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国立文化材機構のiPhone版「e国宝」20万DL突破記念! e国宝日和~トーハクへ行くのが先か、e国宝で観るのが先か。~ ~ライブレポート(2011.11/6開催)

2011年11月24日

リリース前から専門家や美術ファンの間で話題となっていた
iPhone版「e国宝」

今回はその開発を担当した
東京国立博物館(以下、略して「トーハク」)の職員が、
「iPhone版『e国宝』開発の舞台裏」はもちろん、
国宝・重要文化財を数多く所蔵している
「トーハクの歴史」
「トーハクに関するデータ」
「重要文化財とは?国宝とは?」
などを解説。

カルカル、初となる
美術好きには堪らない
山村さんによる
「トーハク&国宝」が満喫できる企画です。

雨にも関わらずお集まりいただいた
参加者に「トーハク」やiPhone版「e国宝」の
お話しをしてくださったのは、

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【写真左から2番目】
東京国立博物館 学芸企画部博物館情報課情報管理室長の
村田良二さん


~プロフィール~
1972年生まれ。筑波大学大学院修士課程芸術研究科(総合造形分野)修了後、
ソフトウェア会社勤務ののち、東京芸術大学美術学部先端芸術表現科で助手、
非常勤講師。同大学の大学美術館の収蔵品データベース開発をきっかけに
博物館情報を専門にする。武蔵野美術大学非常勤講師を経て、2005年から
東京国立博物館の研究員となる。現在は館内のコレクション管理システムや
画像管理システムの企画開発に従事。共著に『MLA連携の現状・課題・将来』
(勉誠出版)

【写真左から3番目】
東京国立博物館 学芸企画部博物館情報課アソシエイトフェローの
佐藤祐介さん


~プロフィール~
1986年茨城県生まれ。日本大学芸術学部デザイン学科コミュニケーション
デザインコース卒業。以前より細々と映像制作をしていたが、大学在学中に
インタラクティブコンテンツの制作に興味を持ち、卒業後は東京国立博物館に
フェローとして勤務。現在は収蔵品管理システムの開発補助、
及びiPhoneアプリの開発を担当。

【写真左から4番目】
ミュージアム・サービス研究所主宰の
山村真紀さん


幼少時をアメリカにて過ごす。スミソニアン博物館群が遊び場。
帰国後、「博物館はつまらない」という友人の言葉に触発され、
ミュージアム業界に足を踏み入れる。大学卒業後ミュージアムにおける
利用者調査に従事。その後大学院に進学し、
慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構にて
ミュージアム・コミュニケーション・チャンネル・プロジェクトの
リーダーを経て2009年より現職。

【写真左から1番目】
司会進行は東京カルチャーカルチャー・プロデューサー
テリー植田さん

前半は主に村田さんが
「トーハクの歴史」
「トーハクに関するデータ」
「重要文化財とは?国宝とは?」などを解説。

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↑★ちなみにこれは現在のトーハク本館

まずは「東京国立博物館(以下、トーハク)」の歴史から、、、

トーハクは来年、開館140周年!!(1872年、開館!!)
湯島聖堂で開催された日本最初の「博覧会」の事務局がそのはじまり。

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↑★日本最初の博覧会の様子を描いたもの
目玉だったという「金の鯱」や
「魏志倭人伝の金印」などが描かれています。

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↑★貴重な当時の写真
お侍さんと金の鯱

これらの出展作品は翌年に開催された
ウィーン万国博覧会にも出品しました。

この博覧会の開催にあたり全国のお宝の調査なども担当したそうです。
19世紀後半にもかかわらず、
その際に撮影した最先端の技術を駆使した
写真が現在もトーハクにはたくさん残っています。
たとえば、、、

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↑★東大寺の大仏殿
これは修復する前の明治時代の大仏殿。

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↑★法隆寺のステレオ写真立
(※左右の写真を焦点を合わせず眺めると
立体的に見える??)
なんと、この写真自体が重要文化財!!

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↑★百済観音も3D!

照明のない時代なので
屋外で日光を照明にして撮影したそうです。

お宝の様子を正確に残すことに
努めていた様子が伺えます。

そして、事務局でなく
いよいよ現在の上野の地に
トーハクを建設!

