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『大山顕・石川初・渡邉英徳 マッピングナイト2』ライブレポート:いつも心にナブスターを!今回もコアな地図好きが集まり超満員!延長!4時間半!!!!(11.4/23開催)

2011年05月25日

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昨夏開催された第一回がたいへんに盛況だったマッピングナイト、第二回開演前の会場には少しだけ緊張感が漂っていたようにも思えます。3月11日からの1ヶ月、登壇者がどんな活動をしてきたのか、そしてなにを語ろうとしているのかを知っているひとも多かったでしょうから。

そう、どうしても東日本大震災のことを語らずにはいられない夜でした。あの夜、みんなが不安を抱えて帰宅する時に見つめていたもの。ニュース画像の右下に常に表示されていたもの。東側の沿岸がすべて黄色か赤に縁取られた地図、福島第一原発から同心円を描く地図…。これまでになく各地の位置関係や地形、地図の存在について敏感になった1ヶ月だったように思えます。そしておよそこれまで体験したことのない事態に対して、「マッピング」という手法は何を描き出せるのか。あらためて考えさせられる一夜でした。(なーんて、シリアスな前フリもありつつ、お三方の視点の巧みさに腹がよじれるくらい笑い転げてもいたんですけど!)

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前回、お三方の自己紹介予定時間のほとんどを使い果たしたという反省に基づき、軽めの自己紹介からすぐさま本題へ。大山さんが持ってきたのは彼の地元でもある船橋の空撮写真。聞けば現IKEAの駐車場は、ゆるくカーブを描いた敷地になっているとのこと。そもそも埋め立て地なので、地形に左右されることはないはずなのだけど…。なんで?

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古い地図を初めとする過去の土地利用アーカイヴをたどってみると、なんと「船橋ヘルスセンター」という人工浜辺の海岸線に沿ったものだとか。これまた凄まじい施設で「入浴場のみならず大プールや遊戯施設、レーシング場などを持つ大規模な総合レジャー施設」という一大アミューズメントパーク。芝生のスキー場って。そしてご存知のむきも多いでしょうけれど、ここは船橋ヘルスセンター閉鎖後、屋内スキー場「ザウス」となっていたのでした。(この手の「過去の土地利用が現在にも影響を与える」話については「宮本佳明/環境ノイズを読み、風景をつくる」という書籍がおすすめです。大変興味ぶかく、おもしろい)

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石川さんの自己紹介も軽めに。GPS地上絵についてのご紹介と(前回ライヴレポート参照)、「わたしと地図」の関連性について。GPSのログを介して、自らの身体と空間が関連付けられる。その感覚がここまでGPSの軌跡を取ることに熱中させることなのだと。

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「GPSロガー、買った方がいいですか?」と問われると「今日のログは生涯で今日にしか取れないのだ。ほら、君がいますすんだその三歩分はもう記録されない!」と答えるのだそう。会場は深くうなずく方と、すぐにでも買いに行かねばと心騒ぐ人に二分されました。(そろそろロガーの即売を始めた方がいいと思います、このイベント)

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渡邊さんからは、前回マッピングナイトの時に始まったばかりの「Nagasaki Archive」、実際に運用をして得られた感想や意見などのご紹介。Google Earth上に原爆投下時の証言や当時の写真を展開することによって、当時の体験を立体的に表現する試み。現在の地図と重ね合わせることで、歴史の中の話ではなくて現在と地続きである実感が持てるのではないか、ということでした。現在、広島での展開も準備中だとか。

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東日本大震災に関わって、渡邊さんや彼の研究室、そして「地図ギーグ(地図情報を扱うことに長けたGeekな人々)」が制作したさまざまなWebサービスを次々と紹介。その多くが、Twitter上で見ず知らずの人々が連携してよりよくなっていったもの。誰もが一度は目にし、利用したサービスばかりで会場からは驚きの声が多数上がりました。様々なかたちで位置情報が手軽に扱えるようになってきたいま「こういった非常時に、テクノロジー側からいろいろな行動が起こせることがわかった気がする」とおっしゃっていました。

そういった連携の中で、地球の座標系が統一されていることの素晴らしさを改めて感じたのだとか(専門外の身には、地球の測り方なんてただひとつだと思ってしまうけれどあにはからんやそうでもないそう。)。各人がそれぞれに集めたデータを、並列にマッピングすることで豊かな情報を提供できるようになるとか。たとえばホンダカーナビが取得する道路状態のログ、実際の浸水エリアマップ、病院の診察情報、炊き出しの情報など、たくさんの情報を重ね合わせることで、必要とする情報を提供できることも多くあったようです。

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一方で、日々被災地の情報に触れて地図を眺めることで、精神的に参ってしまった部分もあったそう。各地から寄せられる現場の状況をマッピングしてみると、被害を受けた範囲があまりにも広いことに気がついてしまったりと。「地図を見る」というのは机上のことではありますが、手を動かしながら地図に触れることで自分の暮らす世界との接点を持つことにもなり得るのだ、と感じました。

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続いて石川さんから、2006年に会社から自宅まで徒歩で帰宅した時のお話。都市は人やモノが絶えず移動している場であり、もしその移動手段が断たれた際に、わたしたちはどのように振る舞うべきか。そして、その時に必要なスキルや装備はなにか、街そのものの機能としてどんなものが必要で、どんなものが足りていないか。たとえばホームレスを排除するために作られた横たわれないベンチや、広場を埋める謎のオブジェが「徒歩で遠くまで帰宅する」という事態において、自分に牙をむく経験をしてしまうと「その街が災害時に住民を守ってくれない」ようにしか見えなくなるとのこと。なるほど、たしかに。

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大山さんのテーマは「帰宅ログ」のまとめ。さきほどの石川さんの話を受けて、「3/11に、みんなはどうやって家に帰ったか(あるいは帰らなかったか)」という個々の事例を紹介していきました。発生時にいた場所も、帰る場所も、かかえている事情も違う人たちが、それぞれどんな風にふるまったかという大変興味深い記録。

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「遠回りなのはわかっているのに、どうしても幹線道路沿いを歩いてしまった」「電車の路線沿いに歩こうとして失敗した」「いま思えば慌てて買える必要はなかったのに、どうしても帰らなくてはいけないと思って会社を出てしまった」「バックライトが無い地図はだめ」「携帯の電池が切れることがなにより恐怖だった」「Twitterからの情報がとても支えになった」「その一方で、同じ方向に歩いている人にはなかなか話しかけることができなかった」「道路には「歩くため」の標識や情報がほとんど無い。300メートル先も、現在地も分からなかった」「自宅に帰るかどうかの判断をどうやってしたらいいかわからなかった」…移動の経路や所要時間、そして数多くのコメントはとても興味深いものでした。

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翌朝動いた電車に乗って、「うっかり寝過ごした」というなんだかほほ笑ましいエピソードも。

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前回も大好評だった客席参加マッピング、今回のお題は「どこからホーム?」。どこまで来ると「帰ってきた」気分になるかを駅名でポストしてみました。大きな川を越えたところだったり、急行→各駅に乗り換えるタイミングだったり、さまざま。人によっては「ここからは歩いて帰ったことがある」と20km近く離れたポイントを差す猛者も!相も変わらず予定時間を大幅に過ぎていたので、あまりゆっくりと見られませんでしたが、こちらも面白い傾向が見て取れそう。次回のお楽しみにしましょう。

と、いうわけで終演後「それぞれ別にイベントをやってもいいくらいのボリュームだった」との声が聞こえるほど(たしかに!)のたいへん充実した夜でした。Google Map/EarthとおてがるなGPS受信機の存在が、知らない間にわたしたちと地図の関係をずいぶんと変えてしまったように思えます。次回はどんなお話が伺えるのか、今からとても楽しみです。

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カルカルおなじみのスペシャルメニューは今日もひどかった。(ほめ言葉)ジンジャー・ポーク・ステーキ丼と、グレープフルーツ・パイナップル・ソーダ(+ウォッカ)のカクテル/ソフトドリンク。なんでも言ったモノ勝ちですよね。それでいて美味しいのがなんともズルイ。次回は何が出てくるかしら。

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(おまけ)大山さんの懺悔。

 

(ライブレポート・アオキエリ / EXHIVISION