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『究極の利きオリーブオイルの会 ~こんなに新鮮なオリーブオイルを味わったことありますか?~』ライブレポート:味わえば発見ばかり!知ってるようで意外と知らない新鮮オリーブオイルにすっかり心酔!(11.2/19開催)

2011年03月10日

出来立てのラザニアを食べる直前に、オリーブオイルを上からたっぷりかけるイタリア人の姿を、私は鮮明に憶えている。フォークを使い、大きい口にパクリパクリとラザニアを運ぶ姿が実においしそうで、思わず目が釘付けになっていた。

この日のイベントテーマは、日本人の舌にもいまではすっかり浸透しているオリーブオイル。かのイタリア人のように、オイルとしてだけでなく調味料として使ってもいいはずのこの優れ者も、なんとなく買ってきて、なんとなく使っている方が多いはず。

オリーブオイルの基礎知識から、国産、外国産のテイスティングまで。「本当はこんな味なんだ!」と、意外と知らないオリーブオイルのおいしさに、ひたひたと漬かった2時間になった。

■ そもそもオリーブオイルってどんなもの? 最初はお勉強の時間から

登壇したのは、オリーブオイルソムリエの黒島慶子さん。

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黒島さんは、オリーブオイルソムリエのほか、醤油ソムリエールという肩書きも持つ。東京カルチャーカルチャーでは、「利き醤油の会」でも出演。小豆島在住。

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おみやげの「オリーブそうめん」を持つ司会のテリーP。この他も小豆島産のおみやげがたくさんあった。画像右下に見えるのは「オリーブ茶」。

イベントは、オリーブオイルの基礎知識から。

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まずはその生産量から。オリーブオイルといえば、やはり地中海のイメージ。その98%を占めるという地中海諸国は、スペインが第1位。その後イタリア、ギリシャと続いていく。イタリアではなく、スペインが1位というのは日本人にとっては意外かも。ちなみに、使用量の第一位はギリシャとのこと。

さらに、オリーブオイルは数万年~数十万年前から種が存在したのではないかと言われている。地中海文化とは切っても切れないオリーブは、その歴史もとんでもなく深かったのだ。

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こちらはなかなか注目する機会のない表示について。

赤いマークのDOP(原産地保護呼称)は、生産の全行程がその地域に限定されるもの。一方の青いマークIGP(地域保護表示)は、生産工程のひとつがその地域で行われ、最終商品がその地域原産であるものだそう。

つまり、DOP表示以外では、イタリア産と記載されていても最終工程だけがイタリアで行なわれている、ということも多々あるそう!
これは知らなかった。みなさん、ご家庭のオリーブオイルを早速チェック!

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こちらはオリーブオイルの製造過程。他のオイルは種子から搾ることが多いため、硬い殻を砕くために化学薬品を使用したり、その工程で栄養素が取り除かれてしまう。
しかし、バージン・オリーブオイルは、果実を絞っただけのいわゆる「ジュース」。栄養もそのままな上、オリーブオイルオイルの種類によって味に個性があるのが特徴だ。

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栄養素もそのまま保っているオリーブオイルは、健康食品としても優秀。脂肪酸はオレイン酸が8割を占め、若返り効果、血をサラサラにする効果もあるそう。

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こちらは意外と知らないオリーブオイルの区別。

大きく区別すると、「オリーブ油」と「オリーブ・ポマース油」にわけられる。簡単にいえば、「オリーブ油」は、オリーブオイルの果実から絞ったもの。「オリーブ・ポマース油」はバージン・オリーブオイルの絞りカスや種子から抽出したもの。ポマースに分類されるものは、主に化粧品などに使用されるという。

さらに、「オリーブ油」に分類されるものでも酸化が進むとどんどん価値が下がってしまう。よく見かける「エクストラ・バージン・オリーブオイル」は、そのなかでも最も酸化が進んでいないもの。つまり、最高級品というわけだ。
ちなみに、「ピュアオイル」と呼ばれているものは、「バージン・オリーブ油」から精製した「精製オリーブ油」と「バージン・オリーブ油」を混合させたものとのこと。

■ いよいよテイスティング! その味は?

