回のイベントには、カリスマARエンジニアと最新AR技術が大集合! ARの歴史から今、未来への妄想までもを一挙紹介する、妄想あり真面目ありエロありの、工学ナビpresents「AR 妄想×リアリティ」でございます。

 ARとは「Augmented Reality」の略で、日本語では「拡張現実感」などと呼ばれています。その名の通り「現実」を「拡張」するというスケールの大きな技術で、数年前から注目度が急上昇。昨今の浸透ぶりには目を見張るものがあります。

 パソコンやiPhone、携帯電話などのディスプレイを通して「現実」を見ることで、そこに新しい要素を合成提示するAR。空間に付箋を張るかのようにエアタグをつけるiPhone/Androidアプリ「セカイカメラ」が有名ですが、ほかにも等身大シャア専用ザクが出現するiPhoneアプリ「ガンダムAR」や、マンガ雑誌「ビッグコミックスピリッツ」も創刊30周年を記念して、AR技術を用いた企画を展開しています。我々の身近なところにも、じわじわと浸透してきている技術なのです。

■AR三兄弟、「ARToolKit」生みの親に挑む
■ARと「ARToolKit」の歴史
■味覚をも変えられる!? AR最新技術デモ
■アナログvs.技術者のAR

 司会進行は橋本直さん(工学ナビ)と、福地健太郎さん(明治大学特任准教授)です。

■AR三兄弟、「ARToolKit」生みの親に挑む

 まずは、AR技術探究ユニットとして活躍するAR三兄弟が登場。そしてスペシャルゲストとして、「ARToolKit」の生みの親・加藤博一教授(奈良先端科学技術大学院大学教授)がいらして下さいました。「ARToolKit」とは、ARアプリケーション作りを手助けしてくれるライブラリのこと。加藤教授が「ARToolKit」を開発してくださったおかげで、ARが爆発的に広がったといっても過言ではありません。

 そんな加藤教授にAR三兄弟は、今まで開発してきたARアプリを「褒めて!」とばかりに猛プレゼン。「ふーん」「で?」「わからない」と興味ありません発言を連発した加藤教授に、会場の誰もが「ただ者じゃない!」と感じたことでしょう。

Dsc_8560_2 ▲AR三兄弟の最新作である、漢字の書かれたマーカーで音楽を操る技術には、
驚きの表情&笑顔を浮かべていました。

■ARと「ARToolKit」の歴史

 お次は「ARToolKit」Java版の開発者であるnyatlaさんと、Flash版の開発者Saqooshaさんが登壇。加藤教授とともに、ARと「ARToolKit」の歴史をわかりやすく紹介してくれました。加藤教授は1998年にワシントン大学でARと接触し、研究の道へと進みます。このときには、ARとWEBの融合は考えていなかったそうです。

 初音ミクとARは、切っても切れない関係にある---。今回のイベントでは、そんなことも明らかになりました。日本でARが広まったキッカケの一つとして、ニコニコ動画にアップされた「ARToolKitで初音ミク」シリーズがあります。正方形のマーカー(印のようなもの、印の書かれた台紙)の上に立つ立体的な初音ミク。次第に動き、ネギをふり、踊るようになる課程がアップされていくのですが、そのたびに、未来の技術を見ているかのような感覚に陥ったことを今でも忘れられません。これらの映像に可能性を見いだし、ARに参入した人も少なくありません。事実nyatlaさんも、この動画を見て「ARToolKitが普及した世界を見てみたい」と思い立ち、ARの世界に飛び込んだとか。

 そして加藤教授も「ミクちゃん大好き☆」だそうです。教授、ミク話で最高の笑顔を見せてくれました。「けいおん!」のあずにゃん(中野梓)話でも盛り上がりを見せるなど、ARと萌えの相性の良さを再確認できたコーナーでした。

Dsc_8618▲加藤教授もプレゼン用資料として使うという動画「ARToolKitで初音ミク」。必見です!

■味覚をも変えられる!? AR技術デモ

 AR最新技術を用いた開発品デモは、行列ができるほど大人気。今回紹介された4つの最新技術をざっくりとご紹介いたします。


江戸川乱歩の「人間椅子」を、逮捕されない程度に作ってみた

 「とにかく触りたい!」と、触覚インターフェースを研究している家室証さんは、江戸川乱歩の「人間椅子」を再現。椅子の中に人が隠れ、その椅子の上に座った人の感触を楽しむという行為に魅力を感じるものの、実際にやったらきっと犯罪。ならば捕まらない「人間椅子」を作ろうという発想から開発が始まったそうです。

 2つの椅子を用いることで犯罪面はクリア。重さや動きを取得する「安座椅子」に誰かが座ると、「潜伏椅子」にて座られた感覚を味わうことができる仕組みです。重さや動きは「バランスWiiボード」で取得、それをBluetoothでPCに飛ばし、「潜伏椅子」に座る人へと届けます。「安座椅子」に座る人がじっとしていると、ぬくもりが伝わる親切設計。太ももあたりがホカホカします。

Dsc_8680 ▲椅子の中に人が入り、座った人の感触を楽しむ江戸川乱歩の「人間椅子」。
そして、 その上を行く妄想図。

Dsc_8736 ▲左が「潜伏椅子」赤いヒモの加減で重さを、膝の上に置かれた黒い板でぬくもりを伝達します。
右が「安座椅子」。クッションの下には「バランスWiiボード」が隠れています。


★味覚が変化!? ARクッキー
 

 鳴海拓志さんによる「メタクッキー ~味の拡張現実感」は、クッキーに視覚と嗅覚を重ねることで、味覚を変えてしまおうという大胆なもの。テレビ番組「ワールドビジネスサテライト」や「笑っていいとも!増刊号」でも紹介された技術です。

 まずは視覚。マーカーが焼き付けられた、プレーンな森永製菓のクッキーの上に、チョコ、イチゴ、アーモンド、レモン、メープルクッキーのイラストが表示されます。イチゴを選択すると、ほのかに漂ってくるイチゴの香り。クッキーを口元に近づけるとイチゴクッキーのイラストも一緒に近づき、香りも次第に強くなるという細かい作り。サクッと食べると……、確かに違う気がします!

