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知るほど奥深い!あなたも知らずにARGの世界に足を踏み入れている!?2010年大ブレイクした “参加型謎解きゲーム” 総括!『ARG、謎解きゲームな忘年会』ライブレポート(10.12/28開催)

2011年01月13日

「ARG」。
それ自体がまるで暗号のようなこの3文字に、すっかり魅了された人々が集ったイベントが行なわれた。

そもそも「ARGってなに?」という方も多いと思うので、今回は、まずその説明から始めたい。

ARGとは、代替現実ゲーム(alternative reality game)の略称で、最近流行りの拡張現実(augmented reality)とは全くの別物だ。

端的に言えば、現実の風景に様々なギミックを施して、あるストーリーを読ませるというもの。
そのギミックというのも様々な形で断片に分かれていて、時にはメディアを横断し、時には現実世界の場所さえも移動してそれらを集めなくてはならない。

集めていくうちにストーリーが浮かび上がってくるので、自分が映画や物語の主人公のような気分になるのが特徴だ。

例をあげれば、過去にドワンゴが仕掛けた「黄色い箱の謎」や、最近で言えば渋谷のモヤイ像が「ルパン三世」に盗まれたキャンペーン、話題の「リアル脱出ゲーム」などがそう。
説明としてイベント中に話題に上ったのは、「映画『着信アリ』を見た後、自分の携帯電話に着信があると怖い」という例。

物語世界が、現実に入り込んでリンクしてしまう瞬間こそが、「代替現実感」と言われるものだそうだ。

この日登壇した3人は、そんなARGにすっかり魅了された人々の代表だ。
普段眺めている何気ない風景ががそのままエンターテイメントに染まっていくという蜜の味。
この人たちの手にかかれば、日常も物語を語る上での舞台に過ぎない。

忘年会という名目ではあったが、ARG素人だった私にも、この3文字が忘れられないほど深く脳裏に刻まれたイベントだった。

■イベント前半はARGな登壇者の自己紹介から

この一年、日本では謎解きゲームやARGイベントが120件以上開催されたそう。
東京カルチャーカルチャー(カルカル)でも、 「暗号解読ゲーム」というものを2度開催した経緯がある。

今回登壇したのは、その主催者でもあった体感型謎解きゲーム製作チーム主宰の天河磨月さん、ARGニュース配信サイト「ARG情報局」管理人の八重尾昌輝さん、日本初のARGを専門制作する企業『LLP日本代替現実クラブ』の代表組合員本木卓磨さんの3人。

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「複数メディアを渡り歩くストーリーテリングの手法」とARGを定義した天河磨月さん。「名探偵コナン・カード探偵団」にも問題を提供している。

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「ストーリー、効率的なコミュニケーションの醸成、現実を舞台にしたもの、の3点があればARGになる」と話した八重尾昌輝さん。

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「日常使っているツールに物語の断片が紛れ込んで、それを能動的に集めることで本当に起きていることではないかと錯覚するのがARGの醍醐味」と話した本木卓磨さん。

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忘年会、というわけでみんなで乾杯!

そして、まずは八重尾さんの最近の活動から。

・式根島を舞台にした「plesureisland.jp」で観光支援

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「pleasureisland.jp」というサイトで問題を出題し、正解者のなかから抽選で式根島での謎解きゲームに招待したというこのイベント。
式根島は、伊豆は新島のとなりにある、全周が歩いて2時間ほどの小さな島。
温泉など、この式根島の観光名所に謎を設置し、島を巡りながらそれを解いていくと、終わる頃には、島の見どころをすっかり把握してしまっているという仕掛けだ。
当日は船で式根島へ移動したそうだが、実はこの船にゆられている間が、「異世界へ移動するんだという感覚を高めるためには大事な時間だった」と本木さんは話した。

このイベントには天河さんも問題提供し、本木さんもサイト制作や式根島への引率として手伝ったそう。

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問題の解説をする八重尾さん。

この「plesureisland.jp」は、一回きりの企画。
しかし、今は役場の方に問題を提供して、島に行けば常に宝探しゲームができるように計画中だそう。
八重尾さんが「ゲームのプレイを目的としたお客さんを集められれば、それが観光支援になる」と話すように、もしこれが実現すれば、新たな観光スポットとして注目を集めそうだ。

・地元の人を巻き込んだ「高円寺捜査ゲーム」

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本木さんが代表組合員を務める「LLP 日本代替現実クラブ」のロゴ。

