ネットとリアルをつなぐソーシャル飲食店

美術館が好きで好きでたまらないアナタに新しい発見を!『ミュージアム・トリップ vol.3 ~対話式鑑賞法って何?!~』ライブレポート(12.4/21開催)

2012年05月21日

美術館へ行くのがもっともっと楽しくなるトークショー、
『ミュージアム・トリップ』の第3弾が開催!
(もう立派にレギュラーイベントと言って良いでしょう!)

今回はアートを語り、見方を広げる『対話式鑑賞法』を
カルカルに集ったみなさんと一緒に実践し、
一つの作品をみんなで語り合うことの意義や楽しさ、
そして、それがもたらす効果などを体験しながら学んでいきます。

美術館が大好きで、美術館に頻繁に通っている人は
おそらく自分なりの鑑賞スタイルを確立させていて、
また、美術史にもかなり精通していることと思います。

しかし、その「自分なりの観賞スタイル」というものが、
時に”偏向”フィルターとなって作品の見方を狭めてしまったり、
或いは、美術史的な予備知識を持っているがために
「この作品はこう解釈しなければいけないんだ」といったような
ある種の固定概念に囚われてしまうこともあるかもしれません。

「対話式観賞法」を行うことで、
今まで気がつかなかった”新しい世界”を覗いてみましょう。

==========

【出演者紹介】

平野智紀さん(アートナビゲーター)
120421_museum_t_02

一般企業に勤める傍ら、美術館・研究機関などで
観賞ワークショップなどの各種イベントを開催するなど、
日常生活の中に息づくミュージアムのあり方を模索している。

奥本素子さん/博士(学術)
120421_museum_t_03_2

総合研究大学院大学・学融合推進センター助教。
「美術を鑑賞すること」の意義や効果について
心理学や認知科学の側面からアプローチしている。

平井宏典さん/博士(経営学)
120421_museum_t_42

共栄大学国際経営学部専任講師。
研究対象はアートマネージメント(ミュージアムマネージメント)。
美術館は「基本的に儲からないもの」とのことで、
”アートとお金をいかに結びつけるか?”
”そのために美術館はどうあるべきか?”
といったことを、日々研究・提言している経営学者さん。

山峰潤也さん/学芸員
120421_museum_t_04

東京都写真美術館で学芸員を務める。

東京都写真美術館は有名な写真を収集する一方で
映像分野にも非常に力を入れており、その中で山峰さんは
恵比寿映像祭」をはじめとした映像主体の
アート・フェスティバルの運営やキュレーションを行っている。

司会進行:テリー植田プロデューサー
120421_museum_t_01

==========

【1.実践!対話式観賞法!/平野さん】

まずはやってみましょう!
120421_museum_t_05

小難しい理論などはとりあえず置いておいて
まずは「対話式観賞法」をみんなで実践してみることに!

対話式観賞法でやることは、上の写真のスライドにあるように
日常生活でごく当たり前にやっている「4つ」のこと!

「みる」 「かんがえる」 「はなす」 「きく」

/*——————–

対話式観賞法のプロセス>>

[みる]
直感を大切にしながらまずは作品をじっくり見る。

[かんがえる]
じっくり見たらなぜ自分がそう思ったかについて内省する。

[はなす]
自らの中に湧き上がった思いや疑問を言葉にして他の鑑賞者に伝える

[きく]
他の鑑賞者の声にきちんと耳を傾ける。

——————–*/

平野さん(ナビゲーター)
「いつの時代の誰の作品で…といったことは気にせず
自分の直感を大切にまずは作品を味わってみてください!」

…というワケで、1作品目!

有名な写真ですね(作品の詳細については後ほど)
120421_museum_t_07

1分間ほど作品をじっくり眺めてから対話が始まります。

この日、会場に集まったお客さんは
日常的に美術館に足を運んでいる美術鑑賞の玄人さんばかり。
そんなみなさんはどのような感想・意見を持たれたのでしょうか?

