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2011年、地方ミュージアムの明日はどっちだ?!北島三郎からUMAまで。旅行の目的が一味変わる『ミュージアムめぐりトーク5~博物館で日本の魅力を再発見!』ライブレポート(10.12/19開催)

2011年01月01日

師走も半ばを過ぎたお台場、家族やカップルがクリスマスに賑わうヴィーナスフォートを横目に、ここカルチャーカルチャーでは、地方博物館の魅力と未来について語っていた。

五回目の開催となるこのミュージアムシリーズ、東京を離れて地方の博物館特集ということで、みうらじゅん風に言えば「どうかしてるよ!」的なトホホなものが連発かと思いきや、最後にはミュージアムの未来への思いに胸を打たれる熱い展開も待っていた。これは2011年、博物館を巡るための旅行も考えなくては!

■前半、津村さんのターンは「人物顕彰モノ」で地方博物館の魅力を語る!

登壇したのは、ミュージアムシリーズではすっかりおなじみ。博物月報主宰の盛田真史さんと、建築家の津村泰範さん。

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ミュージアム探訪の成果を発信するサイト、博物月報主催の盛田真史さん。

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(株)文化財保存計画協会研究員、博物月報レポーターという顔も持つ建築家の津村泰範さん。

「ある場所に行って、その土地の人物を知れるのが面白い」ということで津村さんがかかげたのは、その名も「人物を顕彰する記念館ばっかり」というテーマ。

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サブタイトルは「地方を知るには、その土地ならではの人物を知ろう!!」。

サブタイトル……サブ・タイトル……サブ。タイトル。というわけでまずはこちら!

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まずは函館からサブちゃんがドーン!
隣に写っているのは「半ば強制でした」という微妙な表情の津村さん。
入場料を払えばコンダクターさんが必ずひとり付いてくれるそう。

・北島三郎記念館

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コンセプトは「歌手・北島三郎の大いなる足跡」。

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ここではオプションで3Dのサブちゃんと夢の競演が可能!
ただし3150円! これはスゴイ!

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サブちゃんの生い立ちがわかるヒストリーゾーン。
少年時代に乗っていた汽車、東京に出てきて下宿していた部屋なども再現されているというあまりに赤裸々なヒストリーに津村さんは「ファンじゃなくても楽しめますよ」の一言。

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「次はオンステージです!」とツアコンさんの案内に導かれれば、ステージ上にサブちゃんが圧巻の登場。
津村さんの感想は「かなりリアルでよく出来ている」。

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最後には等身大のサブちゃんと握手ができる(半ば強制)。
これで1500円の入場料はお得でしょう!

・吉野作造記念館

「今度は少し真面目に……」と続いては宮城県大崎市にある「吉野作造記念館」。

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吉野作造さんは大正デモクラシーの旗手として有名な方。サブちゃん同様、吉野作造さんのプライベートヒストリーを学べるこの記念館は内容も充実だそう。パンフレットを見ても内装は豪華そうです。

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「そしてこれが圧巻!」と津村さんが話したのはこのブック型の巨大スクリーン!
画像の上部に注目。

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この巨大な本が……

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開いてスクリーンになってしまう!
津村さんいわく「正直吉野作造うんぬんよりもこれがすごいんですよ。一見の価値があります」。
たしかにこれは実際に動くところを見てみたい!

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こちらは「いきなり作ちゃんて言われてもねえ(笑)」と突っ込まれた、作ちゃんエピソード満載の持ち帰り可能な小冊子。
最近復活を果たしたお笑い芸人に似ている表紙も特徴的。会場にも実物が回された。

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こちらがその実物。

・盛岡市先人記念館

続いては「盛岡市先人記念館」。

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盛岡の先人、その数なんと130人
なおこの先人たちは、「先人検索システム」なるもので検索が可能。
1人に1分の時間を割いても130分かかる計算なので、ものすごい時間がかかってしまうとのこと。

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特にフィーチャーされているのは、新渡戸稲造、米内光政、金田一京助の3人。

130人も顕彰している先人記念館の他に、原敬記念館、石川啄木記念館という2つの記念館も存在する。
そんな盛岡市のパンフレットには「クイズもりおかの先人たち」とこの5人に関するクイズが記載されている。
というわけで、その一例をどうぞ。

