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メディアも出版業界も殺到!本の面白さはタイトルで決まる?年末恒例大人気イベントとなった『日本タイトルだけ大賞2010~電子書籍から水嶋ヒロまで真相なう。』ライブレポート(10.12.11開催)

2010年12月25日

なんとなく書店をぶらついていて、目に留まった本に「ハッ」としたり、「クスッ」とさせられた経験はあるだろうか。レジには持っていかなくても、思わず手に取ってみたくなる「タイトル」という名の魔力は書店に確かに存在する。

この度二年目を迎える「日本タイトルだけ大賞」は、まさにそんなタイトルたちのオンパレード。ノミネートされた400以上のタイトルからベスト100に絞ったというだけあって、発表されるタイトルに会場は爆笑、失笑、苦笑の嵐。あの噂の著者にまつわる危険なトークや「いいタイトルとはなにぞや?」という真面目な議論も合間に挟みながら、2011年の出版業界を占う4時間越えの大イベントとなった。

■第1部はノミネート作品ベスト100を発表!

4部構成の第1部は「タイトルだけ大賞公開審査」。まずは「日本タイトルだけ大賞2010」実行委員の3人が登壇。

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ミリオンセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』著者の山田真哉さん

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ブックガイド新刊JP/オーディオブックサイトFeBe運営の上田渉さん

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累計1億PVのモンスターサイト「僕の見た秩序。」管理人のヨシナガさん

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当日のスペシャルドリンクは、「もし高校野球の女子マネージャーがドリンクを頼んだら(もしドリ)」と、「超訳 水嶋ヒロの言葉」という危険な香りしかしない(特に後者)が会場を賑わせた。「高校生なのにアルコール入り?( 写真参照)」というツッコミは脇に置き、つづいてゲストの登壇。

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書評家、アルファブロガーの小飼弾さん

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BS11で放送中「ベストセラーBOOK TV」司会・企画の斎藤広達さん

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絵本「おかっぱちゃんとひみつのともだち」も発売中。フリーアナウンサーの古瀬絵理さん

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この模様はツイッター、Ustreamで生中継! ダダ漏れ女子、そらのさんを迎えての配信視聴数は一時世界で15位を獲得した(ちなみにその時の1位は某日本集団アイドルのライブ配信)。

大賞は、1.審査員の審査、2.ツイッターによる投票、3.会場のなんとなくの雰囲気、という何よりも公平な審査方法によって決定と発表された。去年同様、大賞と同時に残念賞も選ばれる。タイトルを読み上げるプレゼンターには、朗読の専門家「朗読少女」こと乙葉しおりさんが登場。

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iPhoneアプリの「朗読少女」。最初トラブルでなかなか立ち上がらず、Windowsの外部接続音「ベポッ」の音が会場に何度もリフレイン。そんな様子を見た小飼さんは「Windowsは嫌いってことだな!」と一蹴。違います! 恥ずかしがり屋なだけです!

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なんとこの「朗読少女」、今年末のコミケにも出展するとのこと。

そしてここからは「朗読少女」が続々とタイトルを読み上げていく。今回は記念大会のため、過去の作品も含まれているとのこと。全て紹介しきれないので、印象的な場面を紹介。

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まず最初にインパクトを残したのは、「借金お嬢クリス」3部作。サブタイトルが
「42兆円耳を揃えて返してやりますわ」
「42兆円踏み倒してやりますわ」
「令嬢はいかにして42兆円を返済したか」
と変遷していく様子に会場がどよめく。「これは3つセット。ただ中身を読んでいないので続刊しているのか終わったのか全く不明。それがこの『タイトルだけ大賞』のいいところであり悪いところでもある(笑)」とは山田さんの談。

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「朗読少女」のしおりちゃんはどうやら読めない単語がいくつかあるらしく、卑猥な言葉は基本的にNG。

この画面では、「ウンコ」という単語がどうしても言えず、「つ、次行きますね」と誤魔化していた。

その下にある「IQ84以下」は、よーく見ると「IQ(アイキュー)84以下」。しおりちゃんも思わず間違えたタイトルに会場からは拍手。

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「Excelでモテるきれいな表とグラフ作成のコツ」
「エクセルができたくらいで好きになんかならないんだからねっ!」
の2連打に会場が爆笑。

「見事なアンサーソング」(ソングじゃないけど)と評された華麗なコンボだった。

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大いに流行ったドラッカー本において、異彩を放つのが「ドラッカー霊言による「国家」と「経営」」

