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「ラーメン食いましたなんて書かない」。ソーシャル化の最先端を行くマイクロソフト・熊村さんが、日本のソーシャルマーケティングをぶった斬り!! 11月の『メディア&コミュニケーション研究会(メデコミ会)』ライブレポ-ト(10・11/1開催)

2010年11月09日

「ソーシャル」ってどう活用すればいいの? ぶっちゃけ効果はあるの? 広報・マーケティングに関わる人必見となった今回の「メディア&コミュニケーション研究会(メデコミ会)」。鶴野充茂氏が主催する、広報や広告、メディア・マーケティングなど、「伝える」仕事に携わっている人たちのための同業種交流会で、今年でなんと10周年。これまで1000回以上開催され、のべ5000人以上が参加してきた業界最大級の同業種コミュニティです。

 今回の特別ゲストは、マイクロソフトのソーシャルメディアリード・熊村剛輔さん(@gosuke)です。熊村さんは、マイクロソフトのソーシャル戦略を担うスペシャリスト。海外事例をもとにしたソーシャルメディアの展望を、主に広報活動やマーケティング視点から語ってくれました。タイトルは「海外事例に見るソーシャルメディアの広がりと新しいコミュニケーションの可能性」。会場は満員御礼、海外からのお客様もいらした11月の「メディア&コミュニケーション研究会」ライブレポートをどうぞ。

  1. 「ソーシャル化」は怖くない
  2. ソーシャル対応における、日本と海外の決定的な違い
  3. 海外でも表面化「ほったらかし」問題
  4. なぜFacebookで宣伝活動をするのか
  5. 発信するに値する? 海外の戦略と日本の「中の人文化」

 Facebookは5億人ものユーザーを誇る世界最大のSNSですが、日本での利用者はまだまだ少数。とはいえ、ブログ界隈からその魅力が発信されたり、TBSやユニクロ、無印良品といった大手企業が続々とファンページを作る動きがあったりと、活気づいてきていることは明らかです。
 しかし、Facebookをどう活用すれば良いのか、ファンページとは何なのか。そもそもソーシャルって何? などなど、いきなりやってきたソーシャル化の波に、不安を感じている人も多いのではないでしょうか。今回のトークライブでは、そんなお悩みをバッサリ斬ってくれます。

1.「ソーシャル化」は怖くない

 熊村さんはまず、ソーシャルマーケティングを進める上で今一番ホットな5つのポイントを呈示。

  1. Social Influence Marketing is more than WOM(Word of Mouth、口コミ).
    (ソーシャルマーケティングは口コミ以上)
  2. Your social strategy begins with your digital strategy.
    (ソーシャル戦略はデジタル戦略で始まる)
  3. Your owned platform can be just as social as Facebook.
    (あなたのプラットフォームもソーシャル化が可能)
  4. Every traditional marketing objective can be made social.
    (あらゆるマーケティング手法はソーシャルに置き換えて考えることができる)
  5. Measurement must be actionable.
    (実用的な「アクショナブル」が必要)

※海外では「ソーシャルメディアマーケティング」ではなく、「ソーシャルインフルエンスマーケティング」といわれることが多いそうです。

熊村:既存のマーケティングが変わるというよりは、単純に選択肢が増えたと考えていますね。僕たちは道具を与えられた。それをどう使って行けば良いのかという部分が、一番のポイントになっていると思います。

 ソーシャルが広告を変える、マーケティングを変えると叫ばれる昨今ですが、熊村さんは「選択肢が広がっただけ」とサラリ。それを理解した上で、「とりあえずやってみるか」ではなく「どう使うか」を考える必要があるといいます。Twitter、Facebookとツール単体で考えるのではなく、またソーシャルか否かに限らず、すべてをひとくくりにした上でのネット上の戦略、すなわちデジタル戦略を設定することが必要だそうです。

熊村:欧米のコーポレートサイトは、ソーシャル上に繋がるような動きを持たせようとする流れが出てきています。
鶴野:まずボタンがつきましたね。
熊村:この一年で、どんだけボタンがついたことか(笑)。

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▲赤いジャケットとメガネが眩しい熊村さんと、英文の嵐にやや取っつきにくそうな表情を浮かべる鶴野さん。

2.ソーシャル対応における、日本と海外の決定的な違い

 ソーシャル上では「actionable(アクショナブル)」であることがキーワードになっているといいます。

熊村:日本で作られているモニタリングツールやトラッキングツールって、海外のものとは全然違うんですよね。何が決定的に違うかって、(海外のものは)ツール上からダイレクトに返信できるようになっているんです。常にモニタリングしていて、気になる書き込みがあったらアクションする。大きなキャンペーンの場合、モニターにへばりついている人がいてもおかしくないし、実際にそのような動きが出てきている。