Dsc_8694 ▲香り発生器&カメラ付きディスプレイを頭に装着。

Dsc_8850 ▲デモには長蛇の列! この日の一番人気でした。


★二次元が来い! 画面から飛び出した夢の世界

 はむ!さん「ARカプセル」です。その魅力を紹介した動画「【ARカプセル】ついにモニタから出てきてくれた (裸眼AR)」は、ニコニコ動画にて15万アクセス超を記録する大人気動画(2010年8月29日現在)。

 円柱のスクリーンに小型プロジェクタで映像投影しているため、ディスプレイ越しではなく、裸眼で見られる点が特徴です。二次元キャラクターが現実の世界に出てきてカプセルの中で動いているような、不思議な感覚に陥ります。また「こっち向いて」というと、視線がこちらに向く点も特徴的。目線が合うと、正直ドキッとします。

Dsc_8741 ▲手持ちの棒でつつくと、キャラ上にキラキラ星が舞い散る「キラッ☆」もポイントです。

★壁でもOK! 妖精キャラが山越え谷越え

 プロジェクタを用いたARインタフェース・立体ディスプレイの研究を行っている吉田匠さん「Twinkle」は、ゲームに活用すべく開発された作品です。手に持てるほどの小型プロジェクタで照らすと現れる、妖精キャラクター「Twinkle」。この「Twinkle」が、物体の形に応じた音や動きを披露してくれます。小型プロジェクタの横についているカメラでリアルタイムに物体を認識しているため、事前のプログラミングは必要なし。壁の模様をちょこまか歩かせる、なんてことも出来ちゃうわけです。

 今回は、ホワイトボードに描かれた「階段」や波線の上をちょこまか動いてくれた「Twinkle」。青色は水、赤色は火といった色認識もでき、水に濡れたキャラクターを火に近づけると乾く、なんてゲーム性を持たせることも可能です。

Dsc_8703

Dsc_8664 ▲ちいさな妖精「Twinkle」が、ホワイトボードに描かれた階段を下りているの図。
ちょこまか動いて、とってもキュートなのです!

■DPZ林さん、べつやくれいさん登場。アナログvs.技術者の「AR」

 ARの歴史、AR最新技術デモと来ましたが、いきなり緩くなります。テーマは「これからの『妄想』の話をしよう」。Twitter上で寄せられたARで実現して欲しい「妄想」を、技術面とアナログ面から妄想します。技術担当は、司会の橋本さんと福地さん。そしてアナログ担当は、ひもでGoogleストリートビューを再現する男・デイリーポータルZの林雄司さんと、突如参加することになったべつやくれいさんです。

Dsc_8770 ▲リアル「Googleストリートビュー」を再現中。

★出会い頭の衝突を目的とした食パン型ナビゲーション装置の開発
 GPSを食パンに仕込み位置情報を取得し……と話す技術担当を尻目に、おかんが食パンをひっぱるという大胆な発想を披露した林さん。むしろ食パンとぶつかれば、と斜め上を行ったべつやくれいさん。

Dsc_8801


★女子更衣室のロッカーに入った気分を体験したい

「すき間からのぞければいいのではないか」という意見で一致。そんな中、「家族を住まわす」という大胆な発想を披露した林さん。

Dsc_8807 ▲左から橋本さん、林さん、べつやくさん、福地さん。

★偉い人を見分けたい
 聞いた名前などをリアルタイムにググって知らせてくれる機能は? そもそも偉いって何だ……と悩んだ末に「エロい人」を見分ける話になる技術チームに対し、偉い人は髭の長さで、エロい人鼻血の長さでを見分けることを冷静に提案したべつやくれいさん。偉い人は「ポケットに正の字で!」と提案した林さん。

Dsc_8819 ▲流れているのは鼻血です。

★実世界と音楽のシンクロ
通勤電車を降りる駅のドアが開く瞬間にサビが始まり「俺カッコイイ」感を味わいたいという、中二的なアイデア。(by橋本さん)

★Google Body ~せめて欲しいところの予測検索AR もしかして太もも?
Googleは我々の生活に何処まで介入してくるのか、Googleは我々の性生活にまで介入してくるのではないか……!? ●●から●●と検索すれば経路を教えてくれるような感じ。希望のルートをいくつか入れるとGoogleが予測してくれるシステムはどう? 次の行き先とか、データはどう収集するの? 辿られる人の思考は? 辿る側だって要望はある! セーフサーチ機能もあったりして♪

 技術チーム、アナログチームともノリノリです。

Dsc_8827 ▲耳から背中までをググる!

 AR三兄弟から始まり、妄想(しかもエロ!)で落ちるという、素晴らしいイベントとなった今回の工学ナビpresents「AR 妄想×リアリティ」。インターネットだって妄想と欲望とエロで発展してきたのです。いつだってこの3つが原動力。もちろん、ARの発展にも欠かせない(はず!)。そんなことが身に染みてわかったようなイベントでした。

(ライター:鶴ひより)