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オリーブオイルのお勉強が終わりに近づくと、おもむろにスタッフからカップ入りのオリーブオイルが配られ始めた。ここからは、みなさんお待ちかねの実践。「冬は新鮮なオリーブオイルが出るんです」と言う黒島さんに、期待は高まるばかり。

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配られたオリーブオイル。……この時点では全く区別がつかない。

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そして、黒島さんによるテイスティング紹介。

黒島さんによれば、オリーブオイルの香りが一番立つのは28度くらい。というわけで、手でオリーブオイルの入ったカップに蓋をして、手で容器をキュッ、キュッと回すようにして温めていく。

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「もういいかな?」と思ったら、鼻のそばで蓋役の手を開けて、その匂いをかぐ。

というわけで実践してみる。……すると、野菜や草原を連想させるような青っぽい匂い。どうやらこれこそが、本当に新鮮なオリーブオイルの匂いらしい。勉強になります!

「それでは味わってみましょう。匂いと味ではまた違ってきますから」
と黒島さん。いよいよ味わいます。

やり方は以下のとおり。

1.オリーブオイルを口先に少しだけ含む。
2.口を「イ」の形にして、「ヒッヒッ!」と息を吸い込んでオイルを口全体に拡散させる。
3.舌全体で味わう。
4.味わったら、ゆっくりと喉におろす。
5.その後、鼻に抜かせる。
6.味わったら、その感想をテイスティングシートにメモしていく。

「ヒッヒッ!」とやるのは、空気を含ませ香りを立たせるため。舌全体を使って味覚を捉えていく。また、急に飲み込むと喉がピリピリしてまうので、ゆっくり喉におろすのがいいとのこと。これは、オリーブオイルにポリフェノールが多く含まれているからだそうだ。

感想は、その味、香りを違うもので例えて表現していく。このとき会場全体で味わっていたのは、「なかよし屋」のオリーブオイル。味わってみると、確かにオリーブオイルなのだが、新鮮な野菜を生で食べているような印象もある。

 「若草のような青い香りを感じた方!」と黒島さんが問いかけると、お客さんも頷く人が多数。そうそう、一番に感じるのは、鼻に抜けていくフレッシュな青い香りだ。なかには「トマトっぽい」と表現するお客さんも。「ソムリエの世界に正解はありませんので、自由に感想を表現してください」というわけで、テイスティングシートに思ったままを書きこんでいく。

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オリーブオイルを……

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少しだけ口先にに含んで……

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「ヒッヒッ!」。ふざけているわけではありません。そして、舌全体でオリーブオイルを捉える。

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お客さんも続々とテイスティング。もらったテイスティングシートに、それぞれの感想をメモしていく。

 テイスティングは、最初は国産オリーブオイル限定ではじめた。それだけでも、確かにちょっとずつ違う。

 例えば、「ヤマサン」のものはりんごの蜜を味わっているような甘みがあって、とても軽やか。フルーツという表現がとても似合う。かと思えば、「オリーブ園」は苦味や味がしっかりとあって、ドレッシングなどに使うとサラダの味を引き立てそう。こうして並べると、それぞれの特徴もなんとなくわかるのが面白い。

 ちなみに、会場で人気があったのは「なかよし屋」と、次いで「ヤマヒサ」のオリーブオイル。個人的な意見では、オリーブの香りの甘みと苦味のバランスが整っていて、サラサラと舌に馴染みやすい印象だ。特に「ヤマヒサ」は、2010年と2011年の香川県知事賞を2年連続で受賞しているお墨付き。

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オリーブオイルはおかわりも自由。いい香りが漂います。

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黒島さんに直接テイスティングを教えてもらうお客さん。

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続いて海外産をテイスティング。

上にあるカップの写真で言えば、海外産は8、9、10、11番のもの。国産とは色も変わっているのがわかる。

味わってみれば、なんとこれが不思議なほど違う。「早摘みオリーブオイル」はフレッシュさも感じるが、他は全体的にスパイシーな味。国産の青い感じというよりは、暖かみや穀物っぽさ、もっと言えば、ベーコンのような香ばしさすら感じる。

 この日は、カップに「×」と書かれた開封後数ヶ月の劣化した(酸化の進んだ)オリーブオイルも登場。「いままでこれがオリーブオイルだと思っていた」と驚きの声を上げるお客さんが言うとおり、オリーブオイル素人の筆者にも問題なさそうに思えた。が、他の新鮮なオリーブオイルを味わえば味わうほど、「あ、これが劣化か」ということがわかってくるから面白い。毎日テイスティングしていれば、今日わからなかった微妙な違いも理解できるに違いない。

■ 生産者「なかよし屋」の堤さんが登壇

ここで、小豆島のオリーブオイル製造者、「なかよし屋」の堤さんが登場。生産者の目線から、小豆島産のオリーブオイルへのこだわりを語ってもらった。

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オリーブオイル製造のきっかけは、「サラリーマンが嫌になって」と冗談交じりに話す堤さん。