 常にモニタリングし、すぐアクションした方がいいと思うときには動けるような状態でいることが重要であり、日本のツールはそれができないといいます。

熊村:瞬間的なアクションだけではなく全体の傾向を見たりだとか、週次で月次で(会議を)やっていく中でも「次のアクションどうします?」って所は常に考えますよね。そういう意味も含めて「アクショナブル」であるというのは、キーワードになっていると思います。リアルタイムで追いかけると同時に、長期的に見たときの変動値を追うことも別途やります。その両方を平行してやらない限り、うまく施策として回って行かない。

3.海外でも表面化「ほったらかし」問題

 次のポイントは以下3項目です。

Facebook=「WOM+CRM」(口コミ+顧客管理)
・実は、何のPlanもなくFan Pageを作って失敗するケースが多い(実は問題になりつつある)
・Fanの多いFan Pageは、クーポン配布等、何らかの直接的なメリットを顧客に提供しているケースが多い。
・Fan Pageを開設する目的は、人が頻繁に訪れる所で、ちゃんとタイムリーに更新された情報を提供したいから。

鶴野:日本は「ソーシャルメディア担当」とか、わかる人だけがやるといった流れがありますが、海外ではどうなんですか?
熊村:日本では「ソロプレイ」で動いて、結果的に成功した人が多いですよね。海外では「ソロプレイ」はあまりないと思いますね。組織で動いており、誰がやってもある程度はできるようなものを作っている感じです。移動はありますし、担当者がいつ辞めるかもわからないですしね。組織でノウハウを持っておくことが必要です。

 とはいえ、海外でも「何となく手を出して放置」状態は多いといいます。たとえばFacebookのファンページ。話題になっているから何となく作ってみたものの、盛り上がらずに放置状態。これが昨今、問題になってきているとか。

熊村:一担当に依存してダメになるケースって日本だけじゃないんですよね。何のプランもなくファンページを作って失敗するケースは海外でも多くて、問題になりつつあります。いざやってみても結果的に放置になっているとか。
鶴野:書き込みがなかったりとか、ファンが25人つかなくてアドレスが変えられなかったりだとか。
熊村:それは結構ありますね(笑)。メジャーなブランドでも、細かいキャンペーンごとにファンページを作ったりすると失敗するケースが多い。
鶴野:書き込んでくれる人がいないと、ディスカッションは成り立たないとか?
熊村:書き込んで、インタラクティブなやりとりをしているかというと、意外とそうでもないんですよね。本当に「ファン」がいるページはクーポンを配布しているとか、直接的なメリットを提供しているケースが多かったりします。

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 ジャケットだけでなく靴も赤かった!! 「だから熊村さんのトークは3倍速かったのか」の声も。

4.なぜFacebookで宣伝活動をするのか

 それでは、なぜFacebookでファンページを作り、宣伝活動を展開するのでしょうか。ファンページとは、企業や個人が情報を発信するために、便利な機能を多数備えたコミュニティのようなもの。昨今の相次ぐ大手企業参入により、注目度が急上昇しているFacebook内の一サービスです。

熊村:人が頻繁に訪れるからという、ごくシンプルな理由なんです。コーポレートサイトには頻繁に行かないけど、Facebook上には頻繁に訪れますよね。一回ファンになってくれれば、更新の通知がプッシュできる。
鶴野:お知らせだ。
熊村:お知らせですね。人が頻繁に訪れる所で、自分たちが最新の情報にアップデートしたものを的確にプッシュしたいからなんですよ。
鶴野:プル型に見えて、実はプッシュ側なんですね。

 知って欲しい最新情報を的確に届けるため、多くの人が人が頻繁に訪れる場所に身を置いているだけ。Facebookだけではなく、Twitterにも当てはまることかも知れません。

鶴野:でも「ファン」って一体何なんですかね?
熊村:「ファン」っていってますけれども、実際「ファン」ではないかもしれないですね。こっちから情報を投げることに対して同意した、位の感覚じゃないですかね。ブックマークに近いと思います。今、日本でも企業の参入が増えていますよね。ひとしきりバブって、もう少しすればいっぱい失敗事例とかが出てきて、トーンダウンしてくると思うんですよ。
鶴野:失敗というと、どんな事例ですかね?
熊村:開いたけど何も起こらなかった、とかね。失敗と言えるかわかりませんが。そういった例が出て、落ち着いてきた頃に、じゃあどう使おうかといった本当のディスカッションがされてくるのかなーと思います。ブログがまさにそうじゃないですか。5年くらい前「ブログマーケティングだ!」って一気に盛り上がった後、一気にトーンダウンしたでしょう。でもここ一年くらいでようやく、ちゃんと使ってうまく機能させようということを真剣に考えて動き始めていますよね。多分、FacebookもTwitterもそういうことが起こります、きっと。知恵熱が下がって、その後どうするかが本番なのかなと個人的には思います。

