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『ミュージアム トリップ~美術館めぐりの旅 vol.1』ライブレポート:ミュージアムめぐり大ブーム!トレンドから絵の見方まで、休日に行きたくなる美術館一挙紹介!(11.5/08開催)

2011年07月09日

カルカル名物、「大人の一夜漬け」講座シリーズが、今度は「美術館の歩き方」とテーマを冠して開催。美術館の“中の人”ことエキスパートが教える、おでかけのコツ。愛するパートナーと、気になる人と、もしくはひとりでも……これを機会に、美術館で休日を過ごしましょう!

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左から、カルカルプロデューサーのテリー植田、山村真紀さん、平井宏典さん、奥本素子さん。

■ミュージアムの歩き方~準備編~:服装や持ち物も準備していこう!

登壇したのは、ミュージアム・サービス研究所主宰の山村真紀さん、共栄大学国際経営学部専任講師の平井宏典さん。総合研究大学院大学学融合推進センター助教の奥本素子さんの3人。

前半は山村さんからスタート。ミュージアムへ行く時の持ち物や服装、その付き合い方など、美術館周辺の準備について説明。もちろん、服装や持ち物と言っても、マナーうんぬんの話ではなく、知っていたらちょっといいなというラフなお話。

例えば、服装というのは、美術館は一年中寒いから、一枚羽織るものを持って行くと安心するよ、ということ。美術館は、作品保存のため一年を通して気温にして20℃、湿度が50〜55%くらいに保たれているのだそう。つまり、「夏でも寒いし、冬でも寒い」。確かに、これは教えてもらわないと気づきにくい。

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美術館の環境は一年を通して保たれている。夏だからといって薄着で行くと、20度は寒く感じるかも。

また歩きが多くなるので、履物はハイヒールよりも運動靴など疲れにくいものがいい。「男性が事前にこういったことをアドバイスしてあげると、女性の株が上がりますよ」と山村さん。なるほど、なるほど。男性が先に服装をアドバイスしてあげることで、女性に無理をさせなくて済むのですね!はい、ばっちりメモりました!

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疲れやすいハイヒールにも、背が高くなるというメリットがある。美術展の作品によって使い分けてもいいかもしれない。

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ここで美術館の豆知識。実は、写真撮影禁止のところでも、「個人的に利用するので……」という文句でスタッフに許可を求めれば、撮影ができることもある。その場合、腕章などを貸しだして堂々と撮影できるそう。ただし、その写真の利用には充分に気をつけましょう。

ミュージアムとの付き合い方として、山村さんがオススメしたのが、その美術館への友の会などへの加入。今回例に出たのはサントリー美術館の友の会。その値段は年間なんと7万円だが、その分、目録やプログラムがタダで貰えるだけでなく、オープニングセレクションやサロンの利用などもできるようになる。そんな特別な場所に彼女を招待すれば……とムフフな妄想が膨らみます。

さらに、美術好きが集まるひとつのコミュニティとしても機能しているようで、最近ではミュージアムで婚活という動きもあるのだそう。よく通うようなお気に入りの美術館なら、これは絶対楽しいはず。
加入への値段も美術館によって違うようなので、興味があれば要チェックです!

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よく通う美術館なら、友の会に入るという付き合い方もある。友の会に入れば、割引されたり、プログラムもらえたりと、特典が沢山。


美術館へ行けばお互いの趣味の相性がわかるので、初デートにぴったりと言う山村さん。実は今の旦那さんとの初デートも美術館だったそうです。

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1人ではじっくり作品を楽しめるが、誰かと行けば意見を交換して新しい発見があるかも知れない。さらに、その人の考え方もわかって、「デートにもオススメ」という山村さんの意見にも納得。これは早速実行に移したいところ。

■「場としての美術館」。美術館へ出かける一日全体を楽しもう!