「こりゃ店員さんも間違えるよ! でも霊言だからね!」という装幀はたしかにドラッカーが中央にドーン。カスタマーレビューによると霊言では「気さくな人」になっているのだとか。

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後からジワジワ来る「スラムダンク孫子」。正直何言っているのかわからないところが印象に残る。

この他にも、「250は言いすぎでしょ!」のツッコミが入った

「俺がジダンに本当に言ったこと 頭突きを呼ぶ男マルコ・マテラッツィがこっそり明かした250の挑発発言集 超クールなFIFAの見解、タトゥーの秘密も!」

や、「そこまでしたくないから結果読まないよね」と評された

「命とひきかえにゴルフがうまくなる法」

の他、

「かべにプリンをうちつけろ」

「ビールは背筋力で飲め!」

「熟女少女」

「放屁という覚醒」

また、しおりちゃんが読めなかった

「パンツマンVSおもらし教授 あなたのお名前なんてーの?」
および
「パンツマンVSくいこみウーマン あやうしパンツパワー」

などと粒ぞろい。
小飼さんのしおりちゃんに対する「『放屁』は読めて『おもらし』と『くいこみ』は読めないのかよ!」というツッコミはごもっとも。

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ここからは「もし高校野球のマネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」に端を発した「もしも~」シリーズが羅列される。そして最後はあの「KAGEROU」

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「もうタイトルだけ大賞は『もしドラ』で決まりじゃん! だってタイトルだけで100万部売ったんだよ?!」と小飼さんが叫ぶと、「いや、あれは装幀もあったんと思うんですよ」と山田さんがすかさずフォロー。

「装幀が霊言だったら絶対売れてませんよ」の発言には「ドラッカー本としては霊言の方が面白いと思う」と対応する小飼さん。さすがです。

■怒涛の2010年の出版業界を振り返る第2部!

「2010出版業界振り返り ~電子書籍から水嶋ヒロまで真相なう。」と題された第2部は、テーマからしていよいよ危険なトークの匂いが。「途中でUstreamの音声消しますから、ツイッターで書かないでくださいね!」と言ったとおりにサブタイトルの「あの」話題が炸裂! あらかじめ書いておくと、筆者もここには書けません……。すみません。

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この一年に出版業界に起こったことを、気になる話題に触れながら振り返った。

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こちらがそのスライドの一部。「あ、これこの時期だったのか」という事柄も。

斎藤さんが「出版社はどこも大変だと思いますよ」と語ったように、明暗分かれたトピックスもあるなか、インターネット、電子書籍関連の話題が5月あたりから多く挙がっているのが印象的だった。

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9月の「ツイッターで本を値下げ」という話題では、会場にマイクが回った。マイクを受け取ったのは、「ブックーポン」さん。

こちらは公式サイトにある「応援ツイート」からツイートすると、決められた期間内のそのツイート数に応じて対象の電子書籍が値引きされるというもの。

例えば、「ゲームデザイン脳 桝田省治の発想とワザ」という本は通常1000円のところ、1000ツイートで最大600円まで下がる。「まずは電子書籍を実際に手に取ってもらうのが目的」と男性は話した。

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「来ました! おめでとうございます!」と声の調子が一段と上がる山田さん。もちろん話題は「KAGEROU」へ!

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「予約も40万部越えたらしいですねー」などという話もそぞろに、19時45分、ついにUstreamの音声が切られる。皆様は写真でせめて雰囲気だけでもお楽しみください!

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あんな話やこんな話が……。

音声が上がったときには、「水嶋ヒロさんを応援しよう」という結論にたどり着いていた。どんな流れがあったかは、会場にいた人達のみが知る……。

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そして話は12月の話題へ。と、ここで小飼さんが乱入!

そして一言「ここ(12月のスライド)に出てる人達みんな打ち首ものだよね」

また、「ガラパゴスは通信機能付いてるからまだマシだけど、読者目線の人っているの?」と一閃。

アニメ規制の話題については「都の人は本を読む能力がないの。言っときますよ、都はみなさんよりバカなんですよ!」と絶叫!

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というわけで第2部が終了。

■第3部は真面目に議論! 売れるタイトルとはなんぞや?