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本木さんが比較的中心になって行なったという「高円寺捜査ゲーム」。
年2回行なわれる「高円寺フェス」のイベントのひとつとして行なったこのARGは、高円寺の街を巻き込んでしまったもの。
実際に営業しているお店の人にも協力をしてもらって、高円寺を巡るゲームになった。

プレイヤーは刑事となるので、警察手帳を持ってお店の人に聞き込みができる。
警察手帳を見せながら、「こういったものですが……」などとキメれば、まるで刑事ドラマの主人公になれるわけだ。

もちろん、聞き込みをされるお店の人もグル。
地元の人に話を聞けば捜査情報が手に入る、店先の不動産情報に重要なメッセージが隠されているなど、話を聞くだけでその楽しさが伝わってくる。

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なお、こちらピース姿の八重尾さんも、「情報屋」に扮して「高円寺捜査ゲーム」で活躍。

アンケートでも
「高円寺っていい街ですね」などの意見が多くあったり、
また親子連れにも楽しんでもらえたイベントになり、大成功だったようだ。

・最初の問題数は座席と同じ118個! カルカルで開催された「暗号解読ゲーム」

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過去2回、天河さんがカルカルで行なった「暗号解読ゲーム」。
まずはその反省から。

この「暗号解読ゲーム」は、最初はカルカルの壁中に118個の問題が貼りついた状態でスタートするもの。
この118個並んだ暗号は、解いて合わせると、次の暗号につながる仕組みになっている。
さらに解き進めるうちに、最終的には6個の問題になり、それをすべて解くと最後の大きな金庫が開けられるというものだ。

1回目では、残念ながら時間切れになってしまって最後の金庫が開けられなかった。
「出題者としてもすっきり終わって欲しいんですよ」と天河さんが話したように、見守る側もドキドキだったようだ。
解決まで至らなかった1回目の反省点を活かしつつ、無駄な部分を省いたという2回目では、見事最後の金庫がオープン。
「とりあえずは楽しんでもらえたと思います」と天河さん。

お客様のなかにもこの「暗号解読ゲーム」に参加していた方が多数いたようで、
「暗号解読の部分は楽しめましたが、演出がもう少しあれば良かったと思いました」との意見が出ると、
天河さんは「演出は足りなかったと本当に感じています」と釈明。
「ただ、ver1.0のままでは終わらせたくないので、演出の部分ではより考えていこうと思っています」と次回に向けて意欲を示していた。

と、ここで一旦休憩。
休憩時間にはボツ供養、ということで謎解きの出題!

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こちらがその問題。
早く解いた最初の4名には登壇者からドリンク一杯のプレゼント付き。

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さすが本日のお客様。すぐにスマートフォンやメモを駆使して真剣に取り組む。

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手元のメモにはさっそくその答えの一部が。

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はしゃぐ登壇者の方。

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こちらは正解者第一号の方! おめでとうございます!

■後半は2010年のARGを振り返る! 2011年の未来予想も。

みんなで問題を解きながら、続いては雑談形式で振り返る2010年のARGについて。

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こちらは2010年に行なわれたARGの一部。
この量を見れば、ARGの人気ぶりがわかる。

「今年一年で一番面白かったARGはなんですか?」と会場へ質問すると、
即座に「リアル脱出ゲーム」との返事。
そして話題は「リアル脱出ゲーム」へ。

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「今年はリアル脱出ゲームの一年でしたよね」とは本木さん。
本木さんのお気に入りは、「修学旅行からの脱出」。
「この年で修学旅行の気分が味わえたのが良かったんですよ!」というのがその理由。
……謎解き関係ないじゃないですか!

SCRAP(リアル脱出ゲームの主催)とカルカルと言えば、
つい先日行なわれた“出会えるリアル脱出ゲーム”がある。
話題はそれと、「出会い系」という言葉について。

本木さん「『出会える』というのは、下手をすればバッシングを受けかねないパンドラの匣。このイベントを聞いたときは驚きました」

テリーP「『出会い系』はネガティブな言葉ですが、これまでカルカルでいくつも行なってきたイベントも、総じて言えば『出会い系』。問題はそれをどう演出するかということですよね」

天河さん「結局、人と人とをどう繋げるかということなんですよ」

なるほど。イベントの全ては確かに「出会い系」。
でも、人が集まる場所というのは、他にはない面白さがあるから成立するはず。
結局、それは演出家の腕次第と言っていい。
これはイベントの本質にせまったいい話ではないだろうか!

