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『地図ナイト~史上最大の地図好き大集会』ライブレポート:地図を肴に呑める店!地図好き酒好き超満員御礼大盛況!(11.7/18開催)

2011年08月03日

「今夜は、ちずを肴に一杯ひっかけようじゃない?」

チーズではなく、地図。以前から街あるきや地形、GPSを題材にしたイベントを開催してきたカルカルですが、今回は真っ向から「地図」そのものをテーマにしたもの。日頃から多くの地図と向き合っている方が大集合、それぞれの見方で地図を語りたおす夜となりました。そう、地図ってどこかに出かける時に見るだけのものではないのです。ほんのちょっと見方が変わると、地図はこんなにも饒舌でゆかいなものになるのです。

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なにしろ今夜は、入口で25000分の1の地形図が配られるのですから。(これがどこで活躍したかは、後のお楽しみ)

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開演に先立って、地理検定の問題を使った「プチ地理検定」がスタート。そして、全員が登壇しての乾杯。この日のチケット、半券には「地図を肴に呑む店」と書いてあったそうで(普通は、事務的に公演名だけが書かれているのですが、さすがカルカル)その看板通り、みなさんいい呑みっぷり!

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最初のプレゼンは気象予報士の平井さん。「地図を使って物事を考える」というご自身の生い立ちから、さまざまなかたちの地図をご紹介いただきました。統計データをもとに、日本に108ある活火山を鳥瞰図にした「煩悩活火山」など、地形図風に人口密度を地図にした「人口密度分布図」や、すでに提供されているデータをどんな風にビジュアライズして見せるかというお話を伺いました。この「カルトグラム」という手法、確かにグラフや表とはまた違う印象を受けます。面白い!

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続いては、富士見研究家の田代さん。読んで字のごとく「富士山を見るマニア」。これがなかなか奥深い趣味のようで、古くは1957年の文献が残っているそう。どれほど離れた場所から見られるか、意外なところから見られるか、また太陽ときれいに重なった「ダイヤモンド富士」、なにかをくぐって見える「のぞき富士」など、たくさんの美しい写真についため息。まさか富士山から323km離れた和歌山県で見ることが出来るとは…。驚きです。(この写真は、田代さんが開設している「山の展望と地図のフォーラム」から見ることが出来ます。うつくしい)

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ここで、入場時に配布された地形図の出番! 満員御礼の会場、すべての人が真剣に地形図を見つめる姿はなかなかのみもの。先ほど紹介された、再遠景の富士山写真はこのあたりで撮影されたものだそう。「富士塚ナイト」の時にも感じたけれど、どうして人はこんなに富士山に惹かれるのでしょうね。ふしぎ。

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最遠景の地、「色川富士見峠」はここ。そもそも、この峠に「富士見」の名前がついたのも2008年のことだそう(前述の写真が撮影されたのは2001年のこと)。ええと、道、ないよ…。

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そして、日本地図センター理事長・野々村御大登場! すでにかなりご機嫌のご様子。発表も、まったくもってご機嫌な「地図とお酒」というテーマ。地図の名前と同じ銘柄を当てたり、特徴的な地図を見てそこから連想されるお酒の銘柄を当てるクイズも。

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わたくし福島出身でありながら、白河で焼酎が造られていること知りませんでした(無論、「白河」が25000分の1地図の表題になっていることも…)。会場のお客さんにもずいぶんお酒が回って、にぎやかになってきたところで前半戦終了。

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休憩時間とて気が抜けません。プチ地理検定が出題されると、会場は一気に真剣モードに。

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日本地図センターの小林さんより、地理検定の裏話など。地理検定には「一般」と「専門」の2レベルがあるとのこと。例えば上のスライドにあるのは「一般」の問題。いわゆる空撮写真ですが、影の長さに注目することでおおまかな時間がわかるそう。(なるほど!)