ここからは、「激論! 売れるタイトルはこれだ」と題した議論が展開。出版マーケティングコンサルタント、ビジネス書評家の土井英司さんを迎えて、売れたタイトルはなぜ売れたのか? いいタイトルとは何か? などを考えていった。

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「2010年に売れた本のタイトルはやはりいいですね」という土井英司さん。

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2010年では「これからの正義の話をしよう」に注目しているという土井さん。

「早川書房さんはタイトル付けが上手い」と話しながら、「これから~」については「乗り遅れてはいけない、ということですよ」と分析した。この本を読まないことで、未来に進めないかも知れないという切迫感がどこかに出てくる。現在から未来への「時間軸」を上手く使うことで、読ませようとしているのだ。

「誰とでも15分以上会話が途切れない66のルール」については、「会話が途切れるというのが恐怖なんです」。小飼さんが「そうなんですか?」とぶつけた疑問には「小飼さんは別です(笑)」。会場もしっかり湧かせた。

最も印象に残ったのは、「もしドラ」のタイトル分析。

「高校野球部というのは非営利団体。それが顧客創造していく物語は、実は直接顧客と会わないビジネスマンの状況と一緒。実際には彼らは多く存在するのに、これはビジネス書が今までやっていなかった切り口。高校野球に使えるなら、年齢、世代を問わず『私にも使える』となる」。

さらに「上田(惇生)さんの推薦文が担保」になっていて、そこに、「自分よりも力のない人が(ドラッカーの)知識をつけて、(実はドラッカーを知らなかった)自分を追い抜かしてしまうのではないかという『恐怖』が加わった」と土井さんは分析した。

ふ、深い……。筆者も好奇心に負けて電子書籍で「もしドラ」を読んだクチでした……。

他に上がったトピックスとしては、

・売れているダイエット本にはタイトルに手軽なメリットがある
・タイトルにおける担保(タニタ、ドラッカーなど名のあるもの)は重要
・外見が変で中身の面白い本を推薦するとギャップで売れる。
・ミリオンセラーは普段本を読まない人が読むから、自動的につまらなくなる
・人は何を言ったかよりも誰が言ったかが重要。だから、プロフィールが大事。
・ただし、著者の顔を出さないことで普遍性を出す手もある(ex.夢をかなえるゾウ)
・不謹慎は売れる

などなど……。

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そんな議論にカンペを出す斉藤さん

最後に、2011年のキーワードは「自立」だと予想する土井さん。曽野綾子著「老いの才覚」が売れてきていることを例に、「他人に依存してる人が多すぎる。他人に依存してばかりだと、今度は自立がしたくなるはず」と話して議論を締めくくった。

■ついに大賞発表の第4部! 各個人賞にも拍手喝采!

そして最後は大賞の授賞式。出演者全員が登壇して、個人賞とその理由も語った。

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まずは個人賞の発表から。

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上田渉賞は、
「Excelでモテるきれいな表とグラフ作成のコツ」
「エクセルができたくらいで好きになんかならないんだからねっ!」の合わせ技!
受賞理由:「いまのオタク文化を反映しているのと、なによりツイッター投票がベスト3に入るくらい多かった!」

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小飼弾賞は、
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
受賞理由:「大賞を選ぶと言うつもりで推しました。実際に売れたわけですし、文句ないです」

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斎藤広達賞は、
「即答するバカ」
受賞理由:「帯が出てないですが、帯の『無理っす。』がよかった」
斉藤さんの「あれ言われると結構ムカつきません?」の声には「わかるわかる」の同意。筆者も気をつけます!

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ダダ漏れ女子、そらのさんのそらの賞は、
「ふつうの女の子がルンルンお金持ちになる方法 プリティ・ビリオネア養成講座」
受賞理由:「直感と、長いけどよくわからないのが面白い」
「ビリオネアになったらUstream買えるよね」「話がリアル!」のような会話も。

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土井英司賞は、
「これからの『正義』の話しをしよう」
受賞理由:「パクり本が出てきたらやっぱりすごいタイトルなんです」
「これは正義(まさよし)とは読まないですよね?」とのボケには「そう! いいタイトルは周りがツッコめて遊べるんです。そういう意味でも素晴らしい」と土井さん。

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「『り』が違ーう!」と叫んだ古瀬絵理さんの古瀬絵理賞は、
「私の胸は小さすぎる」
受賞理由:変なタイトルだなと思って手にとったのですが、恋愛の詩集としてものすごく秀逸でした」
「でも、古瀬さんが言うとすごいねぇ、なんか……ネットの向こうに敵を作ってると思いますよ?」
「そんなことありません!」
「というかそもそも中継映像のビジュアルが面白い(笑)」