続いての登壇は美術館を経済学の観点から研究しているという平井宏典さん。どうしてもとっつきにくいというイメージが拭えない美術館に、「そんなに肩に力いれて行く場所じゃないよ」と言う平井さんが、美術館の色々な楽しみ方を紹介した。

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平井さんが今まで最も感動したというミケランジェロの「ピエタ」像。「感動には作品と、その『場』の雰囲気が大事」と話した。

「美術館」と言われて、静かな空間で額縁に収まった絵がずらっと並んでいるというイメージが浮かんできたとしたら、それは少し違う。現在のトレンドでは、作品もその周辺も多様化しているのだ。

平井さんが言及したのは、以下の3点。

1)作品の多様性
2)施設の多様性
3)立地の多様性

現代アートの作品は、巨大なオブジェだったり、インスタレーションだったりと、額縁に収まらない作品が多い。

さらに、その作品を収める施設も、金沢21世紀美術館や水力発電所を再利用した発電所美術館など、施設そのものに「一度は行ってみたい」と思わせる魅力があるものも出てきた。

そして、「美術館」という枠組みに捕らわれず、街そのものがミュージアム(作品を保存、研究調査し、展示する場所)になっている瀬戸内海の直島や、山形県の朝日町では、そのスケールを楽しめる。

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上から順に、作品、施設、立地の多様性の紹介スライド。作品だけでなく、建物の周りの雰囲気までもがひとつの枠に収まっていないことがよくわかる。

平井さんが次に話したのは、「費用対効果から美術館デートを考える」といういかにも経済学者らしいテーマ。美術館よりも気軽に誘われる傾向にある映画をライバルにその効果を考えた。

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対決は、「価格」、「時間」、「付帯サービス」、「場の雰囲気」の4つで判定。こうして見ると、コストパフォーマンスはほぼ一緒。

結果、美術館デートも映画に負けていないのでは? という結論に至る。むしろ、値段と時間の使い方の自由、さらにコミュニケーションが許されていることを考えると美術館の方が若干有利に思えてくる。

しかも、美術館には、前述したように作品以外の周辺環境も楽しめる。作品を見ることももちろん目的のひとつだが、美術館によっては、その建物や環境を楽しんでもいい。それらをすべて含めれば、美術館へお出かけするその日1日が特別な体験となるはず。

「美術館へ行くことを、その日全体の『ミュージアム経験』として、総合的に評価して考えてほしい」と平井さんは話した。

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美術館周辺も含めた「ミュージアム経験」という総合力で楽しむ。

なかでも見る作品のオススメは、現代アートだそう。「現代アートは、ライブで感じて楽しめる贅沢なアートなんです。インスターレーションなどは保存もできないので、ぜひ見てほしいですね」と平井さん。インスタレーションとは、光や映像などを使ってその空間の雰囲気を体験させる作品。ミュージアムにでかけるということは、日常では味わえない様々な体験をすることとイコールなのだ。

さらに、「その経験が美術館を楽しむことになるはずなので、展示室にこもらず、ショップや図書室といったその場所にしかないものもオススメです」と話した。

確かに、ショップや図書館は見逃しがちな盲点かも。ショップでアートに特化した買い物を楽しんでもいいし、図書館へ行って、その美術館の過去の展示会のカタログを見て思いを馳せるというのも、楽しい経験になるはず。相手と気が合うようなら、そういうデートも絶対アリ。いつかはそんな日も……と想いを馳せた。

■気軽に楽しむ絵の見方

3人目のプレゼンターは、「美術館でされているような絵の解説は、細かくて長くてわかりづらい。ちんたらちんたら言われたって疲れるだけですよ!」と中の人とは思えない発言で冒頭から飛ばした奥本さんは、「え、そんな感じでいいの?」と思ってしまうくらいにラフな、事前の知識なんか全然いらない絵の楽しみ方を解説。

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奥本さんの解説は、冒頭からパワフル。絵画という子を暖かく見守るような母の視線でわかりやすく解説していきます。

奥本さんが提唱する鑑賞スタイルは、「見てわかることを楽しめばいい」。その上で、「わからなかったら、調べればいい」。これさえ知っておけば、というコツは、以下のようなもの。

・でかいところを見よう

画家の心理として、見せたいものを大きく描くのは、考えてみれば当たり前。例えば下写真の右側の絵は「モーセの出発」というタイトルで一見宗教画のようだが、そのわりにモーセたちは小さく、木の部分が大きい。奥本さんは、「だからこの絵は、『この木、いい感じじゃん!』と見るのが正解」と解説。

当時は、宗教画でないと売れなかったり、パトロンがお金を出さなかったりしたそう。なので、宗教画を形どって描きたいものを描いている作品が多かったと考えられるわけだ。

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左側は聖母像が一番大きい。右側は、木と空が最も大きく描かれている。つまり、画家が描きたく、見せたかったのはその部分ということになる。言われてみれば、確かにそうかも知れない。

