ネットとリアルをつなぐソーシャル飲食店

宿題はFacebookで!?米国のソーシャルメディア作りと最高の活用方法伝授!毎月恒例メディア業界の大人気大交流会!12月の『メディア&コミュニケーション研究会(メデコミ会)』ライブレポ-ト(10・12/6開催)

2010年12月23日

 「米国でのFacebookが標準」は大間違い! 日本人の弱点と、ソーシャルメディアとリサーチの抜群の相性がわかった今回の「メディア&コミュニケーション研究会」、通称「メデコミ会」。広報や広告、メディア・マーケティングなどの「伝える」仕事に携わっている人たちのための同業種交流会で、なんと今年で10周年。これまで計100回以上開催され、のべ5000人以上が参加してきた業界最大級の同業種コミュニティです。主催は自己演出プロデューサーであり、自己演出マーケティングを手がけるビーンスター株式会社の代表取締役でもある鶴野充茂さん

 トークライブの特別ゲストには、知覚商品プロデューサーの川口一司さん(知覚総合研究所)をお迎えしました。川口さんは、科学的なリサーチによる商品開発およびグローバル化のスペシャリスト。大塚製薬の大豆バー「SOYJOY」ブランドを立ち上げるとともに世界に広めたことで、数々のアワードを受賞したお方です。

 川口さんは、アメリカで成功した日本の食品は2つだけだといいます。キッコーマンの醤油と、日清のカップヌードル。しかもキッコーマンの醤油は50年以上もかかってのことだとか。味作りの技術は世界一、なのに成功できない日本の弱点。そしてソーシャルメディアが生活の一部となっている米国での最新事例という2つの方向から、日本でのソーシャルメディアの「使い方」「流行らせ方」についてのヒントを教えてくれました。

1.Facebookで宿題!? 米国ソーシャルメディア事情
2.技術は世界一、なのに勝てない日本人の弱点
3.
数千万円の調査費は無駄だった!? SNSとリサーチの最高の相性
4.「米国でのFacebookが標準」は大間違い!

001▲知覚商品プロデューサー・川口さん(左)と、「メデコミ会」主催の鶴野さん(右)。

1.Facebookで宿題!? 米国ソーシャルメディア事情

 アメリカの高校生がFacebookを使えるようになって約5年。爆発的に広まり、その勢いは増すばかり。川口さんの3人のお子さんも、家ではテレビそっちのけでFacebookばかりだそうです。またお子さんたちは、宿題をFacebookでやることが当たり前になっているといます。宿題の情報をリアルタイムに交換しながらレポートを書く。そのためにモニターは2台、Facebook表示用とレポート用を設置しているそうです。ソーシャルメディアが生活に根付いていることがわかる事例です。それでは、なぜ生活必需品になるほどに広まったのでしょうか。

川口「アメリカの高校生にはあまり上下関係がない。クラブの先輩後輩という感覚もあまりないんですね。Facebookが高校生も使えるようになって5年くらいたつんですけど、あっという間に広がりました。」

 しかし、アメリカ在住の日本人は異なるといいます。

川口「日本人の高校生は、Facebook使いたくないっていうんです。なぜか。入ってきて欲しくない人や先輩がいるっていうんですよ。一回(Facebookの友達申請を)OKしちゃうと、どんどん入って来ちゃうでしょ。するとFacebookをやること自体にストレスを感じてしまう。」

 ソーシャルメディアは、いわばネット上での人間交流。育った環境も文化も違うアメリカ人と日本人の間に差が生まれるのは当たり前、と言い切って良いでしょう。

004▲お子さんの部屋激写! なるほど、ノートPCとモニターで二台分あります。

 

2.技術は世界一、なのに勝てない日本人の弱点

 ビールが真っ赤だったら? 青いビールって美味しそう? 私たちは何かを食べる前に、必ず目で見ます。川口さんによると、その時に目から入ってくる情報と、食べた時に舌から入ってくる情報は脳の同じところに送られるのだとか。すなわち、目で見ている段階から味の評価が始まっているといいます。

 またアメリカ人の10%は苦みを感じないそうです。日本人の「苦みが美味しい」という感覚を理解できないので、売り文句にしても全く響かない。パッケージに「ほろ苦」と書いても、その商品の魅力を伝える要素にはなり得ないそうです。