他に登場した話題は以下の通り。

・今までコストが高すぎて使えなかった技術がゲームに安価に組み込めるようになったことによって、「街巡り型」のARGが作り易くなった。この「街巡り型ARG」は、日本人にあっているように感じられる。

・代替現実感という意味では、20年以上前からある「ミステリーナイト」もそのひとつ。いかにも事件が起きそうなペンションなどに、ワクワクしながらそこへ向かう移動の時間が大事。だから、場所もARGの設計にはとても重要。

・今後は、ストーリーの脚本だけでなく、空間もあやつれるような演出家が出てくることがARGには必須。誰かが一度登場すれば、ARGの文法が革命的に変わるかも知れない。

・山手線を舞台にした街巡り型の演劇「完全避難マニュアル東京版」や、上映館によってラストシーンが3種類ある映画「殺人ゲームへの招待」などに代表される、既存のメディアにARG的要素を組み込ませるという発想は、2011年、面白くなるのではないか。

・もっとメディアとコラボレーションして、よりポップにならないと、現状は越えられないかもしれない。コスト的な問題もあるが、日常使っているものからARGを仕掛ける必要があるのではないか。

・口コミで流行るARG的プロモーションもある。品川駅のデジタルサイネージをジャックしたMr.Childrenのアルバム「SENCE」のプロジェクト、渋谷駅のモヤイ像が「ルパン三世」に盗まれたと話題になったキャンペーン、YouTubeのURLに「vip-」を加えることで映像が女性にジャックされてしまうLUSHの広告などがその一例。本来、海外ではARGは口コミで広がっていくものだが、日本では、最初は話題になるものの、時間がたつほど尻すぼみになってしまう傾向があるのが現状。

などなど。

最後に、登壇者全員から「2011年のARG、謎解きゲームはどうなるのか?」という話題について。

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本木さん「現実とゲーム世界をリンクさせるという意味では、AR、ソーシャルゲームなども目指すところがARGと一緒なんです。来年は疑問ですが、3年後4年後にはそれらをかけ合わせて面白いものを作れるようになるはずです。今から勉強して活躍していきたいですね」

八重尾さん「制作者としては、どんなに面白いものが作れるとしても、制作者は食べていかなければいけません。ARGが上手くいくためには、このコストと報酬のバランスを考えなくてはなりません。口コミで唯一成功していると言える「リアル脱出ゲーム」のように、ユーザーからお金をちゃんと貰えることを実証出来れば、ビジネスモデルとしても成立すると思います。今はまだ言えませんが、2011年には進行中のプロジェクトがあるので、そこでいまのことを示したいですね」

天河さん「謎解きゲームのほうがARGに近づいていくように思います。よりストーリーが壮大になって、その中に入っていくようなARGが今後出てくるのではないでしょうか。まだ構想段階ですが、「クルード」(謎解きができるボードゲーム)のようなARGをやりたいなと考えています。例えば、ある事件が起きて、プレイヤー自信が目撃者の一人となってそれぞれの情報を話し合いながら謎解きをしていく、といったようなものができたらいいなと思っています」

それぞれが2011年のARG予想図と抱負を聞かせてくれたところで、時間切れ。
「色々とアイデアはあります。我々3人が『ARG3兄弟』と名乗ってみるみたいな無茶もやっていきたいと思います!」

「ARG3兄弟」は無茶すぎでは?!

ARGという言葉はあまり有名ではないかも知れないが、
「現実がエンターテイメントになる」という概念を一旦理解してしまえば、その楽しさはよくわかる。

映画「アメリ」の主人公、アメリは気になる男の子とポスターや道具を使って会えるか会えないかの駆け引きを絶妙に演出していた。
言ってしまえば、あれだって充分ARGの概念に当てはまるはずだ。

自作のARGを思いついたら、今日登壇した3名の方へぜひ相談してほしい。
新しいエンターテイメントは、そこから始まっているかも知れない。

ちなみに、ARGへの参加のきっかけになるモノ(検索ワードや、ポスター、ある場所に行くなど)のことを、
ウサギを追いかけて穴に落ちてしまう「不思議の国のアリス」に引っ掛けて、「ラビットホール」と言うそうだ。
何気なくウサギを追いかけたアリスがとんでもない冒険を体験したように、
ふとしたきっかけが物語世界への入口となっている。
日常風景に息を潜める「ラビットホール」は、すでにあなたの目の前にあるのかも知れない。

(ライター・安田俊亮)