全てはとても紹介できませんが、少し書き出してみます。

・キスをしているカップルを周りの人が誰も目にも止めていない。

・通行人の男性は全く見てないが女性の方は一瞬見たのでは?
その上で「私、知らないわ!」という態度に見える。

・通勤途中で駅に向かっている途中なのではないか?
ここまでは二人一緒だけど、ここで別れてしまうのかな?と。

・丸いテーブルがあることからおそらくオープンカフェで撮っている。
観光客として目にとまったものを撮ることで
「自分はエトランジェなんだ」と言う気持ちを表現した作品だろう。

少し対話をしただけで、キスするカップルを誰も見ていないという意見と
一部の人は見たけど見なかったフリをしているだけという意見があったり、
「ロマンチックな二人だなぁ」と思う人もいれば、
「ケッ!(人前でキスなんてしやがって)」と思う人もいたり、
思っていた以上に作品の見方や感じ方が人によって違うことが分かります。

特に、写真に写っている人物を主人公に捉えて作品を見ていく人と、
写真を撮った人の立場になってその時の心境を探っていく人とでは
出てくる感想が大きく異なっていたように感じました。

そこに、ステージ上からこんな感想(↓)が。

平井さん
「偶然撮ったにしては美男美女すぎますよね…。
パッと街中で撮ってこんな美男美女なのは不自然では?」

言われてみれば確かにそうです。

平井さんのこの発言をキッカケに客席の感想も大きく変わっていきました。

・ドッキリ写真の思えてきた!
二人は仕掛け人で目の前で急にキスをして
通行人のリアクション撮りたかったのでは?

・仮に演出写真だとしても
画面全部を演出しているわけではないと思うので、
どこまでが演出で、どこからがリアルなんだろう?

平野さん(ナビゲーター)
「この二人は演劇学生で、写真は偶然撮られたものではなく
いわゆる演出写真というものですね…。」

なるほど、やはりそういうことのようです。

…とは言え、作品の感じ方や解釈に決まった答えはなく、
演出写真と知っていても、あえてそこから目をそむけて
「おとぎ話」を大事にする観賞の仕方も勿論”有り”です。

みなさんの意見を聞いていると自分がいかに狭い範囲でしか
作品を見てみていないことに気づき、色々と驚かされました。

中にはこんなイレギュラーな意見も!(↓)

「手前の女の人の髪型が人の見えるんですけど…」
120421_museum_t_08

ホントだー!!((;゜Д゜)
120421_museum_t_09_2

テリーさん
「急に怖い写真に見えてきました…。」

/*— 1作品目の詳細 — */
東京都写真美術館
ロベール・ドアノー
「パリ市庁舎前のキス」(1950

2作品目>>

唐獅子!
120421_museum_t_11

[客席の感想(抜粋)]

・描いた人は唐獅子が実在すると思って描いたのか?
それとも完全に空想の生き物として描いたのかが気になる。

・どっちがオスでどっちがメスか?
体の大きさからして黄色い方が多分メスだと思う。

・どこにいるのだろう?
雲の上にも見えるし山の上にいるようみも見える。
高い所にいる方が伝説の動物らしくて良い。

初めは空想上のものではあるものの
唐獅子を「動物」として見た場合の感想が多かったのですが、

・動物なのになんで眉毛があるんだろう?
タテガミも人間の髪の毛っぽい印象を受ける。

・だんだん人間っぽく見えてきたぞ!

…と、徐々に「これは人を表している!」との意見が広がっていきました。

平野さん(ナビゲーター)
「この絵は安土桃山時代に描かれたもの。持ち主は秀吉だっと言われ、
秀吉が毛利と戦っている時に本能寺で信長が討たれたとの噂を聞きつけ、
急遽、毛利と和睦するためにこの絵を贈ったとの説があります。」

つい数分前までは「オス・メス問題」で盛り上がっていた客席でしたが
いつの間にか2頭の唐獅子から読み取れる様々な人間模様や
戦国時代の権力闘争をイメージしたコメントが増えていきました。

対話式観賞法を行うことで
参加者の感想はもの凄い勢いで変化していきます。

/*— 2作品目の詳細 — */
三の丸尚蔵館
狩野永徳
「唐獅子屏風図」(桃山時代)

>>3作品目

3作品目は、写真とテキストで一つの作品
120421_museum_t_12

//===テキスト部分=======

あの夜が帰ってこないかな。

ぬくまちくんにはじめて会ったあの日、
手を繋いだだけでなにもかもが判り合えた。

わたしたちはお互いなにも判らないんだということ全てを
わたしたちが判り合えたあの夜。

[客席の感想(抜粋)]

・失恋した後に「あの時は良かったね。でも今は…」

・写真の二人は手をつないでいる?でもすごく遠くてかすんでいる。
今にも消え去りそうで寂しい感じ。

・遠い過去を振り返って想像していたのでは?

