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水族館プロデューサー中村元 presents 『中村元の超水族館ナイト2012年秋 ~命と水族館…いただきますの気持ち~』ライブレポート(12.10/28開催)

2012年12月11日

カルカル超定番イベント『中村元の超水族館ナイト』の第13回目、
スピンオフ企画の「サンシャイン水族館ナイト」を含めると実に19回目!

「水族館はどのようにあるべきなのか?」といった話を中心に
オススメの水族館紹介や専門家を招いて水圏生物トーク、
さらには現役の若手水族館スタッフをゲストに迎えるなど
毎回楽しい企画で盛り上がりを見せてきました。

さて、そんな盛り上げ上手な中村さんが、
今回はなにやら”変化球”を投げてきた模様。

そう、テーマは…

『命と水族館…いただきますの気持ち』

中村さんは過去のトークライブにおいて
「水族館は科学系博物館になってはダメだ!」
という話を何度も何度も繰り返しています。

水族館が伝えるべき最も大切なことは
命のありのままの姿や命の素晴らしさであり、
我々人間がその命をいただいて生きているという事実。
そして、「いただきます」の感謝の気持ち。

…というワケで、今回の超水族館ナイトは、
第1部は中村さんの本気度MAXな食育トーク。
そして第2部は元・南極海調査捕鯨団の団長で
現在は鯨類研究室長の石川創さんをゲストに迎えて
「捕鯨」に関する貴重なお話を伺いました。

中村さんの投じた変化球をしっかりキャッチしようと
みなさん真剣に耳を傾けていました。

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【限定メニュー】

限定メニューはなんとクジラ!おいしかったです!

ゴマクジラ
ごまクジラ

鯨の竜田揚げ
鯨の竜田揚げ

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【出演者紹介】

”カンチョ”こと中村元さん(水族館プロデューサー)
水族館プロデューサー・中村元さん

元・鳥羽水族館副館長。
鳥羽水族館、新江ノ島水族館をプロデュース。
昨年サンシャイン水族館のリニューアルを大成功させ、
その勢いのままに北海道北見市にある超ビンボー水族館
「おんねゆ温泉・山の水族館(2012年7月オープン)」を
超低予算ながら中村マジックでガラリと生まれ変わらせた。

お相手はもちろんテリー植田さん(※)
テリー植田プロデューサー
(※東京カルチャーカルチャープロデューサー)

第2部のゲスト石川創さんについては後ほど。

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【第1部】

第一部スタート!
イベントスタート

第1部は中村さんの食育トーク!

1)「いただきますライブ」とは

中村さんは今や北海道でもすっかり有名人。
北海道北見市にある超貧乏水族館
おんねゆ温泉・山の水族館」のリニューアルを引き受け
連日、前年比1000%超ものお客さんが訪れるなど大盛況。
小さな水族館ながら「世界初」や「日本初」が
沢山ある水族館でメディアからも注目を集めています。

その「山の水族館」で中村さんがある企画を始めました。
それは「いただきますライブ」という水槽でのイベント。

山の水族館には1m級のイトウが40匹も泳ぐ水槽があります。
普段は餌に切り身を与えているのですが、
この「いただきますライブ」の時だけは生きたニジマスを与えるそうです。
当然、ニジマスは食われまいと必死に逃げ回りますが
それをイトウが巨体を躍らせながら巧みに捕らえに行くという
非常に迫力のあるシーンが展開されます。

このイベントは中村さんのオリジナルではなく
もともとは標津サーモン科学館で行われていたイベントでした。
しかし、一部の市民から「残酷だ!」との苦情が市役所に入り
残念ながら中止に追い込まれてしまったそうです。

そのプログラムを非常に高く評価していた中村さんは
山の水族館でこれを復活させようと考えたワケです。

サーモン科学館の二の舞にならないよう
中村さんは予め北見市長にプログラム内容を説明し、
「残酷だから止めろというクレームが来るかもしれないが、
ちゃんと説明できるから絶対に止めちゃダメだ!」
と訴えたところ、
北見市長も「それは食育ですね?」と理解を示してくれたとのこと。

そしていよいよ始まった「いただきますライブ」

中村さん
「少数ながら残酷だというクレームは必ず来ます。
でも、みなさんちょっと考えてみてください。
生きているものが生きているものを食べる…。
これは本当に残酷なことなのでしょうか?
人間も踊り食いをしたり、イカやタコをまだ動いているから
新鮮だと言って食べています。これを残酷と言いますか…?」