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問題①:新渡戸が今から100年以上前に、日本の文化を外国に教えるために英語で書いた本は?
こちらはご存じの方も多いだろう、会場からもすぐに正解の「武士道」の声が聞かれた。

問題②:新渡戸はアメリカ留学時代に知り合った女性と国際結婚しました。奥さんの名前は?
「これがわかったら今日の飲食代タダにしてあげます」とテリーPが言うほどの超難問。
「ヒントも出しようがない」というわけで早速正解へ。

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正解は「メリー・パターソン・メルキントン」。えー……。

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このようにクイズ形式で先人たちの勉強ができる。

・もりおか啄木・賢治青春館

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こちらは銀行を改造したという「もりおか啄木・賢治青春館」の紹介。
なかには詩集にちなんだ喫茶店も入っている。

・石ノ森章太郎ふるさと記念館

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宮城県登米市にある「石ノ森章太郎ふるさと記念館」。
登米(とめ)市は、石ノ森章太郎さんの生まれ故郷で、ここでこの記念館と生家を見学できる。

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パンフレットにもキャラクターがたくさん。

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入り口には009が立っている。
写真は「あ!」と言って009を指差すテリーP。

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自販機や看板など、キャラクターがところどころに散りばめられている。

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そのときやっていた企画展は「ガンダム」。
ふむふむ。って作者が違うのでは……?

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おみやげには最高最適! なダジャレ商品、「仮面ライター」。

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近くにある生家に向かえば、中の様子を見られる。
使っていた机などもそのまま置いてある。

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両方行けばコンプリート。行ったら集めておきたい記念スタンプ。

・下関市立近代先人顕彰館(田中絹代ぶんか館)

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前半最後は津村さんが仕事で手がけた下関市立近代先人顕彰館。
1階は下関にゆかりのある文学者と下関を舞台にした作品が展示された「ふるさと文学館」、
2階には往年の女優、田中絹代さんに関する資料が見られる「田中絹代記念館」が入っている。

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下関市指定文化財に指定されているという建物は、大正の終りに電話交換局として造られたもの。
その後市役所としても使用されたが、この度改修を施して、記念館としては2010年2月にオープンした。

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戦火もくぐり抜けた。

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すっかり綺麗になった内部にも、扉や装飾などに以前の名残が見られる。、

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3階にある休憩室は電話交換局という当時の最先端の職業だった象徴でもある。

というわけで前半のまとめ。

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「人物はその地方の代名詞」。
それを目的に行ってもいいし、知らなくてもそこで出会いがある。
なるほど、観光の目的がひとつ増えたような気がします!

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こちらは
「富永一朗だけで福島、群馬、山梨、静岡、長野、富山、三重と顕彰されてますよ!」
「それだけ女の数がいたってことですか?」
「それはイメージだけですよ!」
と手元の資料を見ながらやり取りをする登壇者の図。

■後半はまるで未来への応援歌! 地方ミュージアムの特徴と魅力が炸裂!

休憩を挟んだ後、今度は盛田さんのターン。

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「地方ミュージアム ~その魅力をさぐる~」と題されたプレゼンがスタート。
まずは盛田さんが最近行って面白かったという博物館を紹介。

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それは山口県萩市にある萩博物館。
高杉晋作資料室など、普段は歴史資料館なのだが、年に1度だけ自然史系の企画展が開催されるという。

その今年の展示は、

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「2010年UMAとの遭遇」
……UMA(未確認生物)?! 急なオカルト色に戸惑う会場!

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入り口には「途中で引き返すことはできません」の注意書きが。
恐怖を煽ります……。

出てきたUMAは

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ヒバゴン

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ツチノコに……

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江戸川のエディー! などなど。
これが自然史系の展示? いえいえ、これからが本番。

展示は萩で発見された驚異の生物という触れ込みのコーナーへ。

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ここで展示されているのは、クマムシという生物。
焼いても凍らしても放射能に当てても生き続けるという驚異の能力は確かにUMAクラス。

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この後、展示はサソリ、クラモトホラワラジムシ、セミタケ、ハリガネムシと続いていく。
最初はUMAでイロモノかなと見せておいて、最後は身の回りの自然に話題を持ってくる。
盛田さんも、「見事な展示構成です。萩の自然を知ると同時に、身近な生物にも関心を寄せるようになっています」と話した。

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企画展の案内をしてくれたのはハギーシュタイン博士。
「よく見るとサングラスにカンペを持つ人が写っている」博士は熱弁を振るっていたそう。

■どうなる? 未来のミュージアム!