川口「文化の違う人たちの間で、どう概念が違っているのか。それを測らないと、商品をどうコントロールしていいかわからない。ビジネスも商品と同じなんです。ソーシャルメディアを日本に持ってくる時、どんなクロスカルチャー・メジャメント(Cross Culture Measurement、異文化の測定)をすれば、どんな風に広まっていくのかなというところをお話できればと思っています。」

 川口さんによると、Facebookにおける友達の平均数はアメリカで約200人~250人。対して日本では約18人だといいます。アメリカでFacebookに登録した時は、最初の一週間でメールボックスが爆発するのではないかというほど「友達」リクエストが来たそうです。対して日本では、2週間で一件だけ。あまりの反応のなさに驚いたといいます。前述の、日米高校生のFacebookに対する意識の違いと繋がる部分がありますね。

川口「カルチャーの違いが相当大きいのです。『アメリカのソーシャルメディア』と同じものが日本に入ってくるなんて絶対にありえない。なぜなら、ソーシャルメディアは消費者文化の上に成り立っているからです。消費者文化が全く異なる日本とアメリカで、同じソーシャルメディアが構築されるわけがない。」

 では日本でソーシャルメディアを流行らせるためには、何が必要なのか。3つのポイントを上げてくれました。

1.Cross Culture Measurement
 食文化や生活文化の違いからくる概念差の把握
 
2.Social Media Optimization
 消費者の生活に適合させるための最適化
 
3.Media Marketing & Creative
 マーケティング・プランとサービス開発

川口「まずはクロスカルチャーを測ることが非常に重要。2番目にソーシャルメディア最適化。日本人に便利に使って貰うために、どうすれば良いのかを考えることが2番目です。それに合わせてどういうサービスを提供するのかという具体的なビジネスプログラムが3番目にくる。」

 この3つは基本中の基本、そして日本の企業が苦手とするのが一番目の「クロスカルチャー・メジャメント」だといいます。

川口「これが苦手なために、キッコーマンが醤油で50年以上かかっちゃったりするわけです。ここを押さえておくと、どんなビジネスでも光が見えてくることがあったりします。ソーシャルメディアにも全く同じことが言える。まずは、どんな消費者文化の違いがあるのかを考えた方が無難ではないか、という結論です。」

007▲米国のソーシャルメディア上で多く語られているカテゴリ一覧。食べ物や趣味、ペットなど。

3.数千万円の調査費は無駄だった!? SNSとリサーチの最高の相性

 ソーシャルメディアとリサーチの抜群の相性とともに、日本企業の新たな弱点も見えてきました。

川口「ソーシャルメディア上で『お客様の夢を叶えます』とたきつけることで、本音がどんどんタダで集まる。普通のリサーチより本音を取れるでしょうね。自分の夢を実現したいがために意見するのですから。数千万円かけてやるリサーチもありましたが、いらないんですよ。こういうことができるから、企業は(Facebookの)ファンページを盛り上げるんです。」

 アメリカの企業はリサーチャーを自社で抱えており、ソーシャルメディア上で情報を集めることも、リサーチを仕掛けることも、アイディアを集めることすら簡単にできてしまうそうです。しかし、日本でリサーチのスペシャリストを抱えている企業は例を見ないといいます。

 内部からリサーチを仕掛けると、こんなメリットもあるそうです。

川口「意見してくれるユーザーの中から『良いセンス持っているな』という人を選定して、その人たちだけで議論してもらうと、色んな意見が出るわ出るわ。消費者だけで語らせると、こうも盛り上がるのか。何のために多額のお金を払ってフォーカスグループ(人を集めて意見交換をしてもらうリサーチ方法)やっていたんだろうと思いましたね。」

 またFacebook上には、消費者を選んでディスカッションをセッティングしてくれる「エンジン」があるといいます。

川口「参加している人にわからないように『あなたとあなたとあなた、参加してみませんか?』と繋いでくれる。年間使用料は数千万円なんですけど、そういうビジネスもあるみたいなんですよ。」