2)全ての生き物は他の命を奪って生きている

全ての生き物は他の命を奪って生きています。
(※ここで言う命には植物も含まれます)

我々は日々、数多くの命をいただいているはずなのですが、
その命を奪うシーンを普段見ることは殆どありません。

中村さん
「それは屠殺するという一番大変なところを
誰かにやってもらっているという感謝の気持ちがあるから
そういったシーンをわざわざ出さないんです!」

以前話題となった「The Cove」という映画は
和歌山県太地町のイルカ漁を猛烈に批判している人達が
それを世界中に知らしめようという意図で制作されたもので、
イルカを殺している場面がたくさん出てきます。

ただ、同じことは狩猟対象の野生鳥獣や
一般的な家畜でも常に行われていることであって、
イルカの命を奪っているシーンだけを見せつけて
「こいつらは悪魔のような奴等だ!」と訴えるのは
絶対におかしいと中村さんは言います。

イルカ漁を批判する人達は口を揃えて
「イルカは知的で可愛いから殺してはダメだ!」と主張するのですが、
それならバカでブサイクな動物なら殺して良いとでも言うのでしょうか?
そもそも牛や豚だって非常に頭の良い動物です。

3)命への感謝~「いただきます」の気持ち

食べるために命を奪う行為は「決して残酷ではない」と言えます。
但し、それは好き勝手に殺して食べて良いということではなく、
命に対する「感謝の気持ち」が必要です。

ここで中村さんは子供の頃の思い出話をしてくれました。

それは小学生時代の”川遊び”の話。
年に一度、川の掃除のために水門が閉められ、
川の水がなくなり魚が獲り放題になる時があり、
中村さんは遊び仲間の友達とたくさんの魚が獲って
「よし、食べよう!」という話になったそうです。

なぜかマッチは持っていました。
(爆竹遊びが流行っていたからだそうです:笑)
そこで、まず枯れ葉や木の枝を集めてきて、
次に壊れた傘を拾ってきて分解し、
傘の骨を串代わりして魚を焼こうとしました。

しかし、いざ、魚に串を刺そうとするとなかなか入らない。
グッと力を入れるだけで魚がもの凄い力で暴れる。
中村さんも友達も皆、汗だくになりながら
必死の表情で魚に串を通そうとしたそうです。

そして、やっと串が入ったのですが、
串が刺さってくとき骨をズリズリズリとする感触。
そして死ぬ間際に更に暴れる魚…。

「その時の感触が今でも手に残って消えない」と語る中村さん
子供の頃の体験を語る中村さん

長い格闘の末、どうにか魚を焼くことができたのですが、
所詮、子供が起した火なので、火力も弱くススだらけ。
当然、魚は生焼けで、周りは真っ黒という酷い焼き上がり。
でも、中村さんも友達もその魚を「おいしい!」と言いながら
食べられるとことは探して全部食べたそうです。

中村さん
「ただでさえ泥臭い川魚が生焼けなのだから
どう考えてもおいしいわけがナイ!
でも、不味かったという記憶は全くなくて、
ただ、おいしかったというのを覚えている。」

それ以来、中村さんが魚を食べる時には
目の前にリアルな魚の姿が浮かび上がるようになり、
その魚の姿に対して感謝の気持ちを込めて
「いただきます!」をするようになったと言います。

4)命と水族館

中村さんがプロデュースした新江ノ島水族館でも
子供向けの食育プログラムが行われています。

例えば、
アジを捕まえて、それを調理して食べるというもの。

とにかく魚を捕まえるところから始めて、
捕った魚を自分の手で絞めて調理するところまで
親には一切関与させずに子供達だけで行っていきます。

魚を絞める段階で、多くの子供が「できない」と言ったり
泣きだしてしまったりする子もたくさんいるらしいのですが、
それでも子供達に最後までやってもらうのだそうです。

そして自分で捕って締めた魚でムニエルを作り、
「いただきます!」という段階でようやく親も中に入れるのですが、
子供達は「おいしい!」と言いながら夢中になって魚を食べるそうです。
魚が嫌いだと言っていた子供も「おいしい!」と。
自分で命を奪う経験を通して食べる魚は味も考え方も全く違ってくるようです。