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↑★現在のものとは違う
設計はイギリス人建築家のジョサイア・コンドル氏

ちなみにあのニコライ堂もコンドルさんの手によるもの。

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↑★当時の展示室の様子
今よりも狭くギュウギュウ詰めに展示されています。
なんと、この明治時代の木枠の展示ケースは
今も現役で活躍中。

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↑★当時は動物の剥製など、
自然科学ものも豊富に展示

(※現在は国立科学博物館へ)
これはキリンの剥製。
ちゃんと「ヂラフ」というキャプションがあります。

ここで山村さんよりヒトコト、、、
「博物館法により、モノを集めて展示するトコロを
博物館といいます。なので、プラネタリウム、
水族館、植物園なども“博物館”になるのです」

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↑★天井からクジラの骨をぶら下げるという斬新な展示

トーハクは最初は
大英博物館のような外国の総合博物館を
目指して作られました。

ところが、
関東大震災で大きなダメージを受けました。

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↑★崩れた外壁

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↑★倒れた展示物

この建物や展示物にも大きな被害をもたらした
関東大震災を機に今の建物に建て替えられ、
自然の展示物(剥製など)は
トーハクからほかの博物館へ

今回の3.11に東北地方の博物館で被災した
文化財を、文化庁の管轄の東京文化財研究所が中心になって
“文化財レスキュー”という活動で修復中。

ビショビショになった古文書などは
カビを抑えるために冷凍庫に入れて保存し、
乾燥させるそうです。

山村さんよりヒトコト
「地震の被害よりも津波の塩害の方が深刻だったそうです。
さらに民家から流れたものか、博物館のものか
わからない状態のものもあるとか、、、
とりあえず、どちらもレスキューしているそうです」

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↑★関東大震災の後に鉄筋コンクリートの建物なのに
屋根は瓦という現在のトーハク本館が完成

地震後に作られたため頑丈に作られているそうです。

ちなみに
3.11の地震では特に大きなダメージはなったとのこと。

そして、ここからは引き続き村田さんから
トークに関するさまざなデータを紹介。

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★↑所蔵品、国宝、重要文化財の数、寄託品の数
「件」と数えているのは
たとえば5枚1組のお皿で1セットならば
「1件」とカウントするケースもあるからです。
そのため1点1点数えたら
実際には1ケタは違うかもしれないそうです。

「国宝」と「重要文化財」については
「これは大切なものだから保護しましょう」と
「文化財保護法」という法律で決められたものが「重要文化財」。
その「重要文化財」の中でさらに特に大切なものが「国宝」。
だから「国宝」は「重要文化財」でもあるのです。
文化庁が毎年、審議会のようなものを開催し、「国宝」を決めています。

「寄託品」とは、
お寺などからの預かりモノのことです。

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★↑年間の展示件数、展示替え
(1つの部屋の展示替えをして1カウント)
「常設展示」でも
紙の作品は痛みが激しいので
こまめに展示替えをしているそうです。
それに量も多いのでそうしないと
見せ切れないのだとか。。。
そのため週レベルでどこかの展示が替わっているとか!
さらに日本の美術は季節感がとても大切なので
季節に合わせて入れ替えているそうです。

また、トーハクで展示するだけなく
トーハクの収蔵品の貸し出しも
年間に2,000件ぐらい行っています。
美術館同士の所蔵品の貸し借りは
基本的には(お互い様だから)タダ!
しかし、運搬費が非常に掛かるそうです。

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★↑年間の入場者数
平成21年度は特に来場者が多く、
来場者ナンバー1企画展の
「阿修羅展」があったからだそうです。
「阿修羅展」は一番多いときで
1日に約2万人が来場したとか。

戦後の来場者ナンバー1企画展は「モナリザ展」。

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★↑これは戦前の来場者ナンバー1企画展であった
「正倉院展」の様子をトーハク職員が描いた絵巻

1日に3万6,000人~3万8,000人が来場したそうです。

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★↑国宝・重要文化財は法律で
こんなふうに整理されています

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★↑トーハクには「国宝室」という部屋があり
ここでは1室に1つの国宝を展示

こんな国宝を細かいところまで
なかなか見ることができないときは、
国宝を手元で作品の細部まで拡大して鑑賞できる
「iPhone版『e国宝』」で鑑賞してください!!