 盛り上がりつつあるソーシャルマーケティングに対して、トーンダウンした後に本気で考えることが必要という、身も蓋もない答えを導き出した熊村さん。

熊村:こんなこと言っちゃっていいのかな。いつも言ってるからいいよね(笑)。

5.発信するに値する情報か? 海外の戦略と日本の「中の人文化」

 日本と海外との違いは、アカウントを運用する「中の人」にもあるといいます。

熊村:海外では、Twitter上で「今日は大盛りラーメン食いました」的な書き込みをする人は全然いないですし、ネタを振られてネタで返すことは基本的にないです(笑)。コンテンツとして伝えるに値するか、伝えた人がさらに広げてくれるようなものに値するかを、ものすごくプランしますよ。

 発信するに値しない情報は出さない。ムダに毎日更新しなければならないといった、強迫観念にとらわれているアカウントはないとか。

熊村:ソーシャルメディア上のコミュニケーションで多いのは「Usage(使い方)」と「サポート」なんです。8割くらいがこの2つですね。「Usage」は新しいプロダクトをどう使えばいい?
だとか、要望だとか。サポートになってくると、もっと切羽詰まった状況。「Break&fix」といわれています。なので、ソーシャルメディア上で出して行く情報がどういうものになってくかというと、必然的にこの8割をカバーするような情報が多くなってくるんですよね。FAQや情報はコーポレートサイト上で更新して行くわけですよね。それに対して的確なリンクを紹介するだとか。

 そこで、海外でもホットになっているトピックが「誰がやる?」という議論だそうです。

熊村:社内で誰が担当するかという部分もあるし、クライアント側でやるのか企業側でやるのか、それともエージェンシー側でやるのといったあたりが、議論として出てくるんですよね。プロモーションの場合「中の人」でなくてもいい所を切り分ける動きがあります。そこはエージェントに任せてしまう。かなり割り切ってますね。もう一つ、サポート系の場合は、自分たちでやって貰えるよう「中の人」に対してエージェンシー側がレクチャーするケースが多かったりします。

 ソーシャル上のコミュニケーションの約8割がレクチャーやサポート情報。対応は「中の人」以外に任せる動きもある。すでにソーシャルマーケティングが浸透している海外と、活気づき始めてきた日本では、戦略設計からファンやフォロワーに対するアクション、アカウントを運用する「中の人」まで、多くの違いがあることがわかった熊村さんのトークライブ。この後も、母数の少ないFacebookでファンページを開くメリットは? マイクロソフトのソーシャル戦略はうまくいっているの?
マイクロソフトとFacebookのあっと驚くような取り組みは?
などなど、多数の質問が寄せられました。その答えは「まめさんテレビ(http://mame3.tv)」でどうぞ。「メデコミ会」はTwitterレポート(#mame3tv)のほか、Ustream中継も行っていますので、参加できない方はこちらをどうぞ。

 なお、前回の「メデコミ会」で作成した「まめさんテレビ」のテーマソングは、尾飛良幸さん(@obi_y)のリードの元、本日のゲスト・熊村さんがサックスで、「カナダからの手紙」などでおなじみの畑中葉子さん(@hatanaka_yoko)が歌で参加して下さるなど、さまざまな展開を経て完成。イベントの最後にお披露目されました。完成曲や作成過程が「まめさんテレビ」に掲載されていますので、合わせてご覧下さい!(ライター:鶴ひより)

003▲トークライブ後、質問攻めに遭う熊村さん。やっぱり赤い!

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▲満員御礼! トークライブの後には、多くの方が交流会を楽しんでいました。

■メディア&コミュニケーション研究会
鶴野充茂氏が主催する、広報や広告、メディア・マーケティングなど、「伝える」仕事に携わっている人たちのための同業種交流会。今年で10周年。1000回以上開催され、のべ5000人以上が参加してきた業界最大級の同業種コミュニティ。

■鶴野充茂氏(@mame3)
自己演出マーケティングを手がけるビーンスター株式会社の代表取締役。「頭のいい説明 すぐできるコツ」(三笠書房)など著書多数。