そして話題は今後のミュージアムの未来へと移行。

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今年まとまった調査によれば、戦後増え続けた博物館が初めて減少したとのこと。
これは確かにいままでの博物館を取り巻く状況とは違うのかも知れない。

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現状を踏まえるため、地方ミュージアムの発展史を振り返る。
建物を使用するので、その発展には行政と密接な関係がある博物館。
盛田さんはそこに3つの大きな波があると分析した。
それは

・1968年「明治百年」
・1970~80年代「地方の時代」
・1989~90年代前半「ふるさと創世」

の3つ。

・1968年「明治百年」

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当時の首相、佐藤栄作による「明治百年」記念事業で歴史を見直そうとする機運が高まる。
それによって、県立の博物館が多く作られ、博物館の県レベルで充実した。

・1970~80年代「地方の時代」

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町おこしや村おこしが盛んになるのと同時に、歴史資料館や博物館に補助金がつくようになる。
ゆるキャラの源流とも言える市レベルでの発展はここにあった。

・1989~90年代前半「ふるさと創世」

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1989年に竹下登内閣が行なった「ふるさと創世」。
各市町村に1億円(!)が配られたこの事業により町村レベルでミュージアムは充実した。

県→市→町村と発展してきた博物館。
この発展に見られるミュージアムの特徴は、2つの傾向があると紹介。

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「一点豪華主義」は当時の山梨県立美術館の有名絵画や、ラッコなどの目玉になるものの購入の例などを筆頭に、インパクトのある話題で客足を向かわせようとしていた。
「ハコモノ行政」は、文字通り建物ありきの行政方針の傾向のこと。

どちらも資金を多く出費することに間違いがないわけで、不景気だと言われる昨今には確かにあっていない。ミュージアムは淘汰される時代になったのかも知れないが、しかし、盛田さんは今こそ「発想の転換」が必要なのだと話した。

そのキーワードは3つ。盛田さんはそれぞれに例を挙げて説明した。

・姫路市立水族館

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施設老朽化に伴って長期休館にあるという姫路市立水族館。
予算の関係で立ち消えた一度取り壊して建設しなおすという案に代わり、廃止になったモノレールの駅舎を第一水族館として再利用することを決定した。
工事費も半分に抑えられる上、モノレールの展示も行なうとすることで水族館以外の客にも訴求している。
姫路市立水族館は、2011年7月に再オープンの予定。
ここで浮かび上がったキーワードは、「リサイクル」。

・境港(水木しげるロード)

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2つ目は水木しげるロード。2010年は流行語にも選ばれ、すっかりブームになったゲゲゲ。
境港駅から水木しげる記念館へと続く水木しげるロードには、街灯に目玉のおやじがあしらわれていたり、それぞれのお店が独自のやり方で妖怪をウリにしているのが特徴的。

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床屋さんの写真。なぜかハサミとクシを持つ一反木綿(と思われるモノ)と鬼太郎。
筆者個人的にはこの一反木綿は妖怪レストランに見えるのだが……。鼻があるし。

この水木しげるロードは、実は観光客用に造られたものではなかった。
どちらかというと、漁港の施設移転ですっかり寂れてしまった商店街を活性化させるために行なった施策。

本来の目的である地元の活性化を飛び越えて、こんなにも有名になった転機は、何度も起きた妖怪のブロンズ像窃盗事件がきっかけにある。
窃盗それ自体は非難されるべきだが、幸か不幸かこの事件がその都度全国区のニュースに流れると、周辺の県ナンバーの車が見物しに大挙として押し寄せたのだ。
その後の集客数の増加は上の写真を見ての通り。