本当は少年時代の中村さんのように人生経験の中で
「命を奪って→いただく」という場面に遭遇できるのが理想ですが、
都市化が進み、調理・加工済みの食料品が溢れる現代においては
なかなかそのような機会に巡り合うのも難しくなっていると思われます。
それ故に、水族館がこのような”食育”の機会を提供することは
非常に意義のあることではないかと考えます。

新江ノ島水族館に行ったことがある人は分かると思いますが、
水槽の横にその水槽の中を泳いでいる魚の
おいしい調理法を紹介したパネルがあったりします。
もちろんこれも食育の一環。

水槽の中を元気に力強く泳ぎ回る魚の姿を見ていると
「食べ残しなんてできない」という気持ちになりますよね。

このように水族館は展示を通して文化や道徳、
そして生き方が分かる唯一無二の文化施設であると言えます。

中村さんが水族館ナイトのたびに
「水族館は科学系博物館になってはならない!」
と主張している理由はここにあります。

ちなみに水族館で魚を見て、思わず
「おいしそう!」と言ってしまう人はいませんか?
中村さんに言わせれば「おいしそう!」
その魚に対する最上級の褒め言葉だそうです。
なので、水族館に足を運んだらどんどん
「おいしそう」と言って全然構わないとのことでした。

中村さん
「水族館で毎日いただている魚の生きている姿を見て
”命の美しさ”や”命の尊さ”を感じて欲しい!」

おいしそう!(イワシ)
美味しそうなスライド

おいしそう!(タコ)
美味しそうなスライド

おいしそう(マグロ)
美味しそうなスライド

新刊「中村元の全国水族館ガイド115(長崎出版)」をPRして
第一部が終了。(拍手)

中村さん「買ってや!」
[PR]中村元の全国水族館ガイド115

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【休憩時間】

…というワケで物販コーナー
物販コーナー

休憩時間と言っても中村さんはサイン攻めで大忙し
サインに大忙しの中村さん

こちらは第2部のゲスト・石川創さんの著書
石川創さんの著書

あれっ!? こちらの方はひょっとして…
おたる水族館の神前さん

おたる水族館の神前和人さんでした!
写真集を手に神前さん

神前さんは第9回目の超水族館ナイト
現役若手水族館スタッフとしてゲスト出演し、
おたる水族館の可愛い海獣写真をたくさん見せてくれました。

この度、イラストが描ける同僚の獣医さん(角川正俊さん)と共に
「かいじゅうさん、ハイ(長崎出版)」という本を出したそうです。
ほのぼのとした可愛い写真満載!海獣に癒されたい方は是非!

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【第2部】

後半は「捕鯨」の話です。

石川創さん(下関鯨類研究室長)
後半のゲスト・石川創さん

石川さんは元・南極海調査捕鯨団の団長
”鳥羽水族館”で海産哺乳類の獣医師をしていたこともある。

つまり…、、、

中村さんと石川さんは旧知の仲(師弟関係と言うのかな…)
鳥羽水族館時代の師弟関係

テリーさん
「調査捕鯨って言いますけど何を調査しているんですか?」

石川さん
「うーん、やっぱりPR不足ですよねぇ…。(苦笑)」

もともと日本は南極海で商業捕鯨をやっていました。
しかし、1982年、国際捕鯨委員会において
「鯨は採り過ぎだから捕鯨は止めよう」という話が
ヨーロッパ中心に突然提起され
獲り過ぎという科学的な証拠はどこにもなったそうですが、
数の力で押し切られ、商業捕鯨が禁止となってしまいました。

但し、「鯨が獲っても大丈夫な生息数がいる」ということが
科学的にきちんと証明がされれば
商業捕鯨の再開を認めるということでもあったので、
捕鯨国である日本はその科学的な証拠を示すために
調査捕鯨というものを開始したというワケです。

イルカの仲間も含めて鯨類は全部で86種類。
日本は調査捕鯨によって、どの種類のクジラが何頭ぐらいいて
その年齢構成はどうなっているか、繁殖の割合はどれくらいか、
何歳で性成熟するか等のデータを収集を行っています。
しかし、アメリカやヨーロッパの捕鯨反対の圧力は年々強まり、
ずっと調査捕鯨の状態が続いているのが現状…。

実はアメリカやヨーロッパも以前は捕鯨をやっていました。
…と言っても食用としてではなく
「鯨油」と呼ばれる油をとるのが主な目的だったそうです。

鯨油は灯火用燃料や潤滑油として重宝され
特にマッコウクジラから採れる鯨油は氷点下数十度という環境下でも
凍らないという非常に優れた物理的・化学的特性を持っていた為、
宇宙船の開発などに多用されました。