「寂しい・切ない印象」という意見が多かったのですが、
次のような意見も結構多く出されました。

・自分の中のイメージと言葉をそのままポンと出したような産物では?
特に焦点もなくあまりメッセージを持たせない程度のつぶやきみたいなもの。

・具体的なことを語っているようでふんわりしている。

・なぜ海の前でこれを書いているのか釈然としない。

・あの夜と言いいながらどう見ても夜じゃないことに違和感。
明け方か、夕暮れ時か…。

平野さん(ナビゲーター)
「写真だけ拡大して見たらどうでしょうか?印象変わりますか?」

あれ?遠くにいる二人は実は子供で楽しそうに遊んでいる!?120421_museum_t_13

拡大して改めて写真を眺めてみると決して寂しい写真ではなく
むしろ楽しそうで温かい印象の写真に見えてきました。

この作品は「ぬくまちくんとささこ」という物語で
女の子の主人公・ささこちゃんが、ぬくまちくんという男の子に
ある日、街角で突然ナンパをされて、はじめて出会った男女に
恋愛感情が芽生えるかどうかを知りたいということで
二人は付き合い始める…というストーリーだそうです。

客席にこの作品を作った
アーティストの方(猫田耳子さん)がいらしていました。

猫田さん(作者)
「写真とテキストは全く別のルートで作られたものです。
だから写真とテキストはこの組み合わせでなければならないという
絶対的ものはなくて、その間に生まれる溝みたいなものが、
特にこういう会話と文章といのだとおもしろいのかなと考えました」

やはり意図的に別々に作られた写真とテキストを
組み合わせることで生まれた作品でした。

なるほど…!

今回3作品について対話式観賞法を行いましたが
みんなで感想や意見を出し合っていくうちにどんどん見方が変わり、
その分だけ世界が広がっていくことを実感することができました。
ただ、場の意見が一つの方向へと収束する傾向もあったようにも思えます。

私自身も誰かの意見を聞くたびに
「おおっ!なるほど!」「そういう見方があったか!」
と感心するところまでは良かったと思うのですが、しかし同時に
自分の意見に他人の意見を上書きして消してしまっていた気もします。
この辺りは「多少の訓練が必要なのかな?」と感じました。

他人の意見に耳を傾けながらも、自分の中の直感も大切にできると
「対話式観賞法」が非常に有意義なものになると思います。

ここで前半の部が終了。

「ぬくまちくんとささこ」の作者・猫田耳子さん
120421_museum_t_14

/*— 3作品目の詳細 — */
まれびと美術館
猫田耳子
「ぬくまちくんとささこ」(2011)

=====

【2.奥本さんのプレゼン】

ここからは後半の部。後半は講義形式で進行。

奥本さんは今回のテーマである「対話式観賞法」が
どれだけ美術観賞の幅を広げるのかを学問的に解説してくれました。

2.1 自然美と芸術美の違い

奥本さん「まずこの写真を見てどう思いますか?」
120421_museum_t_16

奥本さん「では、この絵の山は?」
120421_museum_t_17

絵は写真と同じ山をポール・セザンヌが描いたもの。

人間は自然の風景を観る時、直感で「美しい!」と思うそうです。

一方、人工物である絵を観るときは
・画家がどういう思いでこれを描いたのか
・どうしてこういう筆遣いをしたのだろうとか
そういったことを考えた後に美しいと感じると言われてます。

それが自然美と人工美(芸術美)の感じ方の大きな違い。

ならば、その”絵を観て考える部分”を豊かにしてあげれば
新しい気づきへと繋がっていきそうです。

その一つの方法がこの日のテーマである『対話式観賞法』となります。

2.2 五つの美的発達段階について

対話式観賞法を開発したハウゼンという研究者によれば

「人間が絵を観るときの段階は5段階分類することができ
それは段階を昇るにつれて徐々に高度になっていく」

とのこと。

5段階の美的発達の説明
120421_museum_t_18

学生向けのプレゼン資料なのか用語が難しい(汗)。

奥本さんが噛み砕いて説明してくれました。

[第1段階]
好きなモノは好き!という絵の見方
⇒例)犬が好きだから犬の絵が好き!