「iPhone版『e国宝』」は、
アプリの対応をしたのは今春からですが、
平成12年の森内閣のIT革命で予算がつき
HPで2001年より公開していました。

それからいろいろあって
平成21年度の補正予算(7億円)により、
現在の「iPhone版『e国宝』」につながっていく、、、

そして
村田さんがプランを立て
さまざまな経緯を経て
今回の予算が下りて、
村田さんの部下である
若手の佐藤さん(25歳)が開発を担当することに!!

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★↑「iPhone版『e国宝』」をリリースするにあたり
こんなにたくさんやることが、、、

特に作品の撮影が膨大にあり一番手間が掛かったそうです。

~~休憩10分~~

後半は
開発を担当した佐藤さんのお話、
「iPhone版『e国宝』」を鑑賞、
最後に参加者からの質問に出演者が答える
3部構成でお届け。

まずは開発者の佐藤さんが自ら
「iPhone版『e国宝』」の内容について
語ります。

「この膨大な資料をWebだけで
公開するのではもったいない、
どこでも国宝が見られるようにしよう」と
2010年の6月ぐらいから話がはじまり
7月から本格的に(翻訳以外は)たったひとりで
iPhone用のアプリサイトの開発を始めました。

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↑★開発にあたり、国内外の美術館のサイトを
研究したそうです

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↑★「iPhone版『e国宝』」のウリは
美術館デートでのうんちくにも使える
説明文付き!!

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↑★仏語、英語、中国語、
韓国語、日本語の5ヶ国語にも対応!!

トーハク・スタッフが立会いのもとに
展示では見られない
いろいろなアングルから高性能なカメラで
撮影された国宝を眺めることができる「iPhone版『e国宝』」。

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↑★ブックマーク機能も付いています

いろんな機能があるので
学校の授業などでも活用してほしい(by佐藤さん)
もし、活用したら事例を教えてください!

参加者の学校の先生が
「使いたい!!」と声を上げていました。

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↑★リリース後、
驚きのダウンロード数

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↑★ある日を境にダウンロード数が急増
影響力のある人のツイッターでつぶやきのおかげか!?

村田さんは
「予想外。1万ダウンロードぐらいいけばいいかな」
と思ったいたそうです。

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↑★2011年1月23日のiTunesストアの
無料アプリでダウンロード数が3位に

(教育のジャンルではダントツの1位)

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↑★こだわって撮影した
「画像が鮮明で美しい」と反響が!

館内では「有料化」の声もあったが
「無料配信」も好評。
若い世代の来館者の増加に繋がればいい。

「これからはもっと展示と連携して
ライブツアーなどに取り込んでいければ、、、」
と村田さん。

「気合を入れなくても気軽に
ベッドに寝転がりながらでも
国宝を眺めるなど
トーハクを身近に感じるツールとして
活用してほしいですね」
と開発者のしての思いを
佐藤さんが語ります。

さらに開発者として佐藤さんは
インターフェースが気になり
「ボタンの配置やアイコンのデザインなど
もっとみやすくなるように改善してきたいんです」
と今後の課題も語ってくれました。

山村さんよりヒトコト、、、
「実際はガラス張り中の展示をアプリだと
拡大して見ることができるので双眼鏡を持っていくよりは
手元で見ることができたら面白いなという感じがします」

今後については
iPad版を現在、開発中。「iPhone版『e国宝』」を
iPadにインストールすることもできるようになっていて、
わざわざiPadにインストールして使ってくれている人もいるとか。
要望多数のアンドロイド版も頑張って開発していきたいとか。

いよいよ実際に
「iPhone版『e国宝』」を大きなスクリーンで鑑賞!!

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↑★「普賢菩薩像」
国宝
1幅
絹本着色
159.1×74.5
平安時代・12世紀

どんどん拡大して、、、
「目」をアップにすると、

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↑★実際にはここまで見ることができませんが
「目」に色が入っていることがわかります。

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↑★乗っている象の頭の上にも仏が!

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↑★「観楓図屏風」
国宝
狩野秀頼筆
6曲1隻
紙本着色
150.2×365.5
室町~安土桃山時代・16世紀

秋を描いた作品です。
よくよく見ると

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↑★「酔っている人」が!

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↑★「お乳をあげている人」が!

「男衾三郎絵巻」
重要文化財
1巻
紙本着色
29.3×1260.9
鎌倉時代・13世紀

展示室では一部しか展示されない
長い絵巻物もフルで見ることもできます。

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↑★登場人物の弟の醜い奥さんの顔もアップに!!

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↑★その醜い娘の顔もアップで!!