 また川口さんは、ソーシャルメディアには「裏」があるといいます。

川口ソーシャルメディアって自由に使えているように見えるんですけど、実は使われるもの。裏では情報なりなんなり取っている。そんな仕掛けがあると思った方がいいです。日本でもタダ使って下さいというだけではなく、盛り上げる理由を作るといい。目的を作って、ソーシャルメディアを使わせる。この調査に参加してポイントを稼ぐには、ソーシャルメディアを使わざるを得ないとうように。」

 目的なく参加することに対して、日本人は抵抗を感じることが多いそうです。なんらかの目的やメリットがあれば人は集まる。例えば前述した『お客様の夢を叶えます』と意見を募集し、それに回答するためにはソーシャルメディアへの登録が必須といったような導線を作ること。mixiは友人との交流を、モバゲーやGREEは無料ゲームを全面に打ち出すことで集客を測っています。日本でのFacebookの集客が進まない理由は、登録する目的やメリットが薄い点にあるのかもしれません。

005▲熱弁をふるう川口さん。ビールも入り、「本音」が次々と飛び出します。

4.「米国でのFacebookが標準」は大間違い!

 ソーシャルメディア上でのリサーチが素晴らしいことはわかった。しかし、ネット上の会話は浅いという印象がある--。会場からはそんな質問が寄せられました。川口さんは、これもアメリカと日本の違いだといいます。

川口「アメリカ人は目の前にいてもハッキリ物事をいうので、ネット上だとより表現がストレートになる。『No』ではなく『That’s wrong』、その意見は間違っていると。日本だと、そこまでのパワーは込められないですよね。」

 ソーシャルメディア上でリサーチ事業を始めるとしたら、日本人でも意見を述べやすい環境の構築が必要になりそうですね。余談ですが、アメリカ人の「OK」の8割はネガティブ、「まあ、いいんじゃない?」「悪くないんじゃない?」といった表現に使われるそうです。しかし日本人は「大変良い」と判断して二重丸つけてしまう。アメリカ人のポジティブ表現は実はネガティブだったという事例は多く、アメリカでリサーチを行う場合は、そんなニュアンスの違いを把握しておく必要もありそうです。

 次の質問は、アメリカ以外の国でのソーシャルメディア事情について。川口さんは、「フランス人は日本と似ているところがあって、一人一人の友達の数は多くないんです。」と事例を挙げるとともに、「国によって全然違います。アメリカだけを見てこれがグローバルだと思ったら大間違いです。」とキッパリ。Facebook文化は今から構築されてくる段階であり、日本では2011年1月に公開される映画「ソーシャル・ネットワーク」が転機になるかもしれないといいます。

川口「あの映画もアメリカが仕掛けたのではないかという話がある。ソーシャルメディアはグローバル化されていません。グローバル化のためにアメリカが使う手というのが映画です。そんな魂胆があるのではないか、と推測する評論家もいます。」

 またソーシャルメディアを地域に根付かせるためには、最低10年はかかるといいます。

川口「大学生に買わせようとしたらその10年前、小学生のころにすり込んでいればいい。これはかなり確率の高い科学的理論です。違うものを違う地域に根付かせる最低期間がそれくらいです。アメリカのソーシャルメディアは、あと2、3年くらいでどう落ち着くかがわかってくる。日本は元年なので、かなり先の話です。フランスも3年くらいなので先の話です。フランスも中国も試行錯誤しています。ソーシャルメディアは、どの国でも完成されていないんじゃないかと思います。」

 その他、米国経済雑誌「フォーブス」でも紹介されたFacebook上でのユニークな手法や、米国ビジネス界でのソーシャルメディアの使われ方、ソーシャルメディアで流行りやすいキーワード一覧、川口さんの「目で食べる」研究の最新事例など、情報ぎっしりなトークライブとなりました。すべてを見たい方は、Ustream(http://www.ustream.tv/recorded/11286357)でご覧下さい。

 次回「メデコミ会」は2011年1月11日(火)。いつもの第一月曜日ではありませんのでご注意下さいね。(ライター・鶴ひより)

Mame3▲「mame3tv」テーマソングのプロモーションビデオお披露目もありました!

006▲トークライブの後は交流会! お酒片手に名刺交換なんて光景も見られる、肩の力が抜けた交流会です。

■鶴野充茂氏(@mame3)
自己演出マーケティングを手がけるビーンスター株式会社の代表取締役。「頭のいい説明 すぐできるコツ」(三笠書房)など著書多数。