結局、アメリカやヨーロッパは鯨油が
石油化学品で代替できるようになったため
捕鯨を止めただけのことであって
それ以前はクジラを油をとるためだけに
クジラを大量に殺していたという歴史があります。

それを考えると日本ばかりが責められることには
どうしても違和感を感じざるをえません。

調査捕鯨船「第3勇新丸」
スライドは調査捕鯨船

捕獲したクジラ
Aquq_namanurastalk13_12

さて、捕鯨で真っ先に思い浮かぶのがシーシェパード

今回の超水族館ナイトのチケットが発売された直後に
50枚ぐらい一気に売れたのを見て中村さんが
「シーシェパードが買い占めたのではないか!?」
と、ビクビク怯えていた(笑)ほど過激な団体です。

日本の調査捕鯨団の団長だった石川さんも
何度もシーシェパードに妨害行為を受けてきました。

石川さんがシーシェパードの映像や写真を公開
動画でシーシェパードを語る

シーシェパード現る!
シーシェパード現る

酪酸のビンを撃ちこんでくる
酪酸弾を撃ち込まれる

酪酸とは悪臭のする液体で
皮膚に付着するなどして体内に取り込まれると毒性を強め、
皮膚が酷い火傷を起こしたり内蔵の細胞や組織を破壊。
もちろんクジラにとっても他の水生物にとっても有害な化学物質。

”環境保護団体”を名乗るシーシェパードが
積極的に環境を汚すというあまりにも酷い行為…。

火炎放射
火炎

ランチャロケット弾
ランチャロケット弾

投げ込まれたロープがスクリューに絡まる絡め取られたスクリュー

超強力レーザービームで視力を奪いに来る
レーザー砲

中村さん
「これは退屈せんなぁ…」

テリーさん
「なんで日本はこんなに標的にされちゃうんですか?」

石川さん
「簡単に言えばお金になるんですね…」

オーストラリアは南極海を自国の領海だと主張しています。
もちろんそれは国際的には認められておらず、
南極海は国際法上の「公海」となっています。

シーシェパードはアメリカに本部を置く団体ですが、
南極海での反捕鯨活動を行うため
オーストラリアに拠点を置こうとした際に
「お前らの海が日本人に荒らされているぞ!」と宣伝したところ、
莫大な寄付金が集まったそうです。

また、「The Cove」をはじめとする映画や
テレビの反捕鯨キュメンタリーが番組などが
アメリカを中心に絶大な人気を集め、
その人気に目を付けたハリウッドのスター達が
シーシェパードに多額の活動資金を提供する代わりに
船に自分の名前を入れてもらうなどするようになりました。

シーシェパードによって日本に対する調査捕鯨の妨害は
完全に錬金術化してしまっている状態にあります。

日本人は命に対する感謝の気持ちを常に大切にしてきました。
クジラに関しても例外ではなく、捕鯨の盛んな地域を中心に
クジラを慰霊する碑などが数多く存在するなど、
感謝しながらクジラをいただいてきたという歴史が分かります。
その他、漂着したクジラによって村が飢饉から救われた話など
クジラを救世主として崇める伝説も残って各地に残っています。

石川さん
「クジラを食べるのは日本の食文化です。
但し、それは『いただきます』の心、
感謝の気持ちがあってこその食文化であって、
それがなかったらどんな生き物も殺してはダメです!」

最後に中村さんが水中でクジラに遭遇した体験談を披露
水中で鯨に遭遇した体験談

水中でのクジラは想像以上に非常に細長く見えるらしい。
(例えるなら新幹線の先頭車両のようなイメージだとか…)

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【まとめ】

命を頂く限りは必ず感謝の気持ちが必要です。
そんなごく当たり前のことでありながら
でも日頃忘れがちなことを改めて見つめ直すことができ、
色々と考えさせられるトークライブでした。

命をお金で表現するのはあまり好ましくはありませんが、
昔は超高級品だったマグロのトロが
今や回転寿司で激安で食べられてしまう時代であり、
他の食材の値段もスーパーで非常に安く手に入ります。
いただく命に対する対価が安くなっている分、
どうしても命をいただいているという意識も薄れがちになります。

水族館はそんな時に気づきを与えてくれる場であるという
中村さんの話には非常に説得力がありました。

(ライター・GAMA