小さな子供はこういった感覚で絵を観るそうです。
犬が描かれていない絵は全然面白くないといった
非常に限定された絵の見方になっている

[第2段階]
きれいなモノが好き!という絵の見方
⇒例)写真みたいにそっくりに描けているから好き!

 社会的に認められているものが良いという段階。
(小学校高学年ぐらいの感覚。周囲の目を気にする段階)

[第3段階]

分かるものが好き!という絵の見方
⇒美術史的に知っているから好き!
様式的がはっきりしているから好き!

 自分の知識に沿った作品を良いと思う段階。
知識を持っていることは素晴らしいが
知識を持っているが故に見方が制限されてしまうこともある。

[第4段階]
個性的なモノが好き!という見方
⇒この人にしか描けない絵だから好き!
この人にしか作れない作品だから好き!

 強烈な独自性を持ったモノに価値を見出そうとする段階。
ピカソのような抽象絵画も受け入れられるようになる一方で
地味なモノに興味を示さなくなる傾向も出始める。

第3段階の例 「あ、この風神雷神図、全部知ってる!」
120421_museum_t_21
(上から俵屋宗達、尾形光琳、酒井包一…)

第4段階の例 「岡本太郎だからイイ!」
120421_museum_t_22

そういった4つの段階を経て最終的に辿りつくのが…

[第5段階]
いろいろな良さがあるでしょ!という見方

この段階に達すると絵によって見方を変えることができ、
本当の意味で自由に絵を観賞することができるようになるそうです。

歴史的な絵であれば歴史的な良さを楽しんだり、
現代アートであれば個性な部分を楽しんだり、
理屈抜きにただ単純に色や筆遣いを楽しんだり、
対話するように色々なアプローチで絵を楽しむことができるレベル。
色々な絵の楽しみ方ができると色々な絵が好きになることができ
それだけ美術鑑賞における世界観が豊かになります。

テリーさん
「そういえば学校で絵の描き方や美術史みたいなモノは習ったけど
”絵の観賞の仕方”の教育って全くうやらないですよねぇ…。」

奥本さん
「そうなんですよ。そこでいろんな絵を楽しめようになるためには
どうしたらいいのかというところから”対話式”が生まれたんです!」

美術観賞発達の原理
120421_museum_t_24

人の学習は大きく二つに分かれていて
ひとつは知識の豊富化で、もうひとつが知識の再構造化

多くのことを知ることでより枝葉が増え、
より洗練された形で知識が構造化されていく…。

しかし、いったん知識が構造化してしまうと、
そこで形成された固定概念や価値観の中で物事を捉えてしまうため
考え方や世界観がそれ以上はなかなか広がっていかない問題が発生する。

そこから更に絵の見方を広げるためには、一度そういったものを崩して
”知識の再構造化”をしていくことが必要になる。(概念変化とも呼ぶ)

奥本さん
「再構造化にのために必要なのは
そこにさらに多くの知識を詰め込むことではなく
”見方を変える経験”をすることです!」

自分と違う意見(例外)に気づき、例外の良さを知ることで
新しい見方や価値観が生成され世界観が広がっていく…。

『対話式観賞法』はそのための有効な方法というワケです。

奥本さんによる対話式観賞法の効果まとめ
120421_museum_t_26

=====

【3.平井さんのプレゼン】

美術館は実は私たちが思っている以上に観賞をサポートする
様々なサービスを用意し提供してくれている!

このイベントに来ている方々は美術館に日常的に通っていて
自分なりの観賞のプロセスを確立させていて
一人で美術館に行って楽しめる方ばかりだと思われますが、

平井さん
「一人で観賞するもの良いですけど
もっともっとアートと接することができるような機会を
ミュージアム側が沢山作ってくれているので
それらを知ってほしいし、それらを是非有効に利用してほしい!」

…とのことで、平井さんからは美術館が提供してくれている
様々な観賞サポートプログラムについての紹介がありました。

博物館法の中には
「教育的配慮のもとに一般公衆の供し」という文言があるそうです。

つまり美術館は社会的教育施設としての機能を持っていて
お金を払ってもらって絵を見せるというだけの商業ギャラリーではなく
教育的な部分も涵養しているということになります。

貴重な絵を守るだけならそもそも見せなければいいワケです。
照明に当てればそれだけ経年劣化が加速するのですから…。
それを敢えて見せるということはそれなりの意味があるということ!