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こちらは東京(左)とマドリード(右)の気候。一年の温度はほぼ一緒ながら、降雨量が全く違うのがわかる。

この降雨量によって、オリーブオイルの出来上がりに違いが出るのだという。夏に湿気の多い小豆島産はマイルドな傾向があり、夏に乾燥している地中海産はスパイシーなものになりがちだそう。成長過程で変わるポリフェノールの量がその味に関わってくるので、全く同じ種で作ったとしても、やはりその傾向の味に仕上がるそうだ。

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「オリーブは乾燥に強そうと思われていますが、そうではないんです」と話す堤さん。特に夏場は、毎日水やりで大変だそう。

最も難しいのは、オリーブの天敵、オリーブアナアキゾウムシの対策として行なう根元の草抜きだそう。オリーブアナアキゾウムシは、オリーブの根本から幹に侵入して食い荒らし、実どころか最終的には木全体を枯らしてしまうという恐ろしい虫。薬剤の使用を避けることを信条としているので、唯一の対抗策は、オリーブアナアキゾウムシに休む場所を与えないこと。つまり、草抜きというわけだ。夏の暑い日も毎日草を抜いて回るという堤さん。本当にお疲れ様です。

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無農薬にこだわりがあるなら、収穫も手摘みにこだわっている。手摘みにすることで、収穫のその瞬間に実の状態を逐一チェックできるのだ。

なお、オリーブの実は熟成具合で色が変わる。緑色は若い実で、紫色は熟成が進んだもの。熟成が進むほど、オイルの含有率も増えるそうだ。

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ここで客席に配られたのは、マッシュポテト、モッツァレラチーズ、バケット、そして小豆島産の釜揚げそうめん。オリーブオイルは実際どの食品と合うか試してみようというわけだ。テイスティングだけではわからない味わいに、また発見の連続だった。

オリーブオイルを少しだけ垂らしてから口に入れる。もちろんどれでも合うのだけど、なんども試しているうちに、やはり傾向が見えてくる。

バケットは、どのオリーブオイルを選んでもパン生地がうまく対応してくれて、とてもウマい。モッツァレラチーズは、香りのマイルドなオイルのほうが、モッツァレラの柔和な味をより引き立ててくれる印象。マッシュポテトはもとがスパイシーな味だったので、海外産のオリーブオイルをかけると味が負けない、といった感想を持った。

それにしても、そうめんにオリーブオイルを合わせる、というのは意外だった。和食にオリーブオイルという発想がまずなかったが、かけてみるとこれがまたよく馴染む。小豆島産のそうめんは、やはり小豆島産のオリーブオイルとの相性がいいようだ。

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壇上ではオリーブオイルのオススメな使い方を紹介。

堤さんによれば、マイルドなオリーブオイルは、和食によく合うのだという。写真左に見える酢の物や、しじみのお味噌汁に小さじ一杯くらい入れて、風味として使うとおいしいとのこと。「野菜ジュースに入れたり、牛乳に入れたり。整腸作用があるので、女性にもオススメ。ただし、油なので摂り過ぎには注意です(笑)」。

黒島さんは、「薄口醤油とレモンとオリーブオイルを合わせるのがオススメ。意外なところでは、もろみとオリーブオイルがいい。お刺身がおいしくなります」とアドバイス。

いやはや、すっかり満腹です!
といったところで、お時間。みなさんお疲れさまでした。

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お客さんと記念写真を撮る黒島さん。

「好きになったオイルがその人にとっての一番。だから、気になったオイルを買ってみて、いろいろ試して欲しい。そして、自分がコレだと思えるものに出会ってもらえれば」と堤さん。

「普段のオイルをオリーブオイルに変えてみても、全然違った味わいになって面白いです。ぜひ試してください」と黒島さん。わかりました。試しましょう。

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まさにオリーブオイル漬けのイベントは、知識からテイスティングまで充実したものだった。イベント前は、オリーブオイルの印象は漠然としたものだったが、今ではオリーブオイルの味と違いがなんとなくだが掴めるようになっている。新鮮なオリーブオイルはとてもおいしいし、勉強としても、体験としても、とても楽しいイベントだった。

最初に紹介したとおり、黒島さんはオリーブオイルソムリエであるほか、醤油ソムリエールでもある。オリーブオイルも醤油もおいしい小豆島は、今後カルカルの名物になるかも。私のお気に入りです。

テリーP、まるごと小豆島なんてイベント、どうですか?

(ライター・安田俊亮)