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↑★「埴輪 挂甲の武人」
国宝
群馬県太田市飯塚町出土
古墳時代・6世紀

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↑★埴輪にある細い線を
拡大して見ることにより
道具として「ハケ」をウマく
使ったことがわかります

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↑★洛中洛外図屏風(舟木本)
重要文化財
6曲1双
紙本金地着色
各162.7×342.4
江戸時代・17世紀

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↑★細かく描かれた人々の
顔の表情までハッキリ!

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↑★麗子微笑
重要文化財
岸田劉生筆
1面
カンバス・油彩
44.2×36.4
大正10年(1921)

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↑★劉生の
ネッチリした密度の高い
筆づかいまでわかります

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↑★血染懸軸(梅椿画)
重要文化財
1幅
江戸時代
これは京都国立博物館の収蔵品。

龍馬暗殺のときに
掛けられていたという掛軸。

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↑★血痕がよりハッキリ!

このように
「iPhone版『e国宝』」では細かい部分を
拡大するなどしてじっくり見ることができるのです。
ただし、作品の実際の大きさや実感がわからないので
それは博物館に行って実物で確認しましょう。

山村さんのヒトコト
「大きなスクリーン見るのは
手元の「iPhone版『e国宝』で見るのと全然違うと
思って見比べていたんですけど、
こういう会場でやる利点は大きなスクリーンで
みんなで見られることですね」

参加者から出演者への質問タイム
【その一部をご紹介】

Q今までにドキドキした展示物は?

テリーさん:三十三間堂に行ったとき

山村さん:ワシントンDCにあるナショナル・ギャラリーで開催されていた
マティス展で見た「海獣」。ずっと2時間見続けていた。

佐藤さん:実は鉄道好きなので、名古屋のリニア・鉄道館で見た
高速運転を試運をするためのテスト用の幻の車両

村田さん:大学では現代美術(コンテンポラリーアート)を
勉強していたので、ドイツ・ケルン大聖堂の画家のゲルハルト・リヒターが作った新し

い抽象絵画のようなステンドグラス

Qトーハクの職員の数

村田さん:非常勤など全体を合わせると200人強。
そのうち研究員が約50人。
国内では多いけど、
海外の大きな美術館と比べると少ないんです。

Q人気の日光・月光菩薩のライティングについて教えて

村田さん:トーハクには照明デザインを
やっている専門の研究員がいるんです。

山村さん:ライティングによって見え方が違うし、
仏像などは明かりの当て方で表情が変わるそうです。
ライティングの専門家がいるのはトーハクだけ。

QiPhoneもiPadも持っていなく
「iPhone版『e国宝』」を見たいが
トーハクでiPhone(ツール)を貸してくれるのか?

村田さん:3月に20台ぐらい用意して実験的に貸し出しました。
利用者には好評だったので今後は検討していきます。

Q高齢者なのでiPhoneが怖くて使えない、、、
どのぐらい勉強したら使えるようになりますか?

テリーさん:僕が教えます!

などなど、たくさん質問が寄せられていました。

最後に、出演者から
イベントを感想、、、

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山村さん:正直、初めてのイベントで人が来てくれるか
ドキドキしていましたが、たくさん来てくれてうれしいです。

佐藤さん:参加者の顔ぶれを見ると「e国宝」よりも
「国宝」というものに食いついたアプリを世代とは違った層の方がいて
それはそれで、今までと違った世代の人にアプリケーションのアプローチが
できたことはすごくうれしく思います。
こうして直接お客さんと直接お話することが滅多にないので
そういう機会を与えてくれたこのイベントに感謝します。

村田さん:所蔵品を見ながらのイベントはなかなかないので、
良い機会だった思います。
アプリーユーザーがもっと来ると思っていたら、
実際に来てくれた人はその逆で
いつもトーハクに来場するような方が
こちらもにも来ていただいたということで
非常にありがたいです。
今後もこういったツールなどを考えていきたいと思いますので、
トーハクにさらに通っていただいて、ご支援いただければと思います。

テリーさん:次は絵巻ばかり、仏像ばかり、国宝にクローズアップした
ようなイベントも開催したいですね。

これからは手元で国宝をさまざまな角度から鑑賞し、
その知識を頭に取入れてから
実際にトーハクに行き、実物を鑑賞するスタイルが
新しいのかもしれませんね。

ライター:本多万里子