では、どんなサービス(教育プログラム)があるのか?
120421_museum_t_30

・Talk

「ギャラリートーク」、「ギャラリーツアー」と呼ばれるもの。
作品の横に学芸員(※)が立って解説する形式や、、
学芸員と一緒に館内の展示を廻っていくツアー形式、
講義室でやるプレゼン形式など色々なスタイルがある。
対話式観賞法もここに分類される。

 ※研究者やボランティア、アーティストの場合もある

・情報技術を利用したサービス

昔から受付で保証金を払って借りる音声ガイドなどがあるが、
最近は各種アプリが非常に充実していて、
iPadやキオスク端末、指向性スピーカーなどが設置されている。

・観賞補助教材

企画展や作品に合わせてミュージアムが作成しているツール。
一例として神奈川県立近代美術館の「宝箱」が紹介された。

・アーティスト・イン・レジテンス

アーティストがミュージアムに一定期間滞在して
現地で制作を行いそれを見せるプログラム。
なかなか観ることができない制作過程を知ることができたり
アーティストと交流できたりする。

[王道からは外れるが存在価値の高い展示]

平井さんからは美術館が提供している観賞サポートの解説の他に
レプリカによる特徴的な展示の紹介もありました。

美術館は本物の絵を展示するというのが基本且つ王道で、
展示されている絵がレプリカだと見る側はガッカリしてしまいそうですが、
レプリカでも非常に有意義な展示を行っているケースもあるとのこと。

タヒチにあるゴーギャン博物館
120421_museum_t_32

展示されている絵は全てレプリカであるが
タヒチを愛したゴーギャンの心や生き方に触れながら
その絵を観賞できるという点で、その存在価値は高い。
本物を見せるだけが美術館ではないという代表的な例。

銀座のフェルメールセンター
120421_museum_t_33

ここに展示されているモノも全てレプリカ。

フェルメールの作品は37作品しか現存しておらず
世界中の有名美術館などに散らばっている。
それをレプリカであるが37作品一度に見られるのは貴重だし、
しかも、単なる複製ではなく350年前の色彩を再現した
新しい解釈でのリクリエイト品となっている。

ソーマ展
120421_museum_t_34

ベルギー出身のアーティスト、
カールステン・フラー氏によるインスタレーション。

インド北部の遊牧民の間に知られていた神秘な飲み物「ソーマ」は
幻覚作用のあるベニテングダケを食べたトナカイの尿を用いて作られた
言ってみれば”古代のヤバイ薬”である。
それを研究し、ソーマが作られる過程から再現を試みたというもの。

美術館に一泊して臭いをかぎ音を聞き、
どうも味も確かめることができたらしい。(宿泊費は1000ユーロ)

1000ユーロも払って幻覚作用のあるトナカイの尿を飲む(!?)のは
正直「どうなんだ?」と思ってしまいますが、
これも絶対できない体験をさせてくれるある種の観賞サポートです。

美術館は自分独りで作品を観賞するところと思いがちですが、
実際には美術館側から作品の観賞の手助けをしてくれるような
様々なサービスが用意されていて、しかも、それらは
ソーマ展のような特殊なケースを除けば無料で提供されているそうです。
これらのサービスを利用してみると、自分一人ではなかなか得られない
”新しい気づき”につながるかもしれません。

平井さん
「ぜひ積極的に利用してみてください!」

=====

【4.山峰さんのプレゼン】

東京都写真美術館の学芸員である山峰さんは
例えば、絵画における画材の変遷であったり、
写真が発明される前段階での絵を描く道具としての
カメラオブスキャラ(暗箱)の発明と
それによってもたらされた写実主義への移り変わりなど、
人間の営み全体をアートとして捉え、その上で
「世界がどうなっていくべきかをもう一度みんなで考えようよ!」
といったメッセージを込めた企画などを行っている。