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山田真哉賞は、
「借金お嬢クリス 42兆円耳を揃えて返してやりますわ」
「借金お嬢クリス2 42兆円踏み倒してやりますわ」
「借金お嬢クリス3 令嬢はいかにして42兆円を返済したか」の合わせ技!
受賞理由:「3つの合わせ技なのですが、1、2と一人称で来て、3巻目でなぜか三人称になる。これは3巻目の3と三人称の3をかけているに違いない。これは素晴らしい!」

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ヨシナガ賞は、
「放屁という覚醒」
受賞理由:「打ち合わせから引っ掛かっていた。ツイッターでも投票が多かったし、僕が選ばないと誰も選ばないだろうと思いました。内容はわかりませんが(笑)」

そしていよいよ「日本タイトルだけ大賞2010」の発表!

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ドラムロール!

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バン! 「日本タイトルだけ大賞2010」は

「スラムダンク孫子」

に決定! おめでとうございます!

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「インパクトもあり、ツイートも一番多かった」
「この本の中でスラムダンクの話は絶対してないと思う」
「そもそも漫画のスラムダンクなのか本来の意味のスラムダンクなのかわからない」
「というかみんなこれ買うの?」
「タイトルだけ大賞は手に取ってもレジに行くかは関係ありませんから!」
「~系男子の流れで流行るかもよ?」
「孫ですか!」

という褒めているのかけなしているのか全くわからないツッコミ満載の進行に会場は大盛り上がり。

続いて残念賞の発表!

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ドラムロール!

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バン! 残念賞は

「命とひきかえにゴルフがうまくなる法」

に決定! 残念ですがおめでとうございます!

「大賞と同じくらいツイートされていた。ただ、1995年の本」
「ツッコミ待ちな状態。なにが書かれているか全くわからない」
「(中継視聴者に向けて)ぜひ調べてください」
「でも読んだら命取られるんでしょ?」
「実は中身を知っているが見ないほうがいい」

とこちらも大賞に負けないくらいのツッコミがいっぱい。なお、前回残念賞を取った「できる男は乳首で決まる」は、即ソールドアウトしたそう。これはまさか……。

そして最後には全員から一言。

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斉藤さん「年末に向けて『KAGEROU』が発売になりますが、出版業界も大変なので、こういったイベントに乗っかって、ちゃんと賛否両論語りましょう。変なレビュー書いて溜飲を下げるような変な人にならないでください。ありがとうございました」

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小飼さん「まずは女子高生すごいなと。あと女子高生よりも頭の中身がない人に規制されるのはあまり気分が良くない。この2点ですね」

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土井さん「日本経済が悪いので、これからは夢を追うようなタイトルが売れる。編集者さんはそれを意識してほしいと思います」

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古瀬さん「私が出版した絵本は絶対にノミネートされないタイトルです。また来年もよろしくお願いします!」

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上田さん「こういった楽しいイベントをやることで、出版業界や経済が盛り上がればいいなと思っています。また来年もぜひやりたいです。ありがとうございました」

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ヨシナガさん「僕はどちらかというとシステム側ですが、いまネットでクリックされるものはちょっと変わったものが多い。それがこのタイトルだけ大賞には共通していて、言い方は悪いが釣って、数字を集めて結果を出すというやり方が出版業界には今後必要なのではないか。そういうイベントを一緒に作れて嬉しく思っています。また来年もぜひやりたいので、よろしくお願いします」

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山田さん「実は今回は赤字でした。僕が単純に定員のキャパシティを間違えていただけですが。来年はやると思いますが、出版業界も赤字続きだと絶対に続かないので、黒字になるためにもより話題のある物、いい物、面白いものを出していく流れができればと思っています。本日はご来場ありがとうございました」

というわけでイベントが終了。みなさんお疲れさまでした。このあとイベントは忘年会も兼ねた名刺交換会へ。

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イベント終了後も思い思いの時間を楽しんだ。

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豪華賞品のビンゴ大会も行われた。

長い時間もあっという間だった今回の「タイトルだけ大賞2010」。名は体を表すという言葉通り、タイトルはその本にとっても命運を分けるものになるはずだ。「冗談半分」と山田さんは言っていたが、大賞に選ばれた「スラムダンク孫子」が残した印象強さから学び取ることは何かあるはず。「タイトルだけ大賞」が証明したように、「狙った」タイトルは、見ているだけでとても楽しい。

2011年、書店で「ハッ」とさせられることもきっとある。また来年のノミネート作品を眺められることを、心待ちにしたい。

(ライター・安田俊亮)