「主導は行政だが、それぞれの企業、店舗ができる範囲で町おこしに協力しているのが特徴的。地元の人が自分で造っているのがいい。地元の活性化が目的なので、言葉は悪いが期待もスケールも小さかった。だらこそ、身の丈に合ったレベルで無理なくやれたのです」と盛田さん。

ここのキーワードは、「つましく、堅実に」だ。

鶴岡市立加茂水族館

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世界一のクラゲ展示種類数が有名な鶴岡市立加茂水族館。
場所がへんぴなので、リピーターも少ないはずだが……。
盛田さんはクラゲの展示にいたるまでの流れを紹介。

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変遷の前半。毎年20万人の来客が9万人まで落ち込んだ部分、一発逆転を狙って上にあったような一点豪華主義的なラッコ(1頭1500万円!)を2頭投入したにも関わらずすぐに客足が減ってしまう部分は寂れ行くミュージアムを象徴してるかのよう。
クラゲの展示は97年から開始されるが、その理由は「近くで採れるし補充も簡単だから」ということだったそう。
翌年にはレストランでイベントとして行われた「クラゲを食べる会」も開始される。
「ここまでだけを見ると完全にこれヤケクソですよね」と津村さん。私もそう思いました。

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クラゲ展示の躍進。デリケートなクラゲは、寿命が短く幼生の飼育が欠かせない上、水質が悪いとすぐに死んで溶けてしまうそう。
難しい管理のなか、展示種類は10種類を超え、2005年についに世界一を達成。
その時は20種類を超える水槽「クラゲタリウム」なるものを造ったそう!スゴイ!

こうなると加茂水族館は止まらない!

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「クラゲレストラン」オープン!
「クラゲを食べる会」の研究成果がここに結実!

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そして今年、なんと過去最高来場者数を達成!

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苦節40年以上、奇跡のV字回復とはまさにこのこと!
このスライドで会場からは拍手が巻き起こった。

加茂水族館は、築40年以上、暗くて狭い、場所もなかなか行きにくいという三重苦。
それを乗り越え、オンリーワンを達成したこの成果は、感動的なまでに勇気をくれるものだ。

3つ目のキーワードは「得意分野をつくる、活かす」。

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3つのキーワードとまとめのスライド。
「イベントのプロデューサーとしても、とても参考になります」とテリーP。
お台場も交通の便はすこぶるいいとは言えませんからね!

そして最後に、ポスト境港として広島県三次市を紹介。

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郷土料理は「ワニ」。ここで言うワニは、方言で鮫のこと。
新鮮な魚が少ないなか、アンモニアを含んでいて腐りにくい鮫が食されるようになったそう。
古い町並み、川という自然、さらには妖怪伝説もあるのが三次市だ。

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古い銀行を利用したという民俗資料館に行けば、妖怪伝説が手作り感あふれるセットで再現されている。
写真左に写っているのが妖怪で、右側にいる人物が主人公の稲生平太郎。
ちなみに、妖怪の名前は「山本太郎左衛門(さんもとたろうざえもん)」。思い切り日本人名。
なおこの街では、この伝説で町おこしをしようとする「もののけプロジェクト」なるものが進行中。

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こうして見ると確かに条件は揃っている。
「今後注目される場所になるのではないかと期待しています」と盛田さん。

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「経済状況は悪化していますが、限られた予算だとか、自分の本当に誇れるものは何であるかを探していく動きは活発になってきている。そういうところから面白いミュージアムが誕生してくるのではないかと思います」と盛田さんが締めくくった。

お上主導で町おこしをするのではなく、地元の人が積極的に協力して、しかもできる範囲で町を作っていくという新しい傾向、それが今後のミュージアムなのだろう。
圧倒的に不利な条件からクラゲによって奇跡のV字回復を果たした加茂水族館を見れば、どんな困難も跳ね返せることがよくわかる。
それはきっとミュージアムだけの話ではなくて、私たちが人生で出会うことすべてに当てはまるのではないか。

どうかしてても真面目でも、突っ走って振り切るのが人生!

地方のミュージアムをこうして振り返ってみれば、そんな言葉がふと頭に浮かんでいたのだった。

<ライター・安田俊亮>