最近の展覧会「見えない世界の見つめ方」より
120421_museum_t_37

上の写真では分かりにくいですが、
胎児の顕微鏡写真やミルククラウンの写真が展示されている。

肉眼で見える世界には限界があるが
電子顕微鏡写真やハイスピードカメラの映像など
写真や映像の周辺技術の進化によって
今まで知りえなかった全く違う世界を見ることができる。
そこから美的なものを感じ取ったり、現象の真相を知ることで
新しい世界が拓かれていく…。

古くは天動説の破綻…
120421_museum_t_38_2

天動説は2世紀にギリシアの哲学者
クラウディオス・プトレマイオスによって提唱されたものであるが、
キリスト教において絶対的なものとされてきた。

しかし、16世紀になって大航海時代の幕が開けると、
羅針盤が発明されると様々な矛盾が生じ
天動説は数学的におかしな役立にたないものとなる。

世界を見つめる方法として今まで聖書だったり、
誰かが教えてくれることをそのまま信じるしかなかったが、
自分たちで観測して科学的に検証することができるようになった。
この固定概念の転換がこれが非常に大きな出来事と言える。

ここで山峰さんは
「21世紀という時代をどのように見ていくか?」という視点、
宗教的な、科学的な今の価値観を少しずつ壊して
新しいモノの見方を提案してくれている作品をいくつか紹介してくれました。

例えば「オーサグラフィ」という世界地図(by鳴川肇)
120421_museum_t_39

普通の地図と見比べるとだいぶ歪んで見えますが、
実は面積比も位置関係もかなり正確に表現されている。

私たちが日常見なれた通常の地図は
球体を無理やり円筒型にしてから平面に展開しているため
グリーンランドがオーストラリア大陸と同じくらい巨大に見えるなど
非常の大きなゆがみがあったが、この地図はその歪みを
地図全体に分散させている。

こういった新しい地図の発明が
今まで気づかなかったことの発見につながったり
今までとは違った考え方の基盤となったりしていく。

山峰さんはひとつひとつの作品も当然大事にしていますが、
上記のように「モノの見方自体をアートとして捉える」活動を
非常にダイナミックに展開して見せてくれています。

特に年1回、盛大に開催される『恵比寿映像祭』
100名以上の作家を集め、最先端の映像テクロノロジーを使って
現代美術ともに新しいモノの見方や世界観を模索していくイベント。
興味のあるかたはチェックを!

参考:恵比寿映像祭オフィシャルページ

山峰さんが恵比寿映像祭を動画で紹介
120421_museum_t_40

=====

【5.名作解説&質問コーナー】

出演者による名作解説
120421_museum_t_41

題材となったのはジャクソン・ポロックレオナルド・ダ・ヴィンチ
ロバート・キャパ岡本太郎の作品など…。

いずれも世界的アーティストの世界的名作ですが、
「作品のどこを観て名作だと思いましたか?」
と聞かれると、私は答えに詰まってしまいます。
それは知識として「これは名作である」と知っているだけで
実は作品を良く分かっていないからだと思います。

名作と言われる作品に対して対話式観賞法をやってみると
意外と新しい気づきが数多く得られるかもしれません。

そして、最後に質疑応答。(一部抜粋)

Q:初対面の作品の場合、まずどこを見ますか?
↓ ↓ ↓
A:大きく書かれているところを観ましょう。
ファーストインプレッションを大事に!

Q:おススメの美術館は?
↓ ↓ ↓
A:足立美術館(島根)、島根県立美術館(島根)、
ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡) など…。

==========

【まとめ】

対話式観賞法を初めて経験しましたが、
自分の見ている世界は自分が思っている以上に狭いことや
同じ作品を観ているのに人それぞれ感想が大きく異なる等、
衝撃と言ってはちょっと大袈裟ですが、
新鮮な驚きをもって体験することができておもしろかったです。

今回は平野さんが初学者にもとっつきやすいように
非常に上手くナビゲートしてくれたように思うのですが、
対話式観賞法は展開の仕方によっても
出てくる意見や感想がずいぶん変わってきそうなので
その辺りのコツや場の雰囲気の作り方みたいな話も
またこのような機会があれば聞いてみたいと思いました。

(ライター・GAMA)