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それほど難しくないだろう、と思って出したこの問題は、正解率にがっかりしたそう。確かにぱっと頭に浮かぶイメージだと、どれとも決めがたい…。

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正解はトルコなのですが、この間違いは「緯線の方向と真西・真東の向きがずれている」ことに気づかないのが原因だそう(いわゆるメルカトル図法の地図を頭に思い浮かべてしまうせい)。とは言ってもなかなかわかりづらいので、実際に緯線・経線を書いたオレンジを真西向きの直線で切る実験。おお、確かに真西と緯線はずれている。こういった実演を見ると、地図にはそれぞれ役割に応じて長所と短所があるのだ、ということが実感されます。なるほど。

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続いては東京カートグラフィックの近藤さん。さまざまな地図を作る会社にお勤めですが、彼が地図に興味を持つきっかけは遠洋漁業に出ていた親御さんの影響なのだそう。たしかに、世界を股にかけるお仕事、耳にする地名を地図で探す幼少時代だったのだとか。なんて素晴らしい!

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小林さんからは、さまざまな形の地図を紹介いただきました。地球という球体をどう切り開くかによって、まったく違う形の地図が見えてくることに驚かされるばかり。美大の学生とコラボレートしたり、新しい表現を次々に試しているそうです。(年に二回発行される「地図の学際」表紙は、毎回素敵な地図で飾られています)

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トリを飾るのは、地図・鉄道 研究家の今尾さん。「線路が曲がっている理由」という、まさに地図&鉄道マニア必見のテーマ! 「線路が曲がる」とひとことで言っても理由は様々で、「いくつかの目的地を通過する必要がある」「地形や地質的な条件がある」「輸送力や規模がどのくらい必要なのか」「ここまでの条件を満たすのにどれほどの費用がかかるのか」など。勾配やカーブの半径など様々な法的制約もあり、世間で言われるほど政治的な要因は多くないのだとか。

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通称「大八曲がり」と呼ばれる中央本線(岡谷ー辰野ー塩尻)の大きな迂回。これも技術的に開業当時は、岡谷ー塩尻間をまっすぐ繋ぐのは困難だった、という話もあるそう。

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スイス・ベルニナ鉄道のつづらおり線。すごいぐねぐね!すごい勾配!(ようやく等高線の見方になれてきました)この他にもループ線・スイッチバック線など、鉄道マニアがぐっと身を乗り出す地図がたくさん紹介されました。ある別の趣味と繋ぎあわせると、さらに違う風景が見えてるくるとは…。地図、おそるべし。

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個々人の発表はここまで。全員が登壇して「これからの地図はどうなる!?」といったトークセッションが展開されました。「地図業界には女性が少ない!地図子をもっと増やさないと!」と、ずいぶんと憂えておられましたが、この日のカルカル来場者を見回すと、男女比はそれほど偏っていなかったように思えます。この面白さ、一度気づいてしまったら男女関係ないですよ!

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最後に、プチ地理検定の答えあわせを。なんと、15問全問正解者が! 商品は釧路の炭坑跡で熟成された「海底力」というレア日本酒。

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その他にも、理事長お気に入りのお酒とかお酒とか(ワンカップ!)、てぬぐいや湯飲みといった地図センター特製グッズの数々が贈呈されました。なかにはすでに販売終了したレア物も!

意識せずとも身の回りにあふれている「地図」ですが、それぞれの視点から丹念に地図を味わうひとのお話を伺うと、まるで違う情報が浮き出てくるのがとても新鮮でした。一枚の地図から、そこにある暮らしを、風景を、歴史を、名物のお酒を(!)想像出来るなんて。面白いことや楽しいことを伝え得る手段なのだなあと実感しました。まだまだみなさん話したいことを隠し持っているようなので、次回開催を期待します!

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(おまけ)カルカル名物スペシャルメニュー、今回はMabodofu And Pork丼でした。ああ、そう…。

(ライブレポート・アオキエリ / EXHIVISION