・細かいところを見よう

「肖像画って見ててもイマイチ面白くないんですよ」とこれまたぶった切る奥本さんは、「そんな時は当時の服装や、その微妙な質感を楽しむといい」と解説。下の写真も肖像画だが、腕と肩に服装の部分などは質感の違いがよくわかる。

また、「細かい部分に手を抜かない画家は上手い」。上手いと言われているダ・ヴィンチなどは、髪の毛を見ると本当に細かく描かれているそう。作品の真贋を見分ける場合も、人物の耳などを実際に見るのだそうだ。本当に細かいところまで質感を描き分けてこそ、プロの仕事と言えるのだろう。

なお、絵の中央下からニュッと飛び出すように描かれている物体は、絵画を斜め下から見るとドクロに見える、という一種のトリックアートのようなもの。だからといって特に意味はなく、「画家の技術を見せるためだけに描かれている」のだという。奥本さんは、「画家はきっと、クライアントに『俺の技術ドヤ?』と言っていたはずです」と当時の会話を想像。……なんだか急に親近感が湧いてきました!

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肖像画を見るときのコツは服装。中央下のドクロ(ある視点からの観賞が必要)は、画家が技術を見せるためにドヤ顔で入れ込んだと予想される。

この他にも、

・エロさも見どころ

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当時のグラビアの役割も果たしていたというヴィーナス像。「こういうのが趣味やったんやな」と見ればいいそう。左のグラマラスな女性はイタリア。右にスレンダーな女性は北方ルネサンス(北ヨーロッパ)と、地域によって人気の体型が違うのだと解説。ちなみに右側の帽子からは、高貴な女性を脱がしてみたかった……という趣味が考えられるそう。

・女性が持っている変な物は拷問関連

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この女性が持っているものは、見ての通りおっぱい。実は、女性が体の一部を持たされていたり、変な道具を持っていたりする場合は、拷問の場所や道具なのだそう。殉教者に「頑張ったね」という思いが込められているそう……。怖い。

・子どもが上手い画家は上手い
・それでもわからなかったら、色を見よう

などなど、次々と解説。
いずれも前知識のいらないものばかりで、次回からの絵の観賞が楽しみ。「それでもわからなかったら色を見よう」という救いがあるのがポイント。

意外に大事なのは、「第一印象を自覚すること」。

「パッと見て自分が感じることは、画家もそれが描こうとしていた場合が多い」。だから、ふくよかな女性が描かれていた場合は「ふくよかな女性が好きだったんだな」と思えばいいし、「派手だな」と思えば、「派手なものが描きたかったんだな」と思えばいい。そこから、「なぜそう感じたんだろう」というようにその感性を探っていくと、鑑賞がもっと楽しくなるはず。ふむふむ。これもデートに使えます。

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自分の第一印象は、きっと画家の意図とマッチしているはず。

奥本さんは最後に、「推しメンを見つけよう」と締めた。

「推しメン」とは、アイドルグループ・AKB48のファン用語で、「自分が推しているメンバー」のこと。世間の人気とは関係ないので、完全に個人的な趣味でいい。

その「推しメン」を作家にも当てはめて、好きな作家を見つけよう、というのがその狙い。「どのアーティストが好き?」と聞かれたとき、もしくは誰かにアーティストをオススメしたいとき、一人でも「推しメン」を自分の中に確保持っていると鑑賞が楽しくなるだろう。作品鑑賞の基準にもなるので、この方法は確かにいい。ちなみに筆者は、どこへ行っても異才を放つ現代アート集団の「Chim↑Pom」さん(最近では、岡本太郎の壁画にゲリラ的に絵を加えて話題になった)が大好きです。

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アート関係では、今回の被災によって、文化財が紛失したり、損傷しているケースが多くなっているという。それらを救うために、文化財レスキュー事業がスタートしている。盗難の可能性があるので具体的な活動場所は公開されていないが、やはり支援が必要になっているのだという。アートが好きなら、ぜひとも心に留めておきたい活動だ。

今回のイベントの狙いはもともと様々な人にもっと美術館に来てほしい、という思いから開催された。「公立美術館の運営には、税金も使われているので、行かないともったいないんですよ。行ってみれば、必ず日常生活に帰ってくるものがあるので、ぜひ美術館に足を運んでください」と平井さんが話した。

今後の企画としては、実際に美術館で作品を鑑賞した後でカルカルに来るなど、ギャラリートークツアーのようなものも考えているそう。実際に作品を見に行くトークツアー、楽しそうじゃないですか!
そのときはぜひ、連れて行ってください!

(